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上越教育大学卒業証書・学位記授与式 学長告辞(学部)(平成31年3月)

長かった冬もようやく終わり、高田公園の桜も例年より早くつぼみが膨らんで、吹き抜ける風に春の独特な香りを感じる頃となりました。

ただいま卒業証書を授与された163名の皆さん、ご家族の皆様、ご卒業誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。また、ご多用のところ、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様に心より感謝申し上げます。

さて、卒業生の皆さん、本学での4年間に渡る学園生活はいかがでしたか。いろいろな思い出が出来たことでしょう。卒業生の皆さんが、本日晴れて卒業できますのは、皆さんの努力があったことはもちろんですが、家族、友人、教職員、地域の方々など多くの人たちの支援があったことを決して忘れないで下さい。

最近は、第4次産業革命やSociety5.0という言葉を耳にすることが多くなりました。科学技術の発達により、さまざまなモノがインターネットにつながり、それを人工知能(AI)が制御し、ロボットが活躍するようになると言われています。科学技術の進歩、交通や情報網の発達等で、私たちを取り巻く社会は急激に変化し、生活様式や人々の価値観にまで影響を及ぼしています。今の子供達が日本や世界を支える年代になったときには、想像もできないような社会になっていると思われます。

実際、既に先端技術が教育現場にも導入されつつあります。タブレットパソコンを用いて、離れた子供たちが同時に学んだり、子供たちそれぞれの学びに応じて個別学習に利用したり、子供たちの理解度をAIが見極めたり、これからは先端技術をもっと利用する状況になるでしょう。文部科学省も大臣が率先して先端技術を教育現場に取り入れる政策を進めており、電子機器類も充実したものとなると期待されます。

このような社会の中、子供達には「自ら主体的に学ぶ力、コミュニケーション能力を伴った対話的な学び、論理的思考に基づく深い学び」など、未来を生きるための力を身につけることが求められ、教育現場にもその対応が求められています。子供たちがどのような能力を身につけるかは、教育に委ねられており、教師の責任は重大であると言えましょう。

ところで、昨年10月には本学も創立40周年という大きな節目を迎えました。40年の間に教員養成系大学として大きな足跡を残してきたと思っております。創立40周年の記念講演として、「AI vs. 教科書が読めない子供たち」の著書で反響を呼んでいる、国立情報学研究所の新井紀子先生にご講演頂きました。新井先生らが行ったAI(名称:東ロボくん)による東大入試プロジェクトや、それから得た知見をもとに、近い将来働く人の半数がAIに仕事を奪われる可能性があること、実際にはホワイトカラーを目指す若者のかなりの割合を東ロボくんが、大学合格可能性では上回ったこと、などをデータを基に示されました。その中で、多くの中高生が不足している「基礎的な読解力」の重要性を新井先生は指摘し、それをしっかり身につける必要性を力説されていました。

新井先生は数理論理学を専門とする数学者であるため、その面からの造詣が深く、将来、AIが発達しても人間の知的活動すべてが数式で定性化・定量化できるわけではなく、全てが人間に取って代わることはあり得ないとも強調されていました。AIには文章の意味や意図が読み取れず、「文章の中の語句や文脈を考えることができる読解力」が、人間が勝っている大きな点であること、将来は読解力を持った人材が社会には広く必要となることも説いておられました。

読解力が身についていない中高生が増えていることへの危機感から、現在、各方面で読解力を高めようという試みがなされているようです。このように教育分野でも常に新しい課題や知見が生じてきています。いくらAIが発達したとしても、子供たちに直接関わる教師という仕事はなくなりはしません。教師には、人とのコミュニケーション能力や、子供たちを思いやる心、相手を理解する力など、読解力に通じる「人間力」がこれから益々必要になるでしょう。

そのためにも皆さんが教師となった時、教師自らが学ぼうとする意欲を持ち続けてください。これはどんな職業でも同じです。自ら学び続けてこそ、子供達に学ぶ楽しさや、学ぶことの意味を、伝えることが出来ます。子供達の学ぼうとする気持ちを引き出すことができれば、子供達はスポンジが水を吸収するように、多くのことを自分のものにします。是非、そのような教師になることを願っています。

本学で学ばれた皆さんは、教師として社会人としての資質能力を十分に身につけて頂いたと思います。どうぞ自信を持って、教壇に立ち、あるいは社会に羽ばたいて下さい。常に周りからの情報を収集することを肝に銘じ、周囲の人たちとの良好な協力関係を築くよう努力することを、忘れないで下さい。

時には大きな課題に立ち向かわなければならず、途方に暮れることもあるでしょう。そのときこそ、家族や先輩、友人などの支えが頼りになります。皆さんには、上越で得た友だちや教職員、地域の人たちとの強い絆があるはずです。もちろん大学も、ゼミ教員をはじめ、いつでも皆さんに門戸を開いています。遠慮なく大学の門をたたいて下さい。

最後に、アメリカの教育者ウィリアム・ウォード(William Ward)の言葉の一節を、「はなむけ」にご紹介します。すでにご存じの方も多いかもしれませんが、あらためてお聞き下さい。

普通の教師は 言わなければ ならないことを話す。
良い教師は わかりやすいように解説する。
優れた教師は 自らやってみせる。そして、本当に 偉大な教師というのは 生徒の心に火をつける。

健康に十分注意して、多くの子供たちから慕われ、いつかは先生のようになりたいと思われる教師となってください。平成年度最後の卒業生として、皆さん一人ひとりが自らの手で輝かしい未来の扉を開け、人生を充実したものとされるよう心より祈念し、告辞といたします。


このページは上越教育大学/広報課が管理しています。(最終更新:2019年04月25日)

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