TeXは著名なコンピュータ科学者Donald E. Knuth
によって生み出された最強の文書整形システムです。
次のような特徴を持っています。
- 複雑な数式でもきれいに書ける。
- 論文のような文書を作成するのに適している。
- MS-DOS、Windows98/ME/2000/XP、OS/2、各種UNIX、マッキントッシュ等、
多くのシステムで利用できる。
- TeXのソースファイルはテキストファイルなので、
異なるシステムでもソースを共通に使え、電子メールでも簡単に交換できる。
さらに、ソースファイルをTeXで処理して得られるDVIファイルもハードウェアに依存しない。
- フリーソフトウェアである。
TeXによる文書作成の流れは次のようになります。
1. |
印刷させたい文書の中に、字の種類や大きさを変えたり、
印字位置を制御したりする命令を挿入したテキストファイルを作成する。
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2. |
それをTeXで処理して(コンパイルして)、DVIファイルを作成する。
テキスト作成時に、TeXの文法ミスがあれば、エラーメッセージが表示され、
コンパイルが途中で中断される。そのときは、xを入力すれば、TeXは終了する。1.に戻って、エラーメッセージを見ながら、テキストの文法ミスを修正する。
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3. |
プレビューアでDVIファイルを画面に出力して、
意図した出力が得られているかを確認する。
意図した出力が得られていなければ、1.に戻る。
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4. |
プリンタドライバでプリンタに出力する。
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このように、TeXを使うにはTeXの文法を学ぶ必要があり、
慣れるまではなかなかうまくいかないのですが、
TeXによる数式の出力結果は他のどんなソフトウェアよりも美しく、
少し練習すれば、数式の入力はスムースにできるようになります。
また、LaTeX等のマクロパッケージを使えば、
長い論文を書くときも、文書の視覚的なデザインを気にしないで、
論理的構造だけに集中することができます。
したがって、数式を多く含むような長い文書の作成において、
TeXはその威力を最大限に発揮します。
TeXがどのようにして生み出されたかを知りたい方には
有沢誠 編: クヌース先生のプログラム論, 共立出版, 1991
をおすすめします。
コンピュータ科学者のLeslie Lamportは、
TeXを使い易くするためにLaTeXというマクロパッケージを作りました。
現在の最新版はLaTeX2eと呼ばれています。
LaTeX2eのテキストは次のように書きます。
\documentclass[a4paper,12pt]{jarticle}
\begin{document}
\title{タイトル名}
\author{著者名}
\date{年月日}
\maketitle
\section{セクション1}
......
\section{セクション2}
......
\end{document}
ここで、\は半角の\です。数式を書くときは次のようにします。
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle}
\begin{document}
$s>1$において級数
\begin{equation}
\zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s}
\end{equation}
は収束する.$\zeta(s)$を\textbf{リーマンのゼータ関数}と呼ぶ.
オイラーは
\begin{equation}
\zeta(2) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} = \frac{\pi^2}{6}
\end{equation}
であることを発見した.
\end{document}
これをTeXで処理すると、次のような出力が得られます。
自然数の平方の逆数の和
参考文献
- 中野賢: 日本語LaTeX2εブック, アスキー, 1996
- 奥村晴彦: LaTeX2ε美文書作成入門, 技術評論社, 2004
- 大友 康寛: LaTeX組版ハンドブック, 翔泳社, 2005
Windows98/2000/XP/Vista上でTeX統合環境を実現するソフトウェア EasyTeX を作ってみました。
マルチドキュメントを扱えるテキストエディタに、LaTeXの命令を簡単に選択入力できる機能と、
TeXコンパイラ、プレビューア、スペルチェッカーを呼び出して実行する機能を追加したものです。
EasyTeXは次のような特徴を持っています。
- 32KBを超える大きなサイズのテキストファイルを素早く読み込めます。
- 複数のファイルを編集できます。
- LaTeX2eの命令をメニュー選択するだけで簡単に入力できます。
- ボタンをクリックするだけでTeXコンパイルエラー箇所に移動できます。
