『学習心理学』評価票へのコメント

<2005年度版>

学部『学習心理学』では,授業の最後にこの授業に対する「改善要望」を自由記述で書いてもらっています。それをもとに,次年度の“重点改善目標”を決めているのですが,せっかくいろいろな指摘をいただいているので,このページでは,寄せられた指摘について,きちんとコメントしておきたいと思います。

to_HOME

■ なぜこのページがなかったか

ほかの授業のページはあるのに,なぜこの授業のページはないのですか?

という,要望というか質問をいただきました。

  たしかに。

  でも,正確に言えば,私の中では,ちゃんとページを作っているのは,大学院の『学習心理学特論』だけなのでありまして,他は積極的に作っているわけではないのです。理由は簡単。『学習心理学特論』では,自分の専門である“動機づけ理論”を扱っているので,授業以外の情報提供もやりがいがあるからです。他は1時間のみ担当の授業なのですが,そういう場合,私はプレゼンソフトを使った授業にしています。ところが不親切にも,とくに配布資料を作らない方針なので,受講生があとで内容を確認できるように,ここで資料を公開しています。1ヵ月限定の公開ですから,中身はほとんどないに等しく,それと,ほんとうに何年に一度くらいの頻度で,補足説明がアップされているだけなのです。

  一方,学部『学習心理学』ですが,これは教採対策も兼ねて教育心理学領域の基礎的概念を幅広く解説している授業です。教採に出る問題が一般にかなり古いこともあって,この授業で扱っている内容も,なんていうか「古典的」な内容ばかりです。(そのぶん,『授業の心理学』でバランスをとっているところもあります。)

  それでまあ,個人的には授業内容にそれほど強い思い入れがないものですから,積極的にページを開設しようとは思ってこなかったのですね。

  ちなみに,ずっと以前は,学部『学習心理学』のレポートには,一人ひとりコメントをつけて返却していました(レポート課題は現在のものとはちがいますが)。だから,レポートへのコメントページを作ることは,可能ではあるのです。というか,大学院『学習心理学特論』も,受講生が少なければ一人ひとりにコメントをつけて返していたはずなのですが,なにせ受講生の数が多くて,コメント書きに時間がかかるので,Webページにおもしろいレポートをいくつか掲載し,それへのコメントを書くことで,ある意味お茶を濁していたのが,はじまりなのです。

  それで,『学習心理学』レポートへのコメントはどうなったかといえば,いつのころからか,「コメントを書いたから取りに来てね」と掲示を出しても,来てくれない学生が目立つようになり,ついには取りに来る学生の方が珍しくなって,せっかくがんばって書いたのに,という徒労感しか残らなくなってしまいました。それから,コメント書きはやめました。同じように,Webにコメントを書いても,たぶん学部学生の人たちはほとんど読んでくれないのではないかとも思いまして。その点でも,Webページを作ることに積極的になれなかったのです。

  とはいえ,実質的に『授業の心理学』のページである『中学・高校生に心理学を教える』のページがオープンしたことで,演習・実習科目以外の授業はすべて,何かしらの情報があがっている状態になりましたので,バランスをとって『学習心理学』のページも,とりあえずオープンすることにします。

to_HOME

■ 眠気対策

話を聞いているだけだと眠くなるので,自分たちで活動できるような簡単な実習を入れるといいと思います。

  <眠くなるので>とは,なかなか正直でよろしい。だからというわけではありませんが,いろいろいただいた改善要求の中で,たぶんこれが,私の方向性や興味ともっとも一致しているので,来年度の重点改善目標は,これに決めました。できるだけ,授業の真ん中あたりで,受講生にちょっと体を動かしながら考えてもらうよう,話し合い活動や簡単な実習を仕組んでいこうと思います。

  基礎的内容を扱う前半部分で,今年「応用問題」を入れることにしたのは,自分で考えられるテーマをひとつ設定することで,授業の内容をちょっとは深く理解してくれるのではないかとの,ささやかな意図があってのことですが(けっして眠気対策ではありません),それをもう1歩進めることになると思います。

