\documentstyle[a4j,11pt,amstex,amssymb,amscd,fleqn1,righttag]{jreport} \setcounter{tocdepth}{1} \newmathalphabet*{\cy}{UWCyr}{m}{n} \addtoversion{bold}{\cy}{UWCyr}{b}{n} %\theoremstyle{definition} \newtheorem{thm}{定理}[chapter]%定理 \newtheorem{lem}[thm]{補助定理}%補助定理 \newtheorem{cor}[thm]{系}%系 \newtheorem{prop}[thm]{命題} \newtheorem{ax}[thm]{公理}% \newtheorem{defn}[thm]{定義} \newtheorem{conj}{予想}[chapter] \newtheorem{exmp}[thm]{例} \newtheorem{prob}{問題}[chapter] \newtheorem{rem}{注意}[chapter] \newtheorem{mainth}{定理} \newtheorem{mainlem}{補題} \newtheorem{inyoth}{定理} \renewcommand{\theinyoth}{} \setlength{\mathindent}{2em} \setlength{\multlinegap}{2em} \newcommand{\qed}{\hspace{2em} \rule{5pt}{10pt}} \newcommand{\defe}{\overset{\mathrm{def}}{=}} \newcommand{\pf}{{\bf(証明)} \par} \newcommand{\sqed}{\hspace{2pt} $/\!\!/$} \newcommand{\sqedsiki}{\hspace{2pt} \;/\!\!/} \pagestyle{empty} \renewcommand{\baselinestretch}{1.28} \setlength{\textheight}{45\baselineskip} \addtolength{\textheight}{\topskip} \setlength{\textwidth}{44.5zw} \setlength{\columnsep}{3zw} \input{mymacros} \newcounter{i} \setcounter{i}{1} \newcounter{ii} \setcounter{ii}{2} \newcounter{iii} \setcounter{iii}{3} \begin{document} \twocolumn[% \begin{center}{\LARGE 部分多様体の全曲率について} \\ \\ \end{center} \begin{flushright} \kintou{10zw}{教科・領域教育専攻} \\ \kintou{10zw}{自然系コース(数学)}\\ 末 木  寧  \\ \\ \end{flushright}] リーマン部分多様体と全曲率の関係についての研究は、1929年の W.\ Fenchel の結 果から始まっている。彼は、ユークリッド空間\,$\bold R^3$\,内の閉曲線の全曲率 は\,$2\pi$\,以上であり、$2\pi$\,の値をとるのは閉曲線が卵形線のときに限るこ とを示した。この定理の拡張は次のような形で、S.\ S.\ Chern\,とR.\ Lashof\,に よって行われた。コンパクト\,$n$\,次元リーマン多様体\,$M$\,から\,$n+p$\,次元 ユークリッド空間\,$\bold R^{n+p}$\,への等長的はめ込み\,$f$\,が与えられてい るとき、$f$\,の単位法バンドル\,$\nu_1 (M)$\,とその体積要素 $\omega$ が自然 に定義される。$S^{n+p-1}$\,を $\bold R^{n+p}$\,内の原点を中心とする単位超球 面とし、$\Omega$\,を\,$S^{n+p-1}$の体積要素とする。$f$\,の(一般化された) Gauss写像\,$\nu \colon \nu_1 (M) \to S^{n+p-1}$\,による\,$\Omega$の引き戻し $\nu^* \Omega$\,は、$\nu_1 (M)$ の各点\,$\xi$\,において形作用素\,$A_\xi$\, の行列式と\,$\omega$\,の積に等しいことがわかる。そこで、\,$|\nu^* \Omega |=|\det A_\xi |\omega$\,を\,$\nu_1(M)$\,上で積分した値を\,$S^{n+p-1}$\,の体 積で割ったものを\,$f$ の全曲率と呼ぶことにする。$f$\,の全曲率\,$\tau (f)$\, について次の3つの定理が成り立つ。(\roman{i})\ $\tau (f)$\,は\,$2$\ 以上で ある。(\roman{ii})\ $\tau (f)$\,が\,$3$\,より小さいならば、$M$\,は$n$\,次元 球面と同相である。(\roman{iii})\ $\tau (f)$\,が\,$2$\,であるならば、$M$\,は \,$n+1$\,次元ユークリッド空間内に凸超曲面として埋め込まれる。\\ \par 全曲率に関する研究は、Chern-Lashofの定理の発見以後、それを\,$M$\,がユークリ ッド空間以外の空間にはめ込まれている場合に拡張することがテーマとなった。 