\documentstyle[a4j]{jreport} \input{jnakppt} \renewcommand{\baselinestretch}{1.2} \pagestyle{empty} %\oddsidemargin -9mm %\evensidemargin -9mm \textwidth=46zw \setlength{\columnsep}{3zw} \begin{document} \twocolumn[% \begin{center} {\LARGE\bf デデキントのゼータ関数と円分体の類数} \end{center} \begin{flushright} 教科・領域教育専攻\\ 自然系コース(数学)\\ 亀 山 武 士 \end{flushright} \vspace{1cm} ] $19$世紀以来、ゼータ関数と名のつく関数が数多く定義されている。 Riemannのゼータ関数は、それらの中において原形の一つである。 この関数は、Eulerによって定義され、彼はこれを用いて素数が 無限個あることを証明している。しかし、ゼータ関数を複素解析 関数として拡張し、関数等式を求めたのはRiemannである。さらに Riemannは、ゼータ関数の零点が素数分布と深い関係をもつことを 見つけている。ところで、素因数分解の一意性が成り立つことは、 Riemannのゼータ関数がEuler積表示をもつことと同値になる。 すなわち、整数論における重要な定理を解析関数の言葉で表わす ことができる。この意味において整数論の研究は、対応する関数の 性質を調べることに帰着されるといえる。 本論文では、奇素数円分体の類数公式を導く方法を紹介する。 本文は$4$つの章で構成されており、以下内容について概説する。 \\ {\bf 第$1$章[代数体の基本概念]} 一般的な代数体とその整数環に関する基本事項について述べている。 この章は、第$3$章・第$4$章の準備のためのものであり、命題・定理 の証明は省略した。 \\ {\bf 第$2$章[リーマンのゼータ関数]} Riemannのゼータ関数は、$\Re(s)>1$なる複素数$s$に対して、絶対収束 する級数 \[\zeta(s)\stackrel{\rm def}{=}\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^s} \] によって定義される。さらに、$\zeta(s)$はEulerの無限積表示をもつ。 \[\zeta(s)=\prod_p\,\frac{1}{1-p^{-s}}\,. \] ここで$p$はすべての素数をわたる。Eulerの無限積表示の式からわかるように、 $\zeta(s)$は$\Re(s)>1$に零点をもたない正則関数である。さらに、 Riemannが証明したように$\zeta(s)$は、$s=1$の一位の極(留数$1$) を除く複素$s$平面全体の上に解析接続される。また、 \[\Lambda(s)=\pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma\left(\frac{s}{2}\right)\zeta(s) \] とおくとき、$\Lambda(s)$は$1-s$による$s$の置換のもとで不変である。 すなわち、$\Lambda(s)=\Lambda(1-s)$が成り立つ。ゆえに、$\zeta(s)$は 次の関数等式を満たす。 \[\pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma\left(\frac{s}{2}\right)\zeta(s)=\pi^{-\frac{1-s}{2}}\Gamma\left(\frac{1-s}{2}\right)\zeta(1-s)\,. \] この章では、以上のことについて証明を与えている。なお、第$1$節において、 二つの性質すなわち、「すべての自然数$n$に対して$\Gamma(n)=(n-1)!\;(n=1,2, \cdots)$ を満たし、かつすべての$0$でない複素数$s\,\neq\,0$に対して、$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$という性質」 をもつ連続関数$\Gamma(s)$を求めることによって、ガンマ関数を導いた。\\ {\bf 第$3$章[デデキントのゼータ関数]} Riemannのゼータ関数を、代数体において拡張した関数として、 Dedekindのゼータ関数が考えられる。$k$を$n$次代数体として、 $k$のDedekindのゼータ関数$\zeta_k(s)$は、Dirichlet級数 \[\zeta_k(s)\stackrel{\rm def}{=}\sum_{\frak a}\frac{1}{N({\frak a})^s} \] によって定義される。ここで和は$k$のすべての整イデアル${\frak a}\neq0$ をわたる。$\zeta_k(s)$は、$\Re(s)>1$において絶対収束し、任意の 整イデアル${\frak a}\neq 0$は素イデアルの積として、順序を除いて 一意的に表わせることから、次のようにEuler積表示をもつ。 \[\zeta_k(s)=\prod_{\frak p}\sum_{b=0}^\infty N({\frak p})^{-bs}=\prod_{{\frak p}}\frac{1}{1-N({\frak p})^{-s}}\,. \] ここで積はすべての素イデアル${\frak p}$をわたる。また、Dedekindの ゼータ関数$\zeta_k(s)$は、全複素平面上の有理型関数に解析接続され、 $s=1$に一位の極をもつ以外は正則である。$s=1$での留数は \[\frac{2^{r_1}(2\pi)^{r_2}R_kh_k}{w\sqrt{|D_k|}} \] で与えられる。ここで使われている記号はそれぞれ、 $r_1:k$の実の共役の個数 $2r_2:k$の虚の共役の個数 $R_k:k$の単数規準 $h_k:k$の類数 $w:k$に含まれる$1$のベキ根の個数 $D_k:k$の判別式 を表わしている。さらに、 \begin{eqnarray*} A&=&2^{-r_2}|D_k|^{1/2}\pi^{-n/2}\,, \\ \Lambda(s)&=&A^s\Gamma\left(\frac{s}{2}\right)^{r_1}\Gamma(s)^{r_2}\zeta_k(s) \end{eqnarray*} とおくとき、$\zeta(s)$と似た形の$\zeta_k(s)$における関数等式 \[\Lambda(s)=\Lambda(1-s) \] が成り立つ。このDedekindのゼータ関数は、すべての代数体$k$について考える ことができる。なお、$k={\Bbb Q}$のとき、$\zeta_k(s)=\zeta(s)$である。 この章では、以上のことについて述べている。 \\ {\bf 第$4$章[円分体の類数]} Dedekindのゼータ関数$\zeta_k(s)$の$s=1$での留数を用いて、 円分体の類数を求めることができる。この章では、$p$を奇素数とし、 有理数体${\Bbb Q}$に$1$の原始$p$乗根$\zeta=\exp(2\pi i/p)$を 添加して得られた数体${\Bbb Q}(\zeta)$によって定義される 奇素数円分体$k={\Bbb Q}(\zeta)$の類数を$h$, $k$の最大実部分体$k^+={\Bbb Q}(\zeta+\zeta^{-1})$の類数を$h^+$とおくとき、 $h^-=\displaystyle\frac{h}{h^+}$は整数であり、 \[h^-=\frac{(-1)^m}{(2p)^{m-1}}\prod_{\chi(-1)=-1}\sum_{a=1}^{p-1}a\overline{\chi}(a) \] が成り立つことを証明した。ここで$h^-=\displaystyle\frac{h}{h^+}$は、 円分体${\Bbb Q}(\zeta)$の相対類数と呼ばれるものである。 \begin{flushright}指導 中川 仁 \end{flushright} \end{document}