5.卒業時における「教職実践演習」新設・必修化

「教職実践演習」授業の実際と学生の評価

1 授業の開始に当たって

 「教職実践演習」の開始に当たり,担当教員の打ち合わせと,学生へのガイダンスとを並行して進めました。4年次には,中等教育実習,教員採用試験,総合インターンシップ,卒業研究などが控えており,授業日程の調整に苦労しました。
 教員の打ち合わせとして,「教職実践演習」推進専門部会,授業協力教員会議を開いて,授業の進め方について議論しました。教職に関する科目の担当教員,各教科の指導法の担当教員,そして小中学校現場経験者で役割を分担し,また協力していくことを確認しました。
 4月末の学生向けガイダンスには,4年次学生を始め,院生も多数参加しました。しかし,通年で継続して履修するのは困難という学生が少なくなく,単位認定にかかわらず部分的にでも参加したいという声がありました。最も多いときで26名が聴講し,通年で履修したのは7名でした。

2 学生の声

 学生にとって「実践的」だったこと,「学生同士」の活動が多かったこと,「採用試験対策」にもなったことが有意義だったようです。特に学生の評価が高かったのが,前期の「学級経営における臨床的場面での教師の対応(ロールプレイング)」,「教育課題解決への教師としてのアプローチ(集団討論)」でした。学生は,次のように書いています。

  • 前に立って話すということは,思っていた以上に緊張し,話す内容のほとんどが飛んでしまった。自分が教師役になるだけでなく,聞く立場になることで,多くのことに気づくことができた。
  • 教員採用試験でロールプレイが出たので,役に立ちました。それに,教師となる意識が高められたように思います。
  • 討論に関して,問題をとらえるとき,一般的な知識と,自分の経験,自分の考え,この3本柱が必要だと思った。ぼくは一般的な知識が足りず,問題のとらえ方を間違ってしまっていたようだった。技術に関しても,経験を積んで,うまくなっていきたい。様々な問題への対応を考えておくことの大切さを感じた。
  • 普段,話ができない人のいろいろな意見を聞くことができたので,とても有意義でした。特に討論のまとめ方が難しく,もっと勉強していきたいと思います。
  • とても勉強になりました。具体的な場面での実践で,大切なポイントを学ぶことができるのが良かったです。また,「人のふり見て我がふり直す」ことができました。特に,キョロキョロしてしまうこと,間をうまく取ることなど,自分も気を付けなくては,と思いました。教採の対策にもなったので,とても有意義でした。
  • この講義で,教職に対する熱い思いを持った学生と一緒に様々な活動ができて良かった。

3 授業の実際(ロールプレイングを例に)

 演習を中心に実践的な授業を多くし,学生同士の話し合い,そして振り返りも重視しました。
例えば「ロールプレイング」は,教職に関する科目の担当教員と小中学校現場経験者とで協力し,次のように行いました。

(1) 10分 ロールプレイングのねらい,方法などについて配付資料を使って説明する。
次のような課題を提示し,選択させる。
   D子は,やや暗く孤立しがちな女の子です。今朝,母親から電話がありました。昨日,帰校時にくつの中にだれかに画鋲を入れられ,泣いて帰って来た。学校に行きたくないと泣いているそうです。そこで担任として即,家庭訪問をしてD子と話し合ってください。また,保護者に謝罪するとともに,この問題に今後どう対処していくのかを説明してください。
(2) 5分 課題について,自分の考えをメモしながら構想する。
(3) 70分 ロールプレイング(1人4分×12人)及び指導者による講評。
1人ずつ順番に教師役として前に出て演じる。ほかの学生は1人ずつ順番に児童役をする。保護者が関与する場合は3人目の学生が演じる。1回終わるごとに対応について話し合う。
(4) 5分 振り返りシートに記入する。

4 今後の展望

 平成19年度の「教職実践演習」は,選択科目として立ち上げました。今後早いうちに必修科目として整備したいと考えています。
 そのためには,多忙な4年次学生にとって真に学び甲斐のある内容,方法を工夫することです。教職に向けて意欲が高まり,資質能力の向上が実感できる授業にしなければなりません。
 一方,担当する教員(県や市の教育委員会,附属学校なども含めて)の連携も重要です。授業の趣旨,各時間の目標や運営方法,そして実践的指導力の認定評価の仕方など,共通理解を図るべき事柄が少なくありません。協力体制の整備,再構築やカリキュラム評価の在り方について再検討しています。