小学校第5学年社会科
カリフォルニアウインドファームから自然エネルギーの大切さに気付き、 我が国の電力エネルギーの在り方を考える学習

上越教育大学・院 社会系 M1

(東京都中央区立久松小学校)齋藤 幸之介


1.はじめに

(1)新学習指導要領との関連
 本実践では、カリフォルニアのウインドファームを事例として取り上げて アメリカ合衆国の電力供給、特に自然エネルギーに対する考えのよさに気付くとともに、 我が国の電力エネルギーの現状を調べ、今後のエネルギー供給の在り方について考えること をねらいとする。学習指導要領には、第5学年としては電力は扱わないことになっているが、 内容(4)のウにある「国土の保全や水資源の涵養のための森林資源の働き」をさらに発展的に扱い、 資源の大切さからエネルギーの在り方を追究できるように位置付けていく。 小学校学習指導要領解説社会編には、森林を単に木材の生産だけでなく、 国土の保全や水資源の涵養のために大切な働きをしていることや、大気の浄化や 騒音防止など生活環境を保全する働きを果たす大切な資源であることを扱うように 記されている。これらの内容について調べ考えたことを、さらに電力という一つの エネルギーの在り方の学習に発展させていくことによって、我が国の国土に対する理解と 愛情をより一層養うことができる、と考えた。さらに、自然エネルギーの開発に対する 取り組みからアメリカ合衆国のよさに気付くことが、例えば第6学年の世界の国々と の関わりについての学習に生かされることを狙っている。
 なお、学習指導要領によれば、第3学年及び第4学年では、内容(3)のアで 「飲料水、電気、ガス」の中から事例を選択し、その確保や廃棄物の処理など について扱うことになっているので、電力に関する学習とも関連づけて扱っていきたい。

(2)教材化の意義や教師の教材観
 我々の生活の中で活用されている資源については益々関心が高くなり、 またそれと共に環境に配慮する重要性も叫ばれている。電力の供給に関しても、 様々な問題点や改善点が挙げらおり、今後の在り方についても多様な取り組みが期待されている。 だから子どもたちに電力の重要性や今後の在り方を追究させていくことは 資源や環境に対する見方や考え方を広げたり深めたりする上で大変重要である。
 我が国の電力需要は年々増え続けており、今後もさらに増えるだろう、 と予測されている。そんな中、我が国では様々な工夫をして電力を安定して供給しようと 努力されている。現在は、火力、原子力、水力といった発電方法を中心に発電が行われており、 おかげで我が国では停電がほとんどないといった質の高い電力を供給できるシステムを 確立している。しかし、一方では我が国がエネルギー資源に乏しいために全体の 約80%を輸入に頼る、火力発電によって二酸化炭素が排出される、といった問題も少なくなく、 対策が必要になっている。また、安定供給のための一つとして原子力発電が盛んに行われる反面、 国民の不安も少なくなく、安全性を高めるための工夫や努力も行われている。そのほか、 自然エネルギーへの取り組みも進められている。現在はわずか1%であるが、 今後2010年までには3%の発電ができるようにすることが目標である。確かに、 デンマーク、ドイツなどと比べると、自然エネルギーに対する考え方や取り組みは遅れていると 言わざるを得ない。現在の質の高い電力を安定して供給するためには、 自然エネルギーだけに力を注いでいるわけにはいかない、という実態もある。 しかし、今後の発電方法の一つの選択肢としてとらえておく必要があることも 考えていかなくてはならない。実際、風力発電について言えば、全体の約7.3%までを カバーすることが可能であると示された例もあり、自然エネルギーに対する理解も 深めていく必要がある、と考えられる。
 カリフォルニア州の風力発電はアメリカ合衆国の中での中心的な存在である。 広大な土地や風を生かして、現在カリフォルニア州の電力の約1.2%を供給している。 アメリカ合衆国では、1973年の第四次中東戦争によるいわゆるオイルショックの時に、 自国の資源による発電方法の一つとして導入された。季節によって稼動率にバラツキが あるなどの問題を抱えてはいるが、例えば電力使用量の多い夏場に適度な風が吹いて多くの 電力が供給できることなど、自然を有効に活用している。また、風力発電のコストが大幅に 下がったり発電タービンの改良によって発電効率が46%も向上したりするなど、様々な工夫が なされている。今回訪れたアルタモント地区には、138km2の広大な土地に約6,000基がある。 規模を含め、カリフォルニア州の自然エネルギーに対する取り組みやコンセプトをとらえるのに 適切な事例である。
 以上のように、我が国も、国土の自然条件や社会条件を克服したり生かしたりしながら 電力を供給しているが、同時に、アメリカ合衆国でも、国土や地域の特色を生かそうとする 工夫や努力が見られる。様々な取り組みについて学習することは、子どもたちがより広い 視野で今後の電力供給や資源、環境について考えていくことにつながる。そこで、 カリフォルニア州の取り組みを追究していく中で自然エネルギーを活用する人々の 考えのよさに気付く学習を展開し、 さらに我が国の資源やエネルギーについて考えていくようにしたい。



