カムチャッカ半島は,千島弧の北端に位置し,環太平洋火山帯(ring
of fire)の一角を占める火山地域である.半島内には200以上の第四紀火山が存在し,そのうちの29が活火山である.毎年何れかの火山で噴火が生じていて,世界で最も活動的な火山地域の一つと称される.これらの火山は,半島の東海岸沿いの山脈と半島中央にのびるスレディニ山脈の2列に分かれて分布していて,活火山はそのほとんどが東海岸沿いの山脈に集中している(下図).カムチャッカにおける火山噴火の記録は1697年にロシア人がこの半島にはじめて訪れた年からはじまり,それ以前の先住民の時代から,火山とカムチャッカに住む人たちの生活は深い関係を持ってきた.火山噴火は,ときに大きな災害をもたらす.活火山アバチンスキーの山麓に位
置する州都ペトロパブロフスクも,大規模な噴火が起これば大きな被害を受ける可能性がある.ペトロパブロフスクにあるロシア科学アカデミー火山研究所では,火山に関する様々な基礎的研究や観測が行われるとともに,ハザードマップの作成など噴火に対する対策が検討されている.
一方で,火山はカムチャッカの人達に恵みを与えるものでもある.先に述べた火山灰土や,温泉,地熱発電による電力などである.火山が作る変化に富んだ風景も火山が与えてくれた恵みの一つであろう.溶岩や火山灰が堆積して造った山体を氷河が削り,溶岩の黒と,白い氷雪,そして緑に彩
られた火山は,カムチャッカを象徴するものである.カムチャッカの火山は,ユネスコの世界遺産にも登録されている.