■質問への回答(2)

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質 問

 無関心から内発的動機づけ(内在化)までもっていくまで,生徒がどのあたりにいるかで支援の形が変わるとのことでしたが,個別指導の時はいいのですが,一斉指導をしているときに,先生の関わり方・支援・言葉かけを見た生徒同士が,「あの子には○○で」「私には○○で」等,生徒同士の間で何か違和感をもたないのでしょうか。

上手にえこひいき

  おっしゃるとおり,現実にはあり得る状況です。動機づけの発想は基本,個人ベースなので,“学級全体”という単位で考えると切れ味が鈍ることが少なからずあります。平均的なところに焦点を合わせて考えるしかないからです。学級全体に目配りしないといけない先生方から見ると,案外使いにくいというのは,認めざるを得ません。

  ただ幸いなことに,原則的には,動機づけの高い子には手をかけず,動機づけの低い子に手をかけてあげるのがいいということですから,ふだんの先生方の対応と比べて,そう突飛なことを言っているわけではないだろうと思っています。おっと,「手をかける/かけない」という言い方は不正確ですね。動機づけの高い子には,その自律性を発揮できるように,こちらからこまごまと指示を与えるのではなく,子ども自身で考えて行動することを促し,適宜フォローしていく方向でよく,一方動機づけの低い子や活動に抵抗のある子に対しては,活動に入って行きやすいように,細かく丁寧に働きかけていくのがよいだろうということです。

  たとえば,全体に対して指示を与えたあとに,机間支援と称して,理解がじゅうぶんでない子には先生がくっついて,わかりやすく補足するとか,課題の出来具合についても,気になる子のところにはわりとこまめに回っていって,できていたら個別に「できている」とこっそり声をかけたり,みたいな対応は,教室では普通にやられています。その延長で考えていいのではないかと思います。

  ですので,私はいつも,「上手にえこひいきしてください」と言うようにしています。

「不公平だ」と言われたら

  もちろん,子どもたちが「不公平だ」と言い出す可能性があることは,否定しません。

  状況は違いますが,不登校傾向の子どもがたまに登校してきたときの先生の対応に関して,このことはよく話題になります。先生としては,学校や授業にいいイメージを持ってもらうために,あるいは学習の遅れを気にして本人の登校意欲が低下してしまわないよう,かなり頻繁に,また少々“甘めの”評価基準でその子に働きかけます。これが,周りの子どもたちの不満を招いてしまい,「えこひいきだ」という声があがる,という構図です。

  で,私のような臨床専門でないインチキ・カウンセラーでもそういう相談を受けることがあるのですが,そのときの私のオススメの対処法は,次のとおりです。

  基本,子どもたちが「自分もかまってほしい」と要求してきたら,ゴチャゴチャ言わずに,要求を入れて同じように接してあげてください,ということになるのですが。

  ただし,同時にちょっとした工夫をお願いします。

  1. 最初に,今後はこのように接すると,はっきり宣言します。また,そう要求する子どもがほかにいないか確認します。もし全員一致の意見ならクラス全体への対応になりますが,ターゲットを絞れるのであれば,以下のやり方は,そちらの方が効果的だと思います。
  2. “甘め”の働きかけは,意識して少し過剰なくらいの頻度で,また少し大げさすぎる演技で,周りにもはっきりわかるように実行します。ひとことで言えば,必要以上に「子ども扱い」した接し方をしてほしいのですが,演技が下手だとただのイヤミになるので注意。あくまで先生は大まじめに実行します。

  これを1週間も続けてみれば,たいてい子どもの方がいいかげん「子ども扱い」されていることに気づいて,居心地が悪くなるはず。そうしたら,そのときにきちんと時間をとって先生の意図を説明し,通常に戻すことを宣言します。あるいは,それほど大げさにする必要がなければ,たんに過剰な働きかけを徐々にフェードアウトしていく,でもいいかもしれません。

  これまでのところ(といっても,まだ片手に及ばないくらいの数しか経験していませんが),それでとくに失敗だったとか問題が発生したというお話は,聞いていません。まあ,高学年限定の対処法ではありますが。