2.授業構想

(1)授業の意図

 本授業は以下の点を中心に展開されるようにしたい。
[1] 我が国では、様々な発電方法があること、特に、 現在では多くの電力を供給するために、火力、原子力、水力といった方法を中心に 発電されていること。
[2] アメリカ合衆国のカリフォルニア州では、自然条件を生かした 風力発電に取り組んでいること。そして、このような取り組みのよさを参考にしながら、 我が国なりの発電の在り方を考えていくことが大切であること。

(2)児童の実態から(アンケート対象:東京都中央区立久松小学校第5学年1組36名)
 まず、知っている発電方法とその特色について尋ねたところ、 風力(25名)、原子力(19名)、水力(20名)については、それぞれ半数以上の児童が知っており、 また簡単ではあるが発電のしくみについても把握していた。風力発電については、 TVコマーシャルの影響(T自動車)が考えられ、関心の高さをとらえることができる。 また、太陽光(8名)、地熱(3名)、波力(1名)といった自然エネルギー発電についても 知っている児童がいた。(なお、火力発電については、アンケートの記入例として使用した。)
 次に、今後の日本の発電方法について尋ねた。しかし、発電のしくみについては知っていても、 それぞれのもつ長短所などについては十分に理解していない児童が多く、 無記入が半数程いた(18名)。また、記入した場合でも、 もっと多くの電気が必要であることは分かっても、どのように多くの電力を 作り出していくかについての記述は少なく(2名)、環境との兼ね合いで 考えている児童はいなかった。
 以上の実態を踏まえ、自然条件を生かした風力発電の特色を中心にカリフォルニア州の 取り組みのよさを理解させるとともに、我が国の自然条件や社会条件を踏まえて 今後の電力の在り方を考えさせるようにしていく。

(3)指導計画
過程 主な学習活動 指導上の留意点




[1] 様々な発電方法やその特色をとらえると共に、 カリフォルニア州のウインドファームの風力発電に関心を もって詳しく調べようという学習問題を設定する。
学習問題
アルタモントウインドファームについてくわしく調べてみよう
発電方法については、アンケート調査の結果を生かしながら 児童の発言を中心にまとめていき、さらに現在の我が国の発電の特色が明確 になるように助言をしていく。
ウインドファームの特色がつかめるように、 発電機の大きさや数、広さなどに着目できるような映像資料や写真資料を提示し、 意欲も喚起できるようにする。





[2] [3]アルタモントウインドファームについて調べる。
ウインドファームの特色・設置の理由・アルタモントの特色・ ウインドファームの長短所・風力発電という仕事のすばらしさなど
ウインドファームについて調べやすくするために、 ワークシートに観点を明示しておく。
次時以降に自分の考えが生かされるようにするために、 調べたことをもとにしてウインドファームのよさについてまとめる 時間を十分に確保する。





[4] 調べたことをもとにして、今後の日本の電力について話し合い、 自分なりの考えをまとめる。
風力発電を始めとする自然エネルギーへ着目した発言を認めるとともに、 地図や既習事項をもとにして、我が国に適した発電方法について様々な 観点から考えてみるように促す。

