珈琲ブレイク

アイアンシティー(鉄の町)のシンボル「転炉」


写真12 鉄の町のシンボル「転炉」
 ペンシルベニア州ピッツバーグ。少し前の受験地理的な知識を持つ人であったら、 鉄鋼業!と条件反射的な答えが返ってくるかもしれない。 五大湖周辺は相対的な地位が低くなったとはいえ、合衆国工業の中心で、 多くの工業都市が存在する。シカゴ、ゲーリ、デトロイト、クリーブランド、 アクロンなどなど。このピッツバーグもそのひとつ。
 写真は、そんな町を象徴するものである。鉄鋼は原料としての鉄鉱石の他、 コークス、石灰石が必要である。これらが溶鉱炉に入れられ、 まず銑鉄といわれる炭素分が多く含まれる粗末な鉄ができる。 これをさらに回転可能な炉に入れ、炭素その他の不純物を取り除いて硬い鋼(鉄鋼) とするのであるが、写真がこのとき使われるものである。転炉といわれる。
 戦前、粗鋼のシェアで、アメリカは世界の四割近くの生産を上げていた。 しかし現在は、中国、日本にその座を奪い取られている。 ここに本社を置くUSスチールが、世界のトップ企業として君臨していたわけであるが 周知のように新日鉄が世界一となっている。USスチールはシェアで11%、 世界で9位の生産量に過ぎなくなっている。アメリカ全体でみても実は現在、 鉄鋼の世界一の輸入国になっているのである。
 さて、写真の転炉、鉄の町のシンボル的存在になっていて、 ステーションスクエアのすぐ隣に展示されている。そして最近、 鉄鋼の町ピッツバーグの今昔の面影を探るという観光コースとして 「鉄鋼ツアー」が企画されたが、このツアーの出発地がこの転炉のところである。
 ところで、この転炉なんと実際に1960年代まで使われていた。 技術革新の遅れが日本などにかなわなくなってきたことを示す存在かもしれない。
(五十嵐 雅樹)