テーマ別編 高等学校 1/6
ピッツバーグの産業構造変化と都市再開発
新潟県立新潟西高等学校 志村 喬
1.はじめに
 高校地理においてピッツバーグは、産業の単元では五大湖南岸地域の大製鉄都市として、都市問題の単元では都心再開発を成功させた都市として扱われる。例えば二宮書店『詳説地理B』(1996)では「鉄鉱と石炭が五大湖・河川・運河による水運で結びつけられ、五大湖沿岸一帯には、ゲーリー・クリーブランド・ピッツバーグ・ダルースなど、いくつもの製鉄都市が立地した」(pp.150-151)「ペンシルベニア州ピッツバーグは鉄鋼の町として、オハイオ州アクロンはゴムの町としてそれぞれ栄え、(略)しかし、技術革新による国際競争の激化や交通・通信・情報などの発達によって、これらの都市の成長と繁栄をささえてきた基盤がくずれてきている。(略)工場の移転で、都市の低所得者層をささえていた職が減った。そのうえ、通信システムの発達で、サービス部門の企業もまた、郊外に移転しはじめている。その結果、都市内部は空洞化して貧困者が増大し、(略)。このような大都市では治安が悪化し、行政上の大きな課題となっている。(略)ピッツバーグなどでは、廃れた都心部を再開発して金融・商業・観光を大きく取り入れ、再び人々を引きつけている。」(pp.196-197)と述べられている。しかし、ワシントン D.C.、ボストン、ニューヨークに比較してピッツバーグの情報は少なく、授業は平板な説明になりがちである。そこで、ここではピッツバーグの産業構造の変化と都市再開発に関して収集した情報を報告し、授業改善に資することを目的としたい。
2.ピッツバーグの概要
 ペンシルバニア州南西部アレゲニー郡の中心都市ピッツバーグ市は、アレゲニー川とモノガンヒラ川が合流し、オハイオ川となる古くからの要衝に立地し、現在も重要な河港を持っている。地形的には、アパラチア山脈北西端を占めるアレゲニー山地西麓の丘陵地帯にあたり、合流点付近の河川水面標高は約216mであるが、市街地が広がる丘陵地の標高は350mを超える。市の人口は約37万人(1990年)で、フィラデルフィアに次ぐ同州第2位の都市である。ただし、市域は図1に示される約142km2の範囲であり、都市地域は市域外にも拡大してピッツバーグ大都市圏を形成している。
ゴールデン・トライアングル
写真1 ゴールデン・トライアングル
(再開発地区)
(手前がモノガンヒラ川、奥はアレゲニー川)