上越教育大学 教員養成GPプロジェクト

子どもの学びの深化を促すカリキュラム構成と支援のあり方−河川をテーマとした総合的学習のアクションリサーチを通して−

取組実績と課題

1.担任のテーマへの思い、総合への思い

上越市立大手町小学校4年生

 昔から市民に親しまれ、市民歌「高田の四季」に「青田の川に紅葉ゆく…」と表現され、流域の小学校の校歌にも謳われる青田川、大手町小学校では学校のすぐ脇を流れるこの青田川を総合的学習のテーマに例年取り組んできている。平成17年度は、青田川を下流から上流まで土手を歩いて観察し、そこで生起する疑問や課題を児童自身に追究させようとしてきた。体験しては書き綴る手法で展開してきたが、児童の振り返りシートには容易には課題や疑問は生起しなかった。そこで平成18年度は、その構想段階から協議に参加し、直接体験の重視や対象となる河川を見つめるには他の河川との比較の中で展開する必要があることに合意を見て、新たな展開へと踏み出した。

青田川

高田平野の西に広がる南葉山系(海抜1000m前後)に源を発し、扇状地を形成し、水田地帯から市街地を通って関川に合流する全長15kmの支流である。昔は、上流から下流へといくつもの堰が設けられ、農業用水に利用され、人々は野菜洗いや洗濯をして生活と深い関わりをもつ川であった。秋になって農業用水が不要となると、一斉に堰払いが行われ、市民は手に手に弓だもやザルをもって集まり、流下する魚を捕獲し食材としてきた。正に堰払いは高田の風物詩そのものであった。しかし、下流域の水田が住宅地となって農業用水としての利用が失われるや、生活雑排水の流入やゴミ投棄による汚染、河川改修による直線化、護岸化が進み、当河川は悪臭を放つまでになり、魚影さえ見られない川に変貌してきた。一時は河川に蓋をして道路化、駐車場化が検討されたが、市民運動によって中止され、現在は下水道の完備、市民モラルの向上によって徐々に水辺環境も整備されつつある。市民レベルでの「青田川を守る会」が結成され、自然豊かな青田川への復元に取り組んでいる。

○総合的学習のねらい

 市民の川、青田川での体験活動や水辺環境にかかわる学習を通して、真に自然に優しく市民に親しまれる川にしていくには、どうしていったらよいのか。私たち自身がどうかかわっていったらよいのかを明らかにする。

市民の川、青田川  
市民の川、青田川  

附属小学校4年生

 学校としては、「関係力」をテーマに研究を進めてきていて、ひと、こと、ものとのかかわりを重視しつつ、一人一人の学びを大切にしてきている。4年生では、高田平野を形成し、市民の生活を支える母なる関川に思いを寄せ、例年、河川をテーマに取り組んできている。担任の総合への思いは、まったく何一つ川での遊び経験を有さない児童の実態を踏まえ、遊びや体験活動を通じてどっぷりと川とかかわらせ、「川大好き児童」にしたいとの思いが強い。その中から、人々と河川が疎遠になっていった歴史的経緯を見つめさせ、これからの人と河川のかかわりについての思いや願いを膨らませたいとの願いをもっている。

関川

妙高山や火打山、焼山という2400m級の山岳に源を発し、笹ヶ峰ダムを経由し、高田平野の西端を流れる全長57kmほどの中心河川である。多くの支流が合流し年間を通して水量に恵まれる河川であるが、上流には数多くの発電所があって、水量の大半は山中の隧道を通って発電に利用され、平野部に入るや農業用水として取水される。
 かつては市民は、関川で釣りや水泳、もぐってサケやマスを捕っていたが、昭和30年代頃から工場排水や生活雑排水、水洗トイレ排水、石油化学製品容器の投棄等で、新潟県ワーストワンの水質とまで言われるようになった。今はかなり改善されてきてはいるが、水質そのものはまだまだという感がある。また、農業用水や工業用水の取水堰が何カ所もあり、河川生物の遡上に大きな影響を与えている。

○総合的学習のねらい

 河川との様々な体験的なかかわりを通じて川への思いを膨らませ、これからの人間と河川のかかわり、私たちと河川との在り方について考える。

関川中流 工業用水取水堰
関川中流 工業用水取水堰