(4)本時のねらい
 アルタモントウインドファームについて意欲的に調べてその特色を理解するとともに、 ウインドファームのよさについて自分なりにまとめる。

(5)本時の指導(90分、2時間扱い)

学習活動

○教師の支援 ☆評価

(1) 前時の学習について想起するとともに、 学習問題について確認する。
前時での板書を模造紙に書いておき、発電方法などが想起しやすいようにする。
学習問題 アルタモントウインドファームについてくわしく調べてみよう
(2) ウインドファームについて調べる。
  <調べる観点>
  ・ウインドファームの特色
  ・ウインドファーム設置の理由
  ・アルタモントの特色
  ・ウインドファームの長短所
  ・ウインドファームで働く人の仕事内容
  ・仕事に対する考え(誇りなど)
すすんで映像資料を見て、確実に理解をしているか。
十分に理解できるようにするために、観点ごとに映像を止めて見せたり、 同じ映像を再度見せたりする。
ウインドファームについて調べやすくするために、 ワークシートに観点を明示しておく。
(3) 調べて分かったことを発表する。
分かったことをすすんで発表しているか。
観点ごとに発表させて内容を確認しながら、ウインドファームについての 理解を深めさせていく。
(4) 調べたことをもとにして、自分の考えをまとめ、発表する。
ウインドファームについて調べたことをもとにして 自分の考えをまとめたり発表したりしているか。
板書やワークシートを活用するように促すとともに、 特にどの観点について印象深かったかなと尋ねるなどの働き掛けをする。



3.授業の実際(実施場所 東京都中央区立久松小学校第5学年1組 実施平成12年10月5日)

(1)前時の学習
 前時の学習では、様々な発電方法とその特色について確認をし、 さらにアルタモントウインドファームの映像資料と写真資料を見てその様子 の大体をとらえることを通して学習問題を設定した。
写真1 アルタモントウインドファーム
 発電方法については、アンケートでも分かったように多くの児童が何かしらの 発電方法を知っていたことが把握できたので、まず発言を中心にまとめていった。 火力、原子力、水力、風力、地熱、太陽光、波力、といった発電方法とその特色を明らかにできた。 現在の我が国の発電の特色については教師が提示した資料をもとに、火力、原子力、 水力が中心であることを全体で押さえた。
 次に、電力需要が毎年増加しさらに今後も増えることを予想したグラフを観察しながら、 今後の電力需要に応えるための工夫について発表し合った。 ここでは、まだ学習内容も十分ではないので、感想程度に止めたが、 発電方法の特色から、環境を配慮する必要があることや、 需要に応えるためには火力や原子力などを中心にやっていくことが大切ではないか、 といった次時以降につながる考えが出された。
 さらに、映像資料と写真資料を提示し、アルタモントウインドファームの様子 の大体をとらえた。地図帳でカリフォルニア州アルタモントの位置を確認し、 続いて写真資料を配布した。写真資料は、特に発電機一基の大きさがつかめるように、 授業者が発電機の下に立って大きさがイメージしやすいものを選択した。 各自に1枚ずつ、B5版のカラーコピーを配布した。児童は、 その大きさをとらえ歓声をあげていた。中には、授業者の身長から、 羽や支柱の長さを計算し、その大きさに改めて驚いていた。また 、児童はそれぞれじっくりと写真資料を観察し、 プロペラ以外の形をしたものがあること(ダリウス型)や草に黒いもの (牛糞あるいは馬糞)があることを発見していた。それらについての説明を簡単に行っていくと、 児童はさらに興味深く写真を観察する姿が見られた。続いて、 ウインドファームの大きさに気付けるように、3分ほど映像を流した。 写真資料からつかんだ大きな発電機が丘の尾根に並んでいる様子、 プロペラが勢い良く回っている様子などを観察し、児童は、 「 あんなにたくさんあってあんなに大きいのならたぶんものすごく多くの電力を作れるだろう」 「風が強いせいか、プロペラが速くまわっていた」 「一体何本の発電機があるのだろう」と発言をしていた。 これらをもとにして学習問題を設定した。

