研究室への所属を希望される方へ

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概要

私の専門は、心理統計学とテスト理論です。 一般にはなじみのない学問領域かも知れませんが、簡単に言えば、人間の行動やその背後にある「心の働き」をどのようにして科学的に検証するか、その方法論について研究しています。

様々な社会政策の中でも、特に教育に関するものは政治的なイデオロギーや権威、経験論に左右されやすいと言われています。 しかし、子供たちに本当に必要な指導は何か、どのような教育政策が効果的なのか、地に足のついた議論をするためには、「あるべき論」だけでは不十分で、エビデンス (根拠) にもとづいた科学的な考察が不可欠です。 国際的には、「エビデンスにもとづいた教育」(evidence-based education) が提唱され、教育政策や研究、実践に関してもその質が厳しく問われるようになっています。

世の中は、教育に関するデータを集めた調査研究であふれかえっています。 しかし、データを取ればそれだけでエビデンスになるわけではありません。 データを取ることイコール科学的というわけでもありません。 エビデンスには質が存在し、その質はデータの集め方や分析方法に大きく左右されます。 どうしたら教育問題について確実なエビデンスを導き出せるのか、研究者も実践者も真剣に考えるべき時に来ています。

---- 事実を用いて科学を築くのは、石を用いて家を築くようなものである。 しかし、山積みの石が家でないのと同じように、事実の寄せ集めが科学であるというわけではない。(H. ポアンカレ)

何を学べるか

「こんなアンケートで子供の心がわかるのだろうか」とか、「テストで学力向上や低下が議論できるのだろうか」といった疑問は誰しも抱いたことがあるのではないでしょうか。 こうした疑問について深く考えようとするのが、心理統計学やテスト理論の研究です。 私の研究室では、子供たちの行動や心の働きをどのようにデータ化するか、そうしたデータから教育的な取り組みの効果の有無や個と集団の理解につながる情報を得るためにどのような分析を行う必要があるのかといった、方法論的な問題に関心のある方を歓迎します。

おおむね週に1回のペースでゼミを開講しています。 (夏休みや春休みの間も継続して行うことが多いです。) ゼミでは、メンバーが興味のある文献を読んで発表したり、研究の構想について意見を交換し合ったりします。 それ以外にも、論文や発表資料の添削や研究計画の相談など、必要に応じて個別の指導も行っています。 大学にない資料や図書、機器等は、予算の許す限り研究室で購入するようにしています。

考えるヒント

子供たちの行動や心の働きについて検証する上での方法論的な問題、といわれても具体的なイメージがわかないかも知れません。 しかし、実際にはこうした問題は皆さん自身が経験してきた学校生活 (とは限りませんが) の様々なところに転がっているのです。

例えば、ある指導により子供たちの学力が向上するか検証するにはどうしたらよいでしょう? 一般的には、指導の前後で同じテストを実施して平均点が上昇していれば学力が上がったと言えそうですが、実際はそんな簡単な問題ではありません。 2回目はすでに解いたことのある問題を解くわけですから、何も指導がなくても1回目よりも楽に解けるでしょう。 あるいは、単に1回目のテストの答えを憶えていただけという生徒もいるかも知れません。 この場合、指導の有無と無関係にテスト得点が向上する可能性が捨てきれないので、指導の効果については議論できません。 一方、これを避けるために指導の前後で類似の問題から構成される異なるテストを実施するということも考えられるかも知れません。 しかし、そもそも類似の問題ではあっても難易度が厳密に同じとは限らないので、2つのテスト得点に差があったとしても、それは指導の効果によるものなのか難易度の差によるものなのか区別はつきません。 また、ここでは学力の向上をテスト得点の平均によって確かめようとしていますが、実際にはテスト得点には個人差があるはずです。 この個人差は学力自体の個人差を反映したものかも知れませんし、何かそれ以外の誤差によるものかも知れません。 いずれにせよ、テスト得点の変化について、この個人差 (テスト得点の個人差およびテスト得点の変化の個人差) は考慮しなくてよいのでしょうか?

以上のことからわかるように、単に指導の効果を検証しようとするだけでも、それを正確に把握しようとする際には様々な技術的な問題が存在するのです。 このように、子供たちの行動や心の働きを検証しようとする際に生じる技術的な難しさを克服することは、教育問題について実証的に考える上でとても重要になってきます。 そして、学力低下や「ゆとり教育」に関する論争はもちろん、学校評価や教員評価、教員免許制度、学校選択制、教育委員会制度、教育バウチャー、カリキュラム改革、高大接続、大学入試改革など、教育に関する社会的な問題の根幹には、教育に関する効果測定の難しさが大きく関わっているのです。

おすすめの文献

研究テーマを考えるために有用と思われる文献を紹介しておきます。 (リンクのあるものは、ウェブ上で読めます。)

求めること

知的好奇心が旺盛で、自主的にいろいろなことを勉強しようとする姿勢が求められます。 専門的な知識も、それを支える分厚い教養があってこそ、社会に出たときに役立てることができます。 理想論だけではなく、現実を直視し、物事を論理的に考えようとする姿勢も重要です。 また、特に現職派遣でない大学院生の場合は、授業、研究、就職活動 (教員採用試験) を両立することが大きな重圧になると思います。 こうしたストレスの中でも健康的な生活を送れるよう、ある程度タフであるに越したことはありません (健康第一)。


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