テーマ別編 中学校 1/6
中学校社会科公民的分野における「写真」の教材化について
上越教育大学・院 社会系
(上越教育大学学校教育学部附属中学校) 釜田 聡 
1.はじめに
 平成元年告示の中学校学習指導要領第2章第2節「社会」公民的分野の目標及び、内容は、「アメリカ合衆国」について直接言及していない。しかし、政治や経済、文化等、日米間の関係は密接な関係にあり、すべての内容項目において、アメリカ合衆国の事例と比較したり、関連づけたりすることは可能である。
 たとえば、「現代の社会生活」においては、日米の家族の在り方を比較しながら、日本の家族生活の特徴を浮き彫りにすることができる。また生徒がアメリカの情報化について学ぶことで、情報化社会の光と影を認識し、将来の日本について思いを巡らすことができる。
 「国民生活の向上と経済」については、日米の貿易問題について考える場を設定することで、貿易の役割と意義について認識を深めることができる。
 「民主政治と国際社会」では、日米関係に着目する具体的な資料を提示することで、戦争を防止し、世界平和を確立するための熱意と協力の態度を育てることができると考える。
 今夏、アメリカ東部の大都市を訪問する機会を与えていただいた。ここでは、ワシントンD.C.で撮影した写真の教材化の可能性について報告する。
2.写真教材の活用について
 最近、社会科の学習において、教師の情報提示や生徒の学習具として、コンピュータやデジタル・スチルカメラ等の新しいメディアが活用されている。こうした風潮について、白石祐一は「写真やスライドは、静止画ゆえに静を動に変えて見るという児童生徒の知的作用、つまり類推的思考や関係的思考を積極的に促していくという他のメディアにない機能があるのである」と、写真の機能の再確認を求めている。
 良質の写真教材については、生徒の学習経験や興味・関心を十分把握し、適切な写真を選定する教師の力量が必要とされることは言うまでもない。ただやみくもに、撮影した写真を並べ立て、教師が説明するだけの授業では、写真がもつ価値を十分引き出すことは難しいと考える。
 そして、写真を教材化する際は、次のことが大切と考える。
(1)  生徒の学習経験や興味・関心、問題意識を十分に把握する。
(2)  写真を選定する際、その写真に含まれる歴史的背景や社会的背景等が授業のねらいに迫ることができるか否か、十分に吟味する。そして、必要に応じて、写真の加工を行う。
 コンピュータやスキャナ、カラープリンタの普及により、拡大やトリミングが可能になったので、写真教材の活用はこれまで以上に有効な手法になると考える。