(2)本時の指導
写真2 資料を調べる
 最初に、前時の板書を模造紙に書き写しておいたものを提示し、 学習した内容を想起した。ウインドファームについての感想や疑問について 前時に発言のなかったものをワークシートから見つけておいて紹介することを通して、 学習問題をより強く意識させるようにした。
 続いて映像資料を用いて学習問題について調べる活動を行った。
 最初は、T電力のHさんからアルタモントやウインドファームについて説明して頂いた 資料を提示した。Hさんの話から児童がとらえたことは次のようである。
アルタモントウインドファームはどんなところか
1980年代に開設・面積138km2、東京ドーム10,600個、
発電機約6,000基、日本の約200倍・アメリカで最も古い・風車の間隔25m、など
ウインドファームができた理由
 
1970年代のオイルショック(アラブ地方の戦争)によって石油の値段が上がり、困ったこと
アメリカ合衆国では、自国の資源で発電できないかを考え、その一つとして風力発電を取り入れたこと
写真3 映像資料を視聴する児童
どうしてアルタモントに建設されたのか
 
発電に必要な強さの風が吹く・大都市(サンフランシスコ)に近い・農牧業をしながら風力発電もできる
樹木がないので、風が受けやすい・騒音による公害がない、など
ウインドファームの長短所
 
地球にやさしい、二酸化炭素が出ない・コストが下がってきた・国からの 補助金が出る
風の向きや強さが一定ではない・午後11時から午前5時 に風が吹く(人があまり使わない時間)
 続いて、S社(風力発電の管理会社)のWさんからの説明を視聴した。
仕事の内容
 
様々なデータの報告(電力の生産量、メンテナンス、どの位風が得られているかなど)
風力発電のすばらしさ
 
いくら使っても減らない・公害につながらない、など
仕事に対する考え
 
気に入っていて楽しい・みんなにも受け入れられる仕事だと思っている・ 誇りをもっている・これからもがんばっていきたい
 観点ごとに十分時間を取って映像資料を視聴できるようにし、また、 わかったことを発表する場を設けたので、児童は確実に理解できた。また、 映像資料作成にご協力下さったHさんやWさんが児童に理解しやすい言葉で語りかけて 下さっていたので、一層理解が深まった。
 続いて、感想や考えをワークシートに書き、それをもとに発表を行った。
<お二人の話を聞いての感想や考え(抜粋)>
アメリカ合衆国では、様々な調査をして風が 十分に吹く場所を選んでいるからすごく努力していると思った。
ウインドファームを大都市に近いところに つくるなんて、いろいろと研究していてびっくりした。
アメリカ合衆国は、オイルショックの時に、 自分の国で解決しようとしていてすばらしい。
アルタモントは東京ドーム10,600個分で、 すごい広さだった。おどろいた。アメリカ合衆国は広いからこれだけ多くの 風力発電機を設置できたんだと思った。
Wさんは、「風力はいくら使っても減らない」 と言っていた。だから風力発電はすごいし、 そんな仕事をしているWさんもすばらしいと思った。
化石燃料より高いけれど、地球の環境を考えたら、 風力発電は欠かせないと思った。
 以上のように、アメリカ合衆国の自然条件や取り組みの すばらしさに着目することができた。アメリカ合衆国に対する理解が深まった、 と考える。また、Wさんのお仕事に対して共感的に理解している児童もおり、 映像資料の効果が現われたととらえた。さらに、風力発電を中心に自然エネルギー のよさへも着目できた。
 最後の活動として、今まで学習したことをもとにしてこれからのわが国の電力の在り方 についての話し合いを行なった。
教 師: 今までカリフォルニア州の ウインドファームを中心に学習を進めてきました。最後に、 もう一度わが国のこれからの電力について考えていきます。
写真4 話し合い活動
児童1: 私は、風力発電はすばらしいと思いました。 だから、日本でももっと風力発電を増やしたらいいと思います。
児童2: 私も、環境にやさしい方がいいと思います。 だから、自然エネルギーの開発にもっと力を入れていきたいと思いました。
児童3: 例えば火力発電は、燃料を燃やすと 二酸化炭素が増えてしまいます。だから自然エネルギーに賛成です。
児童4: でも、自然エネルギーは今まだすごく 少ないし、火力や原子力発電をやめてしまったら、電気が足りなくなりませんか。
児童5: 付足しで、日本には、 アルタモントのように広い土地はないから、風力発電機をたくさん作ることが できないのではないでしょうか。
児童6: 地図で見ても、私は広い土地は 北海道位しかないと思います。
児童7: だから私は原子力発電を大切にしたいです。 確かに自然エネルギーはすばらしいですが、 それだけでは今の電力はまかなえません。原子力は、 まわりに悪い影響を与える可能性があるけれど、 さらに設備をしっかりしていけばいいと思います。 このような取り組みは今も行われています。
児童8: 私はよくわからなくなったんだけれど、 自然エネルギーも大切だし、これからもたくさんの電気が必要だから 原子力などの一度にたくさん作れる発電方法も大事にしていくべきではないかと思います。
 最初は活発だった話し合いも、児童同士で様々な発電方法のよさを根拠に意見を述べているので、 だんだんと発言が少なくなってきた。それぞれが迷っている様子が見取れた。 そこで、一つの方向を示すために、Hさんの意見を映像資料で視聴することにした。
<Hさんの話の内容>
 自然エネルギーは確かにすばらしいが、電気はすぐに使わないと無駄になってしまう。 また、風力発電機が多く設置できる場所は、北海道と九州の阿蘇山麓くらいではないだろうか。
 そこで、現段階での取り組みとして次の3点を考えている。
原子力発電を進める。
風力や太陽光エネルギーを開発する。
大都市近くで安いガス発電を進める。