- TeXのラベルを一覧表示して、その内容を確認しながら相互参照することができます。長い論文や本などをTeXで書くときなど、章、節の単位で複数のファイルを作成して一つのファイルにインクルードするようなときに非常に便利です。文献参照についても同様な機能があります。
- SDI(シングルドキュメントインターフェイス)のエディタです。
- ドラッグ・ドロップでファイルを開くこともできます。TeXファイルをeasytex.exeに関連付けすることもできます(インストーラ付きの実行ファイルでは自動的に関連付けます)。
- 複数のファイルを開いている場合は、アクティブウィンドウのファイルをコンパイルします。
- TeXラベルの参照、文献参照は、編集中のファイルと同じディレクトリーにあるTeXファイルの中から選択します。
- TeX環境設定で言語を日本語に設定している場合でも、 スペルチェックを実行できます。
- 単純なTeXの命令を挿入するユーザーメニューを48個まで定義できます。
- 外部プログラムを40個まで登録して、実行できます。
- DVIOUTのプレビュー画面とEasyTeXの間で相互ジャンプができます。
TeXの本体とDVIOUTはできるだけ新しいものを使ってください。
- ホイールマウスに対応しています。
- フリーソフトウェアです。
ダウンロード easytex3204.zip (zipファイル)
ダウンロード easytex3204.exe (インストール機能付き)
(3.201でフォルダー名にスペースがある場合、DFファイルを開けないという不具合を修正)
最近の主な変更点は次の通りです。
- エラー検索を改善しました。
- ワードラップ時のコメント設定/解除の不具合を修正しました。
- TeX環境設定で手動設定をより使いやすい形で復活させました。
- Version 3.183で新しくepLaTeXなどを選択できるようにしたときに生じた,Iniファイルに書き込めないという
TeX環境設定の不具合を修正しました。
- コメント/コメント解除で余計な改行が挿入される不具合を修正しました。
- コンパイルに続けてプレビューできるメニューを追加しました。PDF, PSファイルについても同様。より使いやすくしました。
- Adobe Reader以外のPDR Readerに対応しました。現在,FoxitReader 2.3、PDF-XChange Viewer 2.0、クセロReader ZERO 2.0 に対応しています。
- コンパイラーとしてあべのり氏作成のLaTeXCompileを選択することによって、
必要な回数だけ自動的にコンパイルするようにしました。
LaTeXCompile は あべのりさんのページ にあります。
- TeX命令(\で始まるもの)の色を設定できるようにしました。
- エディタ設定のキー割り当てを改良して、カスタマイズできる機能を増やしました。
- 対応する括弧を検索する機能を追加しました。
- パソコンによっては,正しく設定しているのに「コンパイルできません」となってしまう不具合があることに対応したつもりです(初歩的なバグでした。長い間ご迷惑をおかけしました)。
EasyTeXには細かな点で不具合がいろいろあるかもしれません。不具合を発見された方は
までメールいただければ幸いです。能力と時間の許す範囲で対応させていただきます。
使用した感想等も歓迎いたします。
EasyTeX 不具合の報告
- Version 3.20でPDF Readerを設定しないでPDFファイルを開こうとするとハングアップする不具合がありました。
これは Version 3.201で修正しました。
- Version 3.20 (3.201でも)では、PDF Reader を Adobe Reader以外に、FoxitReader 2.3、PDF-XChange Viewer 2.0、クセロReader ZERO 2.0 に対応しましたが、TeXファイルがC:\My Documents\sample.texのように
フォルダー名にスペースがある場合は、Foxit, Xelo, PDF-Xchange ViewerではPDFファイルを開けないという不具合がありました。これはVersion 3.202で修正しました。
- [ファイル]-[DVI->PS変換2]が機能していませんでした。Version 3.202ではこれを削除し、新たに[ファイル]-[DVI->PDF変換2]を追加しました。これは、prosper用でしおりの文字化けを修正したPDFファイルを作成し表示すします。Ghostscriptのパス(例えば,c:\gs\gs8.63\bin;c:\gs\gs8.63\lib)をWindows XPのシステム環境変数のPathに設定する必要があります。
Windows98/2000/Xp/Vista上でTeXを使用するためには、TeXの本体とプレビューアが必要です。TeXの本体としては,角藤さんのバイナリ配布をお勧めします。
角藤さんのページから入手できます。
プレビューアとしては、 dviout for Windows をお勧めします。
dviout for Windows は,
大島さんのページから入手できます。
TeXと関連ソフトについては、
奥村さんのページに詳しく載っています。
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