二科目群がめざすもの

 『鳥の眼,虫の眼,鯰(ナマズ)ひげ』―

 このフレーズは,2011年度「実践場面分析セミナー」での橋本定男先生の講義に由来しています。

“一般的には,「鳥の眼,虫の眼」のあとには「魚の眼」が来るのですが,「潮流を読んで流れに乗る」ような,あるいは「時代に流されて生きている」ような教員ではダメです。近い将来起こるであろうことを,いち早く察知して警鐘を鳴らす,そんなナマズのひげのような先見性と批判精神を備えた教員こそが,変化の激しいこれからの学校現場には求められているのです。”

 橋本先生のこの名フレーズは,そのまま私たち教員スタッフ全員の願いでもあります。研究者の視点と実践者の視点の両方を持ち,最先端の教育的課題に立ち向かっていける。そんな教員を育てていくことを,私たちはめざしています。

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二科目群はこんなところ

2つの科目群

 「生徒指導総合科目群」と「学校心理科目群」。2つの科目群は,子どもたちの心と教育のあり方について,教育学や心理学の視点から総合的に研究しています。2つはそれぞれ独立の科目群ですが,互いに緊密に連携をとりあいながら,教育研究を進めています。

 “二科目群”には,一般の大学でいう「教育学」と「教育心理学」の教員が集まっています。「生徒指導」という名前はついていますが,それは狭い意味での生徒指導ではありません。生徒指導や教育相談はもちろんのこと,学級経営や教師論,制度や社会環境,さらにはその基盤となる哲学までをも含む,ひじょうに広い意味でとらえています。つまり,事実上,現代の子どもと教育に関連するあらゆる現象が,私たちの研究対象となり得るといってもいいくらいです。

 では,どうして教育学と教育心理学の教員がいっしょにまとまっているのでしょうか。それは,狭い学問領域の専門性にこだわらず,院生のもつ多様な問題意識に柔軟に対応できるように,と考えたからです。

 研究の手法はそれぞれの分野・領域で違っていますが,教育学も心理学も,扱っている研究対象は比較的似通っています。そのため以前から,入試の面接のときや入学直後のゼミ決めのときに,「研究テーマは決まっているが,教育学なのか心理学なのかよくわからない」と迷う学生が見受けられました。学問分野に合わせて研究テーマを変更するのは本末転倒ですし,実際,教育学でも心理学でも研究可能な場合が案外多いものです。さらに,他の学問分野からもアドバイスをもらえることで,研究の視野を広げることもできます。

 そこで私たちは,「専門志向より問題志向」という方針を掲げ,学問分野の垣根をできるだけ低くして,院生が問題へのさまざまなアプローチを自由に選択できるよう,連携体制を整えてきました。入試段階では科目群を分けず,入学後に研究室訪問を行ってから決定するようにしたり,発表会等の公式行事はすべて二科目群合同で実施していることなどは,その一環です。

 この中から,学校教育とそれを取り巻く社会の問題を広い視野からとらえ,深く理解して,教育実践をリードできる教員を養成しようとしています。

場分写真

 また,本学の大きな特色として,大学院に在籍しながら教員免許がとれる教育職員免許取得プログラム(通称「免P」)がありますが,私たち二科目群には,免Pにも積極的に対応しています。免P制度と二科目群の対応について,詳しくは以下のリンクを参照してください。

生徒指導総合科目群

 生徒指導総合科目群は,不登校やいじめ,暴力行為など生徒指導や道徳教育上の諸問題,学級運営や学校経営,教育行政や保護者・地域に関わる諸課題などを総合的に研究することによって,日々の教育実践に求められる高度な技能・資質を修得・向上させることを目的としています。現代の学校が抱える困難で根深い諸問題に対応するために,個別的・技術的な対処のみならず,学校教育に関する根本的な理解に立って,教育の理念や歴史をふまえつつ,主として以下の3つの観点で総合的な研究を行っています。

  1. 生徒指導の基本である児童・生徒の自己指導力の育成に積極的に寄与する理論と方法を学ぶために,進路指導(キャリア教育),特別活動,道徳教育,生徒指導,教育相談,キャリア・カウンセリングなどの教科外教育に関する指導方法・内容に関する科目を提供します。
  2. 継続的な学校改善のために必要な,学年・学級経営,学校組織運営,教育法規,危機管理,教育改革等に関する学識を深めます。またそれらの学識を活用して具体的な方策を立てる構想力,スクール・リーダーとしての指導力の向上を重視しています。
  3. 学校教育全般や個人・学校を取り巻く家庭や地域の社会環境に関わる諸問題,特に学級内での教師-生徒関係,子どもの仲間集団,教師文化,学校文化,家庭・地域との連携,社会環境と子どもの変容などに関する実証的研究を推進しています。
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学校心理科目群

風景写真  学校心理科目群は,学校や家庭における子どもたちの多様な「心と行動の現象」を心理学の視点から総合的に理解するとともに,子どもたちの発達と学習を適切に援助していくための理論と方法を追究しています。そしてその中で,問題を抱える子どもへの援助だけでなく,日常の学習指導や生活指導・学級経営など学校教育の様々な領域で力を発揮できる教師の育成を目指しています。

  本科目群では,子どもたちの心に関わる現象とその背後にあるメカニズムを広く理解するため,心の発達や学習の一般的特徴と個人差,それを支える多様な人間関係など,心理学の各領域にわたる授業科目が用意されています。また,今日的な心の問題を的確に分析するための調査・実験手法や統計解析手法の習得にも重点を置いています。

  なお,本科目群の授業科目は「学校心理士」の申請資格に対応しています。学校心理科目群または生徒指導総合科目群に在籍して所定の単位を修得し,学校心理学に関連する修士論文を提出することで,申請基準の一部を満たすことができます(申請には,このほか1年以上の実務経験と,試験への合格が必要となります)。

  詳しくは,以下のリンクを参照してください。

院生写真 院生写真

二科目群のこれまで

沿革
1978  上越教育大学創立。
 創立当初は,4つのコースで学校教育専攻を構成していました。4コースそれぞれに,教育学と心理学の教員が入っていました。
2000  いわゆる“12年度改革”で,大幅な組織再編がなされました。
 学校教育専攻は,旧教育方法コースを拡大発展させた学習臨床コースと,旧生徒指導コースを拡大発展させた発達臨床コースの2コース体制となり,旧学校教育専攻所属教員の多くは,発達臨床コースに移行しました。この発達臨床コースが,現在の二科目群の原型です。
 発達臨床コースには生徒指導総合と心理臨床の2つの分野があり,当時は独立して運営していました。
2004  臨床心理士養成を中心とする臨床心理学コースが心理臨床分野から独立。
 残る学校心理の教員が生徒指導総合の教員と合流して発達臨床コースを構成することになり,ここから現在の二科目群の協同連携体制がはじまりました。
2008  教職大学院設置にともなって,さらに組織改編。
 発達臨床コースと学習臨床コースがいっしょになって,学校臨床研究コースとなりました。「発達臨床」という名称がなくなってしまったので,私たちは「二科目群」として,変わらず協同連携体制を維持しています。

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