『学習心理学特論』レポートへのコメント

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<2007年度版>
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■ あまいよん!

  はっきり言って,今年の評価は甘かったです。昨年から,ちょっと甘めになってきているのを感じていましたが,今年はハッキリと甘いです。

  というのも,今年は受講生が例年になく多く,とくに心理学に関連する分野以外のコースからたくさん聴きに来てくれていたので,そのぶん少し大目に見てあげないと,なんだか微妙な用語の使い方のミスが決定因になってB評価…というケースがどんどん出てきそうだったからです。

  たとえば,基準の一つに「理論の正確な理解」というのがあります。今までは,おかしな or あいまいな記述が1ヵ所まではA-(他の点と合わせてAかBかを決定する),2つ以上あったらBというのが大きな目安だったのですが,今年は多少首をかしげたくなる記述があっても,全体としてその理論が破綻なく使われていればA評価としました。

  その結果,B判定が例年よりかなり少なくなってしまいました。つまり,心理以外の人が多いからといって,特別配慮する必要はなかったということですね。レポートが出そろってから基準を決めればいいのでしょうが,例年提出期間を長くとっているため,提出された順にざっと読んで,最初の評価をつけてしまう癖がついてしまっています(判断が微妙なものは,全部提出されたあとに,また何度か読み返します)。

  今年だけは仏の顔をして,来年からは通常基準に戻しましょう。

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■ B評価の理由

  さて,こんなふうに書くと,それでもB判定になってしまったみなさんをぐっと落ち込ませてしまいますが,上にあげたようなのは量的な判定なので,ある程度毎年“ゆらぎ”があるのです。一方,「これがあったらB判定」という基準もあって,それに引っかかるとB判定から動かしようがない,という事情があります。

  念のため,今年B判定になったレポートに私が記入した「判定理由」を並べておきます。

・その理論に対する誤解 or 実験群の意味に関する誤解
この事例は★★の実験の△△群と似ている,と書いているが,その理論における△△群の意味づけがちがっている
・他で発表した指導案そのまま? 事例の記述が焦点化されていないので,理論とどう対応するのかわからない
・各帰属因へのあてはまりの説明だけで,動機づけへの影響の記述がない
事例の内容が,4つの帰属因のどれにどのようにあてはまるか,の説明に終わっている。それによってどのような動機づけ効果があったのかまで考えないと,「動機づけ理論」の分析とは言えない
・事例と理論との対応が具体的に書かれていない
ごく全体的に,この事例はこの理論と対応しているとだけ書いてあるが,具体的にどの部分にどうあてはまるのかが書かれていない。どのような生徒の行動が,理論のどのような部分と対応しているか,というレベルで具体的に書いてくれないと,評価しようがない
・授業で扱った以外の理論を使っている
ただし,授業で扱った理論とはまるっきりかけ離れた理論から説明しているものは,Cあるいはそれ以下です(レポートの説明のときにも「評価できない」と言っています)。授業でやった説明を補足するために,他の人の研究や理論を援用することは,基本的には“アリ”なのですが(授業での説明がヘタクソで,補足しないとわからないということでしょうから),そちらが分析のメインになってしまうと,やはり「授業で扱った理論」という枠を超えてしまいますので,B判定。
・複数の理論を使って分析している
事例の部分部分を別々の理論で説明できても,まったく意味がありません。理論同士対立していれば,けっきょく現象としては矛盾していることになるからです。これも説明の際に言いました。
・理論と記述内容とが一致していない
  ★★理論を使って分析する,と宣言しているのに,実際の説明内容は△△理論,というケース。今回は,具体的説明内容の部分ではちゃんと△△理論という名称を明示して説明しているにもかかわらず,なぜか宣言部分は★★理論(★★理論という名称が出てくるのは,宣言部分と最後のまとめだけ)というケースがあって,思いっきり悩みました。

