はじめに
タイトル
 ここに米日財団の資金により、上越教育大学米国理解プロジェクトの報告書「米国理解のための社会科教材開発」を上梓できますことは私の最大の喜びとするところであります。思えば、第二次世界大戦後、新しい日本国憲法のもとに民主主義の原理に立つ平和教育の確立を目指し、戦前の歴史、地理、修身に代わって新たに社会科が導入されましたが、そのモデルとなったのはアメリカ合衆国のSocial Studiesでありました。それ以後、合衆国の教育改革は我が国の教育にも多大な影響を与えて来ましたが、社会科教育についても同様でありました。私自身も中・高・大学において歴史学・歴史教育の面から社会科教育の実践に取り組んで参りました。そして今こそ,その現代的意義に注目しています。
 本研究の主なねらいは、次の二つでありました。
○米国理解を促す小中高等学校社会科(高等学校は地理・歴史科)の教材開発を行い、その成果と課題を明らかにすること。
○現職教員がアメリカに出向き、それぞれの問題意識に基づく調査活動を行ったり、アメリカの現職教員と交流することで、自らの国際感覚を磨くこと。
 この二つのねらいに迫るため、本年度の訪問地をアメリカ東部の都市部(ワシントンD. C.、ピッツバーク、ボストン、ニューヨーク)に求めました。そして、昨春から社会系の大学教官と現職教員とが事前研究を協同で行い、それぞれの学校段階で有効だと思われる教材開発の視点を探ってきました。帰国後は、各自・各グループの研究テーマに即して、教材開発の視点を明らかにしたり、授業実践を行ったりして、その教材の有効性を検証いたしました。また、昨年末(1998年12月12日)には上越教育大学において米国理解研究発表会を開催し、これまでの研究成果を公開しました。そこでは、上越地区の教師を中心に30名ほどの参会者が集い、有意義な議論が交わされました。
 21世紀を迎え、新たな教育改革の必要性が求められる今日、ささやかな試みではありますが、写真教材やホームページの開設により合衆国の社会科教材開発の一端も提示することに致しました。この報告書とホームページが広く活用されることを願ってご挨拶と致します。

ペンシルバニア州ピッツバーグにて
平成11年1月1日
上越教育大学学長(訪米団長)

加藤 章