  ただ,本格的な実習・体験は,この授業では採り入れません。私自身が不得意なこともありますが,教採対策として心理学の基礎概念をなるべく幅広く紹介したいというのがこの授業の主旨ですので,体験的な学習に時間をとられたくないのです。で,そのぶんは『授業の心理学』に回す,というのは,この先も変わりません。

to_HOME

■ プリント資料の改善

  昨年度から導入しているプリント資料ですが,この作り方を改善してはどうか,という提案も昨年から何人かの方からいただいています。とくに,

OHPの内容を全部書くのではなく,ところどころ空欄にして,学生が書き込めるようにしてはどうでしょうか。

  サブノート形式というのでしょうかワークシート形式というのでしょうか,重要な概念を空欄にして書き込む形式というのは,私もひじょうに納得できるものなのですが,オリエンテーションの時に簡単に説明しているとおり,どうも私は,プリント資料についてヘンな“こだわり”を持っているので,プリント資料については,当面改善の予定はありません。ヘンなこだわりであることは,私自身重々承知しているのですが…。みなさん,ごめんなさい。

  以前この授業では,OHPで提示する内容のうち,書き写すのがめんどうな図表類だけをまとめて,プリント資料を作っていました。文字部分は資料なし。提示したOHPの文字を,ひたすら書き取ってもらっていました。たいへんです。

  たいへんですが,「自分で書く」という作業を通じて学習する部分というのはひじょうに大きいと,私自身は考えています。OHPに書かれた内容,教員がしゃべった内容を,書き取れる範囲内で簡潔にまとめて書く。「書いて覚える」というのは昔から言われていることですが,手がかりを増やすことで記憶が促進されるというのは,基本のひとつなのです。

  しかし,実際はどうかといえば,とにかく書かれていることを丸写し,OHPで色を使うと,とにかくそのまんま色を変えて書き写す,といったところに注意を集中している人がいたりして,なかなか思うようにはいっていなかったのです。一方,学生による授業評価が始まって,「OHPの提示時間が短すぎて書き取れない」という不満がひじょうに強いことがわかりました。はじめのころは,どの教員のどの授業のことを言っているか特定できないアンケート形式だったのですが,私の授業でも思い当たることが十分にありましたので,ここは受講生の負担軽減のため,文字情報もプリントして配ることに方針を変更しました。

  それはそうなのですが,やはり私自身は,プリント資料には否定的なのです。ていねいに資料を作れば作るほど,学生には「わかりやすそうに」映るでしょうが,しかしそれは,わかった気にさせるだけで,ちっとも頭に入っていない場合が多いと思います。それは,記憶過程に「自分」が関わる部分が少ないからです。

  ですので,私にとってはプリント資料はあくまで書き写す負担を減らすための「メモ」程度の意味しかありません。それによって積極的に学習を支援しているつもりはまったくないのです。ワークシート形式にすれば,多少自分が関わる部分が増えるのでしょうが,それはあまりに中途半端です。本格的に学習を支援しようということであれば,私は迷わず従来の“書き写し”方式に戻します。

  したがって,当面,プリント資料の改善はしないと思います。ほんと,指摘していただいた人たちには申し訳ありません。せっかく時間を割いて考えてくれたのにね。まあ,情勢の変化というか,要望がものすごく多くなったりしたら,考えざるを得ないでしょうが。

to_HOME

■ コピーの裏紙

プリント資料にコピーの裏紙を使っているのは,環境保護の意図もあるのでしょうが,正直いい気がしません。

  プリント資料については,こんな指摘もいただきました。これもよくわかります。「資源の有効利用」という大義名分があるので,ほんとは言いたくても言えなかった人も多かったのではないかと思うのですが,じつはこれ,リサイクルが中心ではありません。上に上げた理由と同じで,この資料はあくまで“メモ書き”,あるいは“下書き”なのです。私としては,このプリント資料をきちんと綴じ,後まできれいに残しておくことで,「勉強したつもり」になってもらっては困るのです。

  それで,あえて裏紙を使っています。「いい気がしない」から,もう一度自分で「きちんとまとめ直そう」くらいに考えてくれる人がいるといいなあ,などと考えているわけです。あくまで理想であって現実的ではないですし,もう大学生なんだから使い方は自分で考えてくれればいいわけで,教員がヘンなこだわりを持っていては,迷惑なだけでしょうけどね…。

to_HOME

■ スクリーンの問題

スクリーンが見えにくいので改善してください。

  どうも,OHP等の教育機器を使って授業することを,あまり想定していないような教室の造りのようで,毎年悩むところではあるのですが,とりあえず携帯できる液晶プロジェクタ(カタログで見るかぎり,けっこう明るいはず)を新しく買いましたので,来年からは少しは見やすくなるかと思います。それにあわせて,来年度からは,OHPでなくプレゼンソフトを使っての授業に変わります。


to HOME