\documentstyle[11pt,a4j]{jreport} \renewcommand{\baselinestretch}{1.2} \pagestyle{empty} \oddsidemargin -9mm \evensidemargin -9mm \textwidth=46zw \setlength{\columnsep}{3zw} \begin{document} \twocolumn[% \begin{center} {\LARGE\bf リーマン多様体上のソボレフ空間の研究} \end{center} \begin{flushright} {\large 教科・領域教育専攻\\ 自然系コース(数学)\\ 下 鳥 晃 一} \end{flushright} \\] ソビエトの数学者 S.\,L.\,Sobolev\,(1908-89)は、部分積分を通じての一般化され た微分の概念を導入し、以下のような $k$ 階までの一般化された微分が $L^{p}$ に属するバナッハ空間(ソボレフ空間\,)を考察した。すなわち、 \[W^{k,p}(\Omega):=\Bigl\{u\in L^{p}:D^{\alpha}u\in L^{p}\ \ ^\forall 0\le |\alpha|\le k\Bigr\}\] ただし、$k$ は非負整数\,,\,$1\le p<\infty$\,,\,\\ $|\alpha|$は多重指数 \,,\,$D^{\alpha}u$は弱偏微分である。\\ このソボレフ空間は、偏微分方程式の研究において重要な役割を果たすことは良く 知られている。そして、現在に至るまで様々な拡張や一般化がなされてきた。 本論文は[1]の著書を参考に、(Meyers-Serrin の定理により)$W^{k,p}(M)$ と同値 であるもう1つのソボレフ空間 $H^{p}_{k}(M)$ を定義し、ユークリッド空間 ${\bf R}^{n}$ からリーマン多様体 $(M,g)$\ (特にコンパクト多様体と完備多様体について)へ拡 張し、ソボレフの埋め込み定理を中心にまとめたものである。 1章では、5節まで[2]を参考に多様体の定義、接空間、リーマン計量、ラプラス作 用素、レビ・チビタ接続についてまとめた。又5,6節では後の章で何度か用いられ るパッキングレンマと調和半径の定義及びGromov の結果について述べた。 2章では、多様体におけるソボレフ空間の定義と稠密問題について述べる。 まず、リーマン多様体 $(M,g)$ において、関数空間 ${\cal C}^{p}_{k}(M)$ を次 のように定義する。 \begin{eqnarray*} &&{\cal C}^{p}_{k}(M)=\Bigl\{u\in C^{\infty}(M)\ s.t.\ ^\forall j=0,\cdots ,k\Bigr.\mbox{ }\\ && \mbox{ } \Bigl.\int_{M}|\nabla ^{j}u|^{p}dv(g)<\infty \ \Bigr\} \end{eqnarray*} ここで、$\nabla ^{j}u$ は $u$ の $j$ 階共変微分を表し、\\ $|\nabla ^{k}u|^{2} = g^{i_{1}j_{1}}\cdots g^{i_{k}j_{k}}(\nabla ^{k}u)_{i_{1}\cdots i_{k}} (\nabla ^{k}u)_{j_{1}\cdots j_{k}}$\\ である。この時、ソボレフ空間 $H^{p}_{k}(M)$ は次のノルムに関する ${\cal C}^{p}_{k}(M)$ の完備化空間として定義する。 \[\|u\|_{H^{p}_{k}}=\sum^{k}_{j=0}\left(\int_{M}|\nabla ^{j}u|^{p}dv(g)\right)^{1/p}\] また、${\cal D}(M)$ は $M$ でコンパクトな台をもつ $C^{\infty}$ 関数空間とし 、ソボレフ空間 $\stackrel{o \ \,}{H^{p}_{k}(M)}$ を $H^{p}_{k}(M)$ にお ける ${\cal D}(M)$ の閉包として定義する。 次に稠密問題について、すなわち``どのような多様体 $M$ に対して $\stackrel{o \ \,}{H^{p}_{k}(M)}\ =H^{p}_{k}(M)$ が成り立つか''について考察する。$M$ がコンパクト多様体の場合には明らかに成 り立つので、興味あるのは非コンパクト多様体についてである。 ユークリッド空間 ${\bf R}^{n}$ に対しては、$\stackrel{o \ \ }{H^{p}_{k}({\bf R}^{n})}\ =H^{p}_{k}({\bf R}^{n})$ であることはよく知られ ているが、これは一般の多様体においては必ずしも成り立たない。\\ $k=1$ の場合、$M$ が完備多様体ならば成り立つ。 $k\ge 2$ の場合には、次のようにさらに条件が複雑になる。\\ $ \forall j=0,\cdots , k-2\ ^\exists C>0\ s.t.\ |\nabla ^{j}Rc_{(M,g)}|\le C $ $ \ \ and \ \ inj_{(M,g)}>0$\\ である完備多様体に対して成り立つことが証明される。\\ 特に、$k=2$ の場合には条件を弱めて、\\ $ ^\exists k>0\ s.t.\ Rc_{(M,g)}\ge kg\ \ and\ \ inj_{(M,g)}>0$\\ である完備多様体に対して$\stackrel{o \ \,}{H^{2}_{2}(M)}\ =H^{2}_{2}(M)$ が成り立つことが証明される。 3章では、ソボレフの埋め込み定理についてそれぞれユークリッド空間 ${\bf R}^{n}$、コンパクト多様体、完備多様体について考察する。 {\bf 埋め込み定理}とは、次のものである。\\ $^\forall p,q\in {\bf R}\,,\,k,m\in {\bf Z}\ s.t.\ 1\le q
1/q-1/n$\\
$ \Rightarrow H^{q}_{j+m}(M)\subset H^{p}_{j}(M)\,は\,コンパクト$\\
さらに、Poincar\'{e}\,,\,Sobolev-Poincar\'{e} の不等式について述べる。
4節では、完備多様体に対する埋め込み定理の存在性を議論する。まず、コンパク
ト多様体と異なり埋め込み定理が成り立たない完備多様体の存在性を述べる。
また、下に有界なリッチ曲率をもつ完備多様体に対して、埋め込み定理の存在性の
問題について完全に決定する。すなわち、完備多様体に対して埋め込み定理が成り
立つのは、球 $B_{x}(r)\,,\,(^\forall r>0)$ の体積に対して中心 $x$ に関する
一様下限が存在する時に限られる。
さらに、コンパクト多様体において任意の $1\le q