1964年に\ T.\ Willmore\ と\ B.\ Saleemi\ は、非負曲率単連結リーマン多様体へ の閉多様体のはめ込みにおける絶対全曲率を、形作用素行列式の絶対値の単位法バ ンドル上の積分として定義し、Chern-Lashofの定理と同じ形の不等式が成り立つこ とを予想した。これに対して、1984年に\ E.\ Teufel\ が、双曲型空間へはめ込ま れた閉多様体について、上記の2人の予想にかなり近い形の不等式が成り立つこと を証明した。1996年に岡安隆氏(富山大学)は、単位球面および双曲型空間のそれ ぞれについて、Gauss写像とそれを用いた絶対全曲率を定義し、Chern-Lashofの定理 と同じ形の不等式が成り立つことを証明した。さらに形作用素行列式の絶対値の積 分に関しては、双曲型空間の場合にはTeufelのものと類似した不等式が成り立ち、 球面の場合には新たな結果として1つの不等式が成り立つことを示している。\\ \par \,本論文は、全曲率に関する研究であり、特にChern-Lashofの定理の紹介と証明を 主たる目的とする。主要部分の概略は次の通りである。まず、$n$\,次元可微分多様 体から\,$n+N$\,次元ユークリッド空間へのはめ込み\,$x$\,に関する単位法バンド ル $B_{\nu}$\,は\,$N-1$\,次元球面バンドルであり、$n+N-1$\,次元多様体である ことを示す。拡張されたGauss写像\ $\tilde{\nu} \colon B_\nu \to S^{n+N-1}$\, によって、Lipschitz-Killing曲率を定義する。その絶対値の $B_\nu$ 上の積分を 全曲率として定義し、Chern-Lashofの定理を述べる。部分多様体の各点における動 標構を用い、その双対形式および接続形式によって $B_\nu$ および \,$S^{n+N-1}$\,の体積要素を表す。その結果、Lipschitz-Killing曲率は形作用素 の行列式によって表される。Lipschitz-Killing曲率がGauss-Kronecker曲率の拡張 であることもこれから示される。次にGauss写像\ $\tilde{\nu}$\ によって、 $S^{n+N-1}$\,が少なくとも $B_\nu$ の2点によって覆われていることを示し、こ れを用いて定理(\roman{i})を証明する。続いて定理(\roman{ii})の仮定がみたされ ている場合、$\tilde{\nu}$\ によって $B_\nu$ の2点のみで覆われている \,$S^{n+N-1}$\,の点全体の集合が正の測度をもつことを示す。この集合の元であり 、かつ\ $\tilde{\nu}$\ の正常値(regular value)である $\nu_0$ をとれば、 $M$\,上の関数 $\nu_0 \cdot x$ はちょうど2つだけの非退化臨界点 (nondegenerate critical point)をもつ関数となる。その結果、Reebの定理を用い て定理(\roman{ii})が証明される。次に、定理(\roman{iii})の仮定がみたされてい る場合、$M$\,のはめ込み\,$x$\,による像\,$x(M)$\,は$n+1$\,次元アフィン空間に 含まれることを示す。さらに、$M$\,上の任意の点\,$p$\,について、$x(p)$\,にお ける接平面が\,$x(M)$\,を分割しないことを示す。これにより、$n+1$\,次元アフィ ン空間内に閉凸集合\,$F$\,が存在して、$F$\,の境界が\,$x(M)$\,に等しく、 $x(M)$\,が凸超曲面であることが示される。次に単連結位相空間上の被覆空間は、 被覆写像が同相写像となるものしか存在しないことを用いて、写像\,$x$\,が同相写 像であることを示す。\\ \par 本論文の概要は次の通りである。第1章では多様体の定義に続き、はめ込みまたは 埋め込みによる部分多様体の定義を述べ、その例をあげる。さらにリーマン計量、 リーマン接続を定義し、測地線の性質を述べる。第2章では曲率テンソルを中心に して多様体上の各種曲率について述べる。特に断面曲率は曲面のGauss曲率の拡張で あり、G.\ Riemann\ が多様体の概念を創始したとき考察した曲率の概念と一致する 。第3章では全曲率を定める前提となる等長的はめ込みを定義し、その性質を述べ る。超曲面においてはGauss写像の微分が形作用素によって表されることや、 Gauss-Kronecker曲率がGauss曲率の拡張であることを示す。第4章では Chern-Lashofの定理の原形となっているFenchelの定理を曲線論の応用として証明す る。第5章では部分多様体における全曲率を定義する。またそのために必要な諸概 念を述べ、Chern-Lashofの定理の結果を述べる。第6章ではChern-Lashofの定理を 証明し、Betti数および形作用素との関わりについても言及する。第7章では全曲率 の空間形への拡張を試みた岡安隆氏の最近の研究を紹介する。中心射影と呼ばれる $m$次元単位球面から$m$次元ユークリッド空間への写像を用いて、球面および双曲 型空間における部分多様体に関するGauss写像をユークリッド空間におけるGauss写 像に帰着し、全曲率に関する不等式を証明する。\\ \\ \\ \begin{flushright} 指導     森   博 \end{flushright} \end{document}