 Hさんの考えをもとにして、ワークシートにまとめを行った。 最初一つにこだわっていた児童が多かったが、Hさんの話から、 様々な発電方法を組み合わせていくといった考え方が増えてきた。
迷ってしまう。環境も心配だけれど、 急に自然エネルギーが増えることはない。だから、火力や原子力発電もないと やっていかれないと思う。
日本は、電気が足らなくならないように、 火力、水力、原子力、自然エネルギーをバランスよく行なったらよいと思った。
やはり自然エネルギーも必要だし、 原子力発電も必要だ。いろいろと改良して多くの電気を作り出すことができればいいな、 と思った。
これからも日本は多くの電気を使うと思う。 だからいろいろとまぜてやるといいと思った。
確かに地球環境を考えると自然エネルギーがいい。 でも、たくさんの電気を作れる火力や原子力もぜひ残していきたい。



4.授業の評価


 まず、日本にはないようなアルタモントという広大な土地 とそこに設置された6,000もの風力発電機を取り上げることにより、 アメリカ合衆国の自然や取り組みのすばらしさを理解させることができた。 特に、オイルショックの時に、自国の資源を生かしてエネルギーを確保しようとした 取り組みに大いに感動していた。また、ウインドファームの様子、 HさんやWさんのお話など多くの映像資料や写真資料に恵まれ、 児童は実感をもって理解することができた。さらに、アルタモントウインドファーム の取り組みをもとにわが国の電力について考えたわけだが、 ここでは自国をみつめる機会を設定することができたと考えられる。 確かに風力発電はすばらしいが果してわが国に風力発電機を多く設置する 場所はあるのだろうか、と地図帳を用いて考える場面を始めとし、 アメリカ合衆国で可能であったことでも必ずしも日本にはあてはまらないことに気付き始め、 日本に適したものについて考えるようになった。
 以上のように、アメリカ合衆国のすばらしさを理解するとともに、 わが国についても見つめ直す、という、他国理解と自国理解を図ることができる実践であった、 と考える。今後児童自らが他国の理解を深めようとし、 また理解したことをもとに自国を振り返るような教材の開発に取り組みたいと考えている。
図1 アルタモントの位置
アルタモント峠風力発電施設は、サクラメントとサンフランシスコ 湾岸地区のまんなかに位置する。4つの空港からもほど近く、フリーウェイからのアクセスもある。
(C)Pacific Gas & Electric Company, 1995