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上越教育大学学位記授与式 学長告辞(大学院)(平成31年3月)

雪に埋もれていた地面から、草花の緑が見え始め、高田公園の桜も例年より早くつぼみが膨らんで、吹き抜ける風に春の独特な香りを、感じる頃となりました。

本日、学位記を授与された235名の皆さん、修了誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。また、ご多用のところ、学位記授与式にご臨席を賜りましたご来賓の皆様に、深く感謝申し上げます。

修了生の皆さん、2年もしくは3年間の大学院での学究生活はいかがだったでしょうか。修了生の皆さんが学位を手にすることができたのは、皆さんのたゆまぬ努力があったことはもちろんですが、その努力は、家族、友人、大学教職員、地域の方々や、現職大学院生の方は、上司、同僚、教育委員会や地域の方々など多くの人たちによって支えられた結果ですので、その人たちへの感謝の気持ちを忘れないでいただきたいと思います。

さて、最近は、人工知能(AI)やロボットなどの科学技術が、産業を大きく変革し、第4次産業革命やSociety5.0という言葉が良く聞かれるようになりました。これからは、さまざまなモノがインターネットにつながり、それを人工知能(AI)が制御し、ロボットが活躍するようになると言われています。
10~20年後には国内労働人口の半分近くにあたる職業について、AIやロボットに取って代わられる可能性が高いという推計を、国内の研究所も発表していることもあり、今の子供達が日本や世界を支える年代になったときには、想像もできないような社会になっていると思われます。そのため子供達には「自ら主体的に学ぶ力、コミュニケーション能力を伴った対話的な学び、論理的思考に基づく深い学び」など、未来を生きるための力を身につけることが求められ、教育現場にもその対応が求められています。子供たちがどのような能力を身につけるかは、教育に委ねられており、教師の責任は重大であると言えましょう。

私の専門が理工学系ということもありますが、皆さんは「STEM教育」「STEM人材」という言葉をご存知でしょうか。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を取った造語で、この4分野を統合的に学ばせるのが「STEM教育」で、これを兼ね備えて人材が「STEM人材」と呼ばれています。さらにArt(芸術)を加えたSTEAMと呼ばれることも多くなりました。
これからの社会では、科学技術を活用するだけでなく、創造する人材が一層必要となります。科学技術や芸術分野について関連性を持って深く理解すると同時に、それらを利用して新しいものを生み出す力を養うための教育として、STEAM教育は注目されています。これは世界的な課題となっており、現在ヨーロッパやアジア新興国でもSTEAM教育が推進されています。STEM人材の中からAI技術者なども多く生まれることでしょう。

一方、社会のグローバル化が進み、来年、開催される東京オリンピックなどでは、さらにグローバル化を実感することになるでしょう。この会場でも、今年度は10名の留学生の皆さんに、学位記が授与されました。

ちなみに、アメリカで学ぶ海外からの留学生約100万人を国別に見ると、3割以上の年間約60万人が中国からで、2位のインドや3位のサウジアラビアを引き離して断然1位となっています。日本は残念ながら約1.8万人で9位と言うことです。日本からアメリカへの留学生は1990年代後半がピークでしたが、現在では半分以下にまで減っています。そのようなことも原因のひとつかもしれませんが、世界のハイテク技術の勢力図は塗り替えられつつあります。AIやIoTの時代になって、例えば自動運転自動車などのハイテク技術の争いでは、完全にアメリカと中国の2か国がリードしているようです。

先程のSTEAM教育や海外留学者数は、教育や若者を取り巻く状況の変化の一例ですが、我が国は、科学技術立国日本を支える人材や、世界で活躍するグローバル人材をはじめ、多様な人材を、これまで以上に養成する必要に迫られており、それはこれからの教育に委ねられています。文部科学省も大臣が率先して先端技術を教育現場に取り入れる政策を進めており、実際、既に先端技術が教育現場にも導入されつつあります。タブレットパソコンを用いて、離れた子供たちが同時に学んだり、子供たちそれぞれの学びに応じて個別学習に利用したり、子供たちの理解度をAIが見極めたり、これからは先端技術をもっと利用する状況になるでしょう。このように、教育現場は加速度的に先端技術が入り込み、変わるかもしれません。皆様には教育現場で、その一翼を担って頂くことになることは間違いありません。

しかし、いくら先端技術が導入されたとしても、教育においては、子供達の学ぼうとする力や気持ちを、引き出すことが最も重要です。子供達の個性や性格を的確に把握し、子供達が自ら学ぼうとする意欲を高めることが、大きな教育成果につながります。そのためには、教師が人を思いやる心を強く持ち、子供達一人ひとりに誠実に向き合うことが必要です。学校現場では、こなさなければならない用務が多く、教師はきつい職業だという風潮が広がってきています。そのような中では、子供達一人ひとりに誠実に向き合うということが、実際には難しいと言うかもしれません。しかし、それが教師に求められる最大の使命であり、子供達一人ひとりを理解することが、教師としてのやりがいや喜びにつながります。

そして、皆さん自らが、学ぼうとする意欲を持ち続けてください。自ら学び続けてこそ、子供達に学ぶ楽しさや学ぶことの意味を伝えることが出来ます。子供達の学ぼうとする気持ちを引き出すことができれば、子供達は自然と多くのことを自分のものにします。是非、そのような教師になって下さることを願っています。

さらに皆さんには、上越教育大学で出会った友人や教職員、地域の人たちとの強い絆があるはずです。もちろん大学もゼミ教員をはじめ、いつでも皆さんに門戸を開いています。遠慮なく大学の門をたたいて下さい。

最後に、小学校教師で住職でもあった教育者、「東井義雄(とういよしお)氏」の詩の一節「川は岸のために流れているのではない」をご紹介します。すでにご存じの方も多いかもしれませんが、あらためてお聞き下さい。

川は岸のために流れているのではない
川のために岸ができているのである
子どもは教師のために生まれてきたのではない
子どものために教師ができたのだ
子どもひとりひとりの生き方の流れの
美しさ たくましさ おもしろさを認め
それに沿って指導の岸を構築してくれる教師に
子どもは魅力を感ずる

これからも健康に十分注意して、多くの子供たちから慕われ、いつかは先生のようになりたいと思われる教師となってください。平成年度最後の修了生として、皆さん一人ひとりが自らの手で輝かしい未来の扉を開け、人生を充実したものとされるよう心より祈念し、告辞と致します。


このページは上越教育大学/広報課が管理しています。(最終更新:2019年04月25日)

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