  今年B判定になったレポートは,このいずれかのケースのはずですので,見直してみてください。

  それから,これは評価とは直接関係ありませんが(心情的には,おそらくマイナス方向に評価を引っぱっているはず),今年は誤字・脱字・変換ミスがひじょうに多く見られました。暑かったからか,レポートが異常にたくさん出ていて多忙だったからか。いずれにしても,レポートは提出前に必ず一度は読み返してみましょう。できれば2回以上の読み直し,さらに余裕があるなら,書きあげたら1日おいて,翌日もう一度読み直してみると,間違いを見つけやすいと思います。これは修論のときも同じ。

  なお,今回もC判定が1人います。私が見た限り,このレポートには事例らしい事例の記述が見られませんでしたし,当然,それに関する分析もありませんでした。単純に,生徒を動機づけるためにはどうしたらいいかを書いたエッセイにしか見えませんでした。ついでに言うなら,「授業で扱った理論」を使って書いているとも思えませんでした。要するに,「授業を聞いていなくても書ける教育エッセイ」なのでした。少なくとも私には,そんなふうにしか感じられませんでした。もしかすると,ちゃんと出席してまじめに考えたうえで書いてくれたのかも知れませんが,これだけ題意から離れてしまうと,評価しようがありません。

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■ 新しくS評価

  今年から新しく「S」評定が導入されました。それで,私もどのような基準でS判定を出そうかいろいろ悩んだのですが,けっきょくのところよくわからなかったので,例年やっている「Webで紹介したい“候補”のレポート」の評価基準を取り入れることにしました。ちょっと主観的で申し訳ないのですが,基準といえば,まずは私が読んでおもしろいこと,Webで紹介する都合上,あまり複雑にならずに理論的に説明できそうなこと,そしてなるべく今まで紹介していないジャンルのものであること,といったところでしょうか。

  実際には,またここから選択しますし,場合によっては,ここに入っていないAレポートやBレポートから選ぶこともありますが,まずは第1読解のときに候補としてチェックしておきます。この例年の作業をそのまま使って,S評価としました。

  ただし,その基準だと,しっかり書けているのだけれど,わりあいポピュラーな話題で,すでに紹介している,というケースや,候補レポートと類似した内容,というケース(今までは,その中でいちばん紹介しやすいレポートだけを候補としていたので)が不利になってしまうので,A判定の中から,それらのレポートも同等にSと評価しました。

  その結果,ちょっと数えてみたら,S評価は全部で14人になりました。相対評価ではないので,だからどうということではないのですが,私自身の予想は10人前後でしたので,少し多めでしょうか。でもまあ,内容的に見て,自分では納得できるレベルだと思います。

  ただし,S評価がつくのはM1だけです。M2以上の人たちは,従来どおりの評価基準なので,S評価はA評価になります。Sという選択肢がないのですね。M2以上の人たちには,そのぶん心を込めて「A」と打ち込みましたので,感じとっていただけたら幸いです。

…にしても,ほかの先生方はどの程度S評定を出しているのだろうか? 気になります。

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■ ネタはありません

  えー,今回はここで紹介してクスリと笑える「あらら…」ネタはとくにありません。ありませんが…,ある朝,研究室のドアを開けて中に足を踏み入れたとたん,床に投げ入れてあったレポートを思いっきり踏んづけてしまったのは,ないしょの話です。締め切り間近になると私も気をつけるのですが,その朝は,まだ期限にはじゅうぶん時間があって,夜中にあわてて出さなくてもいい時期だったので,油断していました。来年からは気をつけます。ごめんなさい。それに,夜中ではなく健康的に朝早く提出しにきてくれたのかも知れませんしね。

  気になるのは,昨年も書きましたが,途中で自主的にフェードアウトした人たちの問題です。「受講取消票」を出してくれないと,受講生数と提出されたレポートの数が合わなくて,何度も確認しないといけません。どこかに紛れさせたのではないかと不安になるし,なにより授業を終えて,レポートを読んで成績を提出して,さあこれでオシマイ!! という爽快感がいつまでも得られないのです。これもなんとかしないといけないのですが…,授業に出てこなくなった人たちですから,注意のしようもありません。困りました。



  …では,例によって事例編にいきましょう。

<事例編>にとぶ


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