テーマ別編 中学校 1/10
多民族・多文化のアメリカ合衆国(エスニックグループの生活)
上越教育大学・院 社会系
(長野県須坂市立相森中学校) 麻田正明
1.はじめに
 外国について子どもたちが学習する際に、実際に見聞き、体験してきた話は学習内容を必然的に豊かにする。学校外の人材を活用することで内容を深めることも工夫もできる。が、何より指導者自身が直接経験し理解していることは有益で、生徒の興味関心をぐっと引きつけることができる。
 今回、米日財団の厚意によってアメリカ東部の大都市を訪問できる機会を得た。中学校社会科教師として現場での授業に直接フィードバックできる内容として、エスニックグループの実際の生活から多民族・多文化のアメリカを教材化することをテーマとして報告する。
2.現地に見るエスニックグループの生活
   今回訪問した都市にもエスニックグループが集住地区を形成している例がいくつかあった。うち訪れることができたいくつかを紹介する。地区によっては危険もあり、旅行者が無用意に入ってはいけないことが原則であることが、アメリカ社会の現実の一面でもあり、十分入り込んでの調査はできなかったことを断っておく。
(1) ボストン市
祭で賑わうチャイナタウン [1] イタリア人街
   ボストンの観光ルートフリーダムトレイルをたどり、ハイウェイの高架をくぐった一角がノースエンド地区である。ここは歴史とともに住む民族が移り変わってきた地区である。独立戦争の英雄ポール・リビアの住んだ家やボストン最古の教会オールド・ノース教会があるように、植民初期から建国の頃までは、本国での宗教弾圧を逃れてきたイギリス系移民の町であった。その後19世紀頃まではアイルランド系や東欧からの移民が多く住んだ。20世紀になってイタリア系移民が住み着き、現在イタリア人街を形成した。一歩足を踏み入れると町並みががらっと変わり、オープンカフェをもつイタリアレストランが並んでいる。オリーブオイルの香りが漂い、店の看板や表示はイタリア語、店員はイタリア人のようで、イタリア語なのか英語ではない言葉が聞こえてくる。食材店もあり、様々なパスタやオリーブオイル、トマトの罐詰などのカラフルな陳列が目に留まる。
写真-1 祭で賑わうチャイナタウン
 子どもたちの演じる獅子舞