上越教育大学 教員養成GPプロジェクト

小学校英会話を支援する国際理解カリキュラムの開発研究

取組実績と課題

9.5年1組の授業案と授業ビデオ

5年1組 (授業者:小野容子)

  1. 設定の理由・学習の目的
     コミュニケーションは世界の多様な人々と相互に理解を深める際に重要となるツールの一つである。しかし,田辺ら(2001)『小学生・中学生・高校生のコミュニケーション能力の実態とその育成のための授業開発』における児童・生徒に対するアンケート調査によると,話をしている時,相手に自分の話を分かってもらえていないと感じている児童・生徒の数は74.2%で,学年が上がるにつれて増加傾向にあることが分かる。この結果をもとに,相手に自分の話を分かってもらえたと感じられるコミュニケーションの学習を行っていきたい。
     また,コミュニケーションには言語によるコミュニケーションと非言語コミュニケーションとがある。この学習においては非言語コミュニケーションにも注目し,話を聞く姿勢や視線,表情,あいづちなどの大切さに気づかせ,より良い対話の環境を作っていくためにはどのようにしていけばいいのかについても考えさせたい。
     普段,日本語での会話を行う時は目を見て聞いたり,あいづち・感嘆詞などを言ったりすることに抵抗を感じる児童に対しても,英会話で行うという非日常的な状況の中で行うことで,英会話の一部として捉えさせ抵抗を感じにくくさせることができると考える。英会話を通して相手に自分の話を聞いてもらえたと感じる経験,相手の話を聞くという経験をし,その後日本語でも同じようにコミュニケーションを行えるようにさせ,自分の話を聞いてもらえたことを実感し,その嬉しさなどを感じることを通して自分自身のコミュニケーションについて見直す機会とさせたい。また,自分と異なる他者の話を聞き合い,互いに認め合うという異文化理解の視点も持たせたい。
  2. 目標
     異文化理解の視点から,相手に自分の話を分かってもらえたと実感することを通して,その大切さに気づき,他者を認め,理解するというコミュニケーション能力を身に付ける。
  3. 授業全体の流れ
    [1] 授業・・・授業計画参照
    [2] 授業後アンケート・・・コミュニケーションについて
  4. 主な学習活動と意図
    • 自慢しよう。
       有名人が友達だという設定のもと,ペアとなった相手に“This is ○○.”“○○is my friend.”でその友達を紹介する。紹介された人は,wow, good, great, nice, cool, pretty, beautiful, wonderfulの感嘆詞を用いてコメントする。その際,相手にコメントをもらったことできちんと聞いてもらえたということを実感させ,コミュニケーションの場において相手の話を聞き,認めるということの大切さに気づかせる。
       なお,活動の際は自慢する友達の写真が載っているカードを配り,それを相手に見せながら自慢するという設定で行う。
    • 自慢しよう。Part2
       「自慢しよう」で英語表現を用いてペアで互いに話し,聞き,他者を認めるという活動を行った。その経験を受け,「自慢しようPart2」では日本語で自分自身のこと(本当のこと)について自慢しあい,聞き合い,他者を認め合うという活動を行う。日本語でも英語で行ったことを通して気づいたことを実践できるようにさせる。日頃使っている言語である日本語で認められたことの嬉しさを実感させ,他者を認め合うというコミュニケーションの大切さに気づかせたい。
  5. 授業計画
過程 □学習活動
●児童の活動
教師の支援 ◎評価
△留意点
導入
(8)
英語で活動 あいさつ:Hello, everyone.
自己紹介:My name is Yoko Ono.
I'm from Nagaoka. Do you know Nagaoka? Nagaoka is famous for fireworks. Nagaoka's fireworks are very big and beautiful.(写真提示)These are fireworks of last year. Did you watch fireworks in Nagaoka?
△机は教室の端に寄せておく。
△必要なら日本語も時々入れる。
●JTEの自己紹介に続く,デモンストレーションを聞く。
「すごい」「おぉ」等の反応
And, today I introduce my friends to you. This is Kashima. And this is Tomita. Do you know them? Kashima and Tomita are my friends. I met them last year. And I watched the Gold medal. I was so happy.
JTEの情報を確認する。
あいづち(感嘆詞)やコメントを言っている場合は,それを認め,さらに伸ばすように。JTEの話を聞いたときの子どもの反応に対してコメントする。(「嬉しかった。話を聞いてもらえていると実感することができた。」)
△感嘆詞を書いた紙を提示
展開
(8)
□感嘆詞を練習しよう。    
●「すごい」などの言葉を英語で表現しよう。 wow, great, good, nice, cool, pretty wonderful, beautiful  
●JTEの後に続いて発音しよう。 Repeat after me. ・・・  
●練習しよう。   △練習時間を十分に取る。
(10) □自慢しよう。    
  ●JTEの自己紹介で出てきた表現を確認する。 基本文を板書する。
基本文の練習 Repeat after me. ・・・
◎積極的に活動に参加しようとしているか。
  ●基本的な文について全体で練習。 (友人という設定で)自慢する人が写っているカードを配布する。  
  ●基本文を参考に練習する。 Are you ready?  
  ●友達2人と自慢しあう。
This is ○○. ○○ is my friend.
(児童の対話の様子を観察。)  
  ●互いに相手の目を見て話すとどのように感じるのかを考える。    
(9) 日本語で活動    
  □自慢しよう。Part2 (児童の対話の様子を観察。)
☆あらかじめ,自慢すること・ものなどについて考えてきてもらう。
  ●自分自身の自慢すること・もの,おうちの人のこと,何でもいいので3人の人と順番にペアになり自慢しあう。英語活動のとき同様,アイコンタクトをとりながら聞き,感嘆詞も言う。互いに認め合う姿勢で。 JTEも回りながら,感嘆詞を言うなど,盛り上げていく。
(さらに話を続けても良い)
 
  ●数人に,聞いた話について発表してもらう。(聞いた3人のうち1人を選んで発表)    
終末
(10)
□授業を振り返り,考えたこと・感じたことをシートに書く。   △机をもとの形に戻す。
□シートを書き終わった人から,JTEに持っていき挨拶をする。 シートの回収,終わりの挨拶をする。
◎自分の意見を表現することができるか。
※アンケート記入 全体で挨拶 ◎元気よく相手の顔を見ながら挨拶することができるか。

※参考文献

  • 坂本喜代子. 2003.「相互作用分析による対話的コミュニケーションの研究」
  • 多田孝志・田川寿一(編). 2002.『学習スキルの考え方と授業づくり』,学習スキル研究会編,教育出版.
  • 田辺洵一他. 2001. 「小学生・中学生・高校生のコミュニケーション能力の実態とその育成のための授業開発」
    「総合的学習を創る 11月号 161」2003. 明治図書