学習心理学特論の
レポートについて

『学習心理学特論』(修士:前期金5限)のレポートで気づいたこと

1.オペラント条件づけは動機づけ理論か?

 今回,オペラント条件づけをベースにしてレポートを書いた人が数人いました。

 条件づけ理論というのは,通常学習理論そのものなので,動機づけの理論とはちょっと言わないと思います。「外的報酬を利用した外発的動機づけ理論」と言えないこともありませんし,「授業の中で扱った」理論にはちがいないのですが,この部分は動機づけ理論「前史」として扱った部分で,こうした機械的な学習観ではふじゅうぶんだとして,人間の認知を扱う動機づけ理論が台頭してきた…と紹介してきたつもりなのですがね。

 それにしても,前期ずうっとさまざまな動機づけ理論について説明してきた中で,最後に選ばれたのがオペラント条件づけっていうのは,あまりにも悲しい…。

2.ほんとに「内発」か?

 これも,授業の中で何回か繰り返して強調してきたつもりなのですが…。

 たとえば,テストをします。テストの結果優秀者を表彰すると予告します。それを「情報的」にやったら,子どもたちはどんどん自分から勉強するようになったし,点数を上げることを楽しみにしたり,テストを待ち望んだりするようになった,というのです。

 で,これを子どもたちの内発的動機づけが高まったと結論づけているのですが,これは内発的動機づけではありません。「内発的」だと確認できないのです。外的強化が存在する中で,いくら意欲が高まったとしても,それは内発的だとはいえません。先生が変わって,テストがなくなって,家の人からもほめてもらえなくなって,そこではじめて「内発的」かどうかを論議することができます。

 これも,うまく伝わりませんでしたかねえ。しくしく。

3.自主学習

 授業でちょっと言ったせいか,今回は「自主学習」を扱ったレポートがけっこうありました。内容も,肯定的な内容から否定的な内容まで,また教師の立場・生徒の立場とさまざまで,私自身はとってもおもしろく読ませていただきました。

 先生としては,「例」のつもりだったのでしょう,ひとりの子どもの自主学習を紹介したら,みんなそれをまねするようになって,「自主」学習じゃなくなったっていうレポートなどは,なかなかおもしろいケースでした。自主学習を定着させるために使ったシールが,統制的報酬となっていく過程を書いてくれたレポートも,なるほどと思わせました。

 一方教師の立場からは,クラス内に自主学習を定着させるための苦労が語られていて,ほんとにたいへんなのがよくわかりました。やはり子どもの個人差が大きいですね。「個性化」が最近は流行のようですし,個性的な動機づけを重視しようとすると,これからますます授業がむずかしくなっていきそうです。


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