ごくごくうちわ向けの論文用文章講座

文章講座

Last Updated on: 2006.01.16.

< 図 >

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図(グラフ)を使おう

 グラフは,結果を直感的に理解できるので,とても参考になる。論文に書くかどうか以前に,自分自身が結果をよりよく理解するのに役立つ。たとえば,ねらった群間の差には気をつけてよく見ているが,グラフを見ると思ってもいなかった群の間に差が出ていてびっくりすることがある。有意差は得られたものの,予想した群間の差は意外に小さかったりもする。こんなふうに,結果のあらわれ方についてある程度イメージを持っておくために,グラフは有用だ。主効果が見られたといって舞い上がってしまい,予想外の差を見逃してしまわないようにしたい。

 それに,統計分析の結果を読みとるときにも,実験結果をグラフ化して手元においておくとわかりやすい。だから,結果をグラフ化しておくことは絶対お薦め。

 論文に書く場合,研究誌の論文などでは枚数の制限もあり,正確な平均値やSDが表現できないなどという理由で,一般に図は敬遠されがちだが,修論では大きな制限がないので,説得力のある図と正確な数字を示す表を併用してもいいだろう(研究誌では,内容が重複するので,同じデータを使って図と表の両方を書くのはダメ)。もちろん,すべての指標について図と表を全部並べるのはいかにも冗長だが,強調したい結果・はっきりあらわれた結果に絞ったうえで,図を効果的に入れると,きっととてもわかりやすい論文になる。とくに,表ではわかりにくい交互作用を説明するときには,図は強い味方になる。

 ただし,グラフ作成ソフトからの出力をそのまんま貼りつけたような図は,たいていの場合まったく役に立たない。インパクトのある図にするためには,それなりの努力が必要なのだ。特に以下のような図には注意しよう!

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差がわかりにくい図

fig1

         縦軸が狭くて差異がわかりにくい図

 横長で縦軸が狭く,凹凸がわからない図。どことどこの間に差があったのかさっぱりわからない。上に書いたように,図は結果を直感的に理解できるようにするためにあるものなので,こんな図を作ってもまったく意味がない。縦軸と横軸の調整くらいは,最低限やっておくべきだ。

fig2



(こちらのように縦軸を広くとると,ずっと見やすくなる)

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折れ線が識別しにくい図

fig3
 折れ線のラインが細すぎてわかりにくい図。特に,補助線が密に入っていたりするととても見にくくなる。ラインはある程度太く!

 それから,2つ以上の群をいっしょの図に示す場合,点の形が●と▲に変わっているだけで,ラインはどちらも実線という場合がけっこう多いが,これも区別がつきにくい。群間の比較をきちんとするためには,点だけでなく,ラインのスタイルもきちんと変えよう。

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たくさんの情報を盛り込みすぎる図

fig4
 ラインがごちゃごちゃ入り乱れていてさっぱりわからない。たんに図にすればいいや程度にしか考えていないようにみえる。どこの差を強調したいのか,きちんと意識しながら,必要な情報に絞ってグラフ化しよう。

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網掛けに濃淡の差がなくて見分けにくい図

fig5fig6

 左の図は,棒グラフにつけた網掛けの濃淡の差が少ないので見分けがつきにくい。2本くらいの棒なら何ということもないが,たくさん棒が並ぶと目がチカチカしてくる。

 右の図のように,網掛けはできるだけ濃淡の差を大きく! また輪郭線も太いほうが見やすい。

 ちなみに,網掛けのドットがあまり細かいと,コピーにかけたときにつぶれてしまったりムラが出たりするので,ある程度粗い地模様を選んだほうがよい。

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グラフを縦軸上からはじめない

fig7
 右の図の左端に注目してほしい。グラフの端点と縦軸の表示が重なって見にくい。けっこうデフォルトでこういうグラフを出力してくるソフトが多いので,設定しなおそう。

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軸のラベルを忘れずに!

軸ラベル
 グラフの軸にはラベルをつけよう。特に忘れがちなのが(私も含めて!)横軸のラベル。「実験群」「統制群」のように個々のラベルをつけて,ついつい安心してしまうのだが,その下に「実験条件」というような,全体を示すラベルをつけるのが正解。

 グラフは,本文と離れて単独で他の人に引用される場合が多いので,グラフの中になるべく多くの情報を入れて,本文を参照しなくてもひと目で内容がわかるようにしている,と考えるといいだろう。だから,縦軸の単位(%など)も,必要に応じて入れておくとよい。

 ちなみに,私が論文投稿規程を一生懸命勉強していたころの「心理学研究」の投稿規程では,グラフの目盛線(縦軸から横方向に出ている短い線のこと)は,グラフの内側に向けて出ていたはずだが,最近のAPAマニュアルを見ると,例図はどれも,外側に向けて出ていた(上の図のやり方)。

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最後に

 とにかく図は,結果をひと目でわからせることが最終目的。できるだけ差異が目立つように作ろう。グラフ作成ソフトのデフォルト値そのままで出力して楽しようと思わないこと。