上越教育大学 教員養成GPプロジェクト

確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元の臨床的開発研究

取組実績と課題

1.取組の全体像

1.はじめに

 本研究プロジェクト「確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元の臨床的開発研究」は,平成17年度大学・大学院における教員養成推進プログラム(教員養成GP)における上越教育大学のプロジェクト「マルチコラボレーションによる実践力の形成―学校現場の教育課題に対応した学校教育プログラムと大学の教師教育プログラムの開発を通して―」の下,取組課題ごとに構成された11チームの中の1つのチームの取組として計画・実施されているものである。
 各チームの取組は,平成17年度と平成18年度の2年の計画である。1年目の平成17年度は長期的なアクションリサーチを通して協力校の教育課題の解決に当たる学校教育プログラムを開発・実施することである。2年目の平成18年度は,平成17年度の研究成果を省察し,学部学生や学卒院生,現職院生や一般教員に還元する教師教育プログラムを開発・実施することである。
 以下,われわれの研究チームが「学校教育プログラムの開発・実施」にどのように取り組んできたかについて,その概要を報告する。

2.「実践的課題」の修正

 まず,われわれの研究チームは,研究の過程で,その実践的課題が協力校との関係で若干修正されてきたことを報告しなければならない。というのも,われわれの当初の研究課題は,「数学科における発展的教材の臨床的開発研究」であって,「確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元の臨床的開発研究」ではなかったからである。
 これは,当然のことながら,われわれが当初想定していた数学教育一般の問題意識が,必ずしもそのまま協力校の課題とはならなかったことを示唆している。本事業の「マルチコラボレーション」という方式は,「立場の異なる人々が共通の実践的課題に取り組む中で,多元的な協働を生起させることによって,実践的で豊かな学びを成立させること」である。この共通の実践的課題そのものの探究,これこそが協力校との実質的な協働研究において,特に重要であったといわねばならない。
 これがなければ,協力校は研究のための協力校であって,一緒に協働研究を進めるという意味での協力校とはならなかったであろう。

3.取組の経緯

本研究プロジェクトの取組経緯は次の通りである。

<平成17年度>

事前調査(質問紙調査)の実施
  ・目的 確率に関する生徒の実態把握と問題点の顕在化
  ・対象 第3学年全生徒
  ・主な調査項目 ・学習指導要領の目標及び内容
・確率に関する情意的側面(目的意識や興味・関心)
・確率に関する認知的側面(考え方や意味,そのよさや有効性など)
     
研究授業Iの実施
  ・目的 研究授業IIの予備調査として,新しい確率教材による生徒の確率に関する理解の改善の可能性を探ること
  ・対象 第3学年(2クラス)
  ・授業者 安中教諭
     
研究授業IIの実施
  ・目的 研究授業Iで得られた実践的アイディアや成果を生かしながら,本調査として,確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元を開発すること
  ・対象 第2学年全クラス(6クラス)
  ・授業者 TTで実施。各クラスの担当者は次の通り。
    1組 (メイン)大塚教諭
2組 (メイン)現職院生佐藤
3組 (メイン)学卒院生黒川
4組 (メイン)小野塚教諭
5組 (メイン)大塚教諭
6組 (メイン)黒田教諭
(サブ)梅川教諭
(サブ)杉本教諭
(サブ)杉本教諭
(サブ)大塚教諭
(サブ)小野塚教諭
(サブ)学卒院生黒川

<平成18年度>

授業データ整理と主要場面のDVD化
  ・目的 ・授業分析のための基礎データの作成
・インターネットコンテンツ開発に向けての準備
  ・対象 大塚教諭によって実践された授業(2クラス)
特に,実験を中心とした2つの研究授業(サイコロの問題,赤-青カード問題)
     
事後調査(質問紙調査)の実施
  ・目的 事後調査(質問紙調査)の実施
  ・対象 第3学年全生徒
  ・主な調査項目 ・学習指導要領の目標及び内容
・確率に関する情意的側面(目的意識や興味・関心)
・確率に関する認知的側面(考え方や意味、そのよさや有効性など
  ・特徴 平成17年度に実施した事前調査の結果と比較するため,第2学年で確率の授業を実施した直後ではなく,第3学年時の同じ時期に同じ調査方法で実施している点に特徴がある。
     
授業分析の実施
  ・目的 ・教室における確率の意味の発生と展開過程を分析し,教室で実現可能な確率単元,授業デザインを開発すること
・インターネットコンテンツ開発のための基礎資料の作成
  ・対象 ・大塚教諭によって実践された授業(2クラス)
・特に,実験を中心とした2つの研究授業(サイコロの問題,赤-青カード問題)
     
インターネットコンテンツの作成
  ・目的 広く本実践研究の研究成果を配信し,中学校現場の確率の授業改善及び数学教員を目指す学部学生や大学院生と,特に若い数学教員が確率の授業構成について考える具体的な手立てを提供すること。