第一章 組織の運営状況に関する自己点検・評価
 
2 平成17年度の大学運営
 
 平成17年度は,第一期中期目標期間の2年目として,法人化のメリットを活用した大学運営を円滑に進めるための工夫として,学長を中心とした大学の新しい意志決定システムを利用し,更に,財政面で弾力性のある運用が可能となったことから,中期目標・中期計画のったっせいに向け計画した各事項の推進とともに,かねてからの課題であった大学院の定員充足に関し,全学を挙げた取り組みを行った。
 まず,大学院の定員充足に関しては,教育内容の見直し,新たな教育ニーズへの対応,教育・研究指導体制の改善や学生支援の充実,更には,積極的な広報・PR活動等の継続実施など,全学を挙げた取り組みを行った。
 特に長期履修学生制度に基づく教育職員免許取得プログラムを導入し,入学生のうち89人がこのプログラムに参加した。同プログラム受講学生には,社会人も含まれていることから,多様な人材を教員として育成するというこのプログラムの成果が期待される。
 この結果,平成17年度の大学院入学者は,定員300人に対し297人となり,収容定員充足率は,昨年度の74%から86.3%に改善した。また,平成17年度に実施した平成18年度大学院学校教育研究科入学試験では,受験者463人(前年度比24.5%増)という成果を得ており,平成18年度における大学院収容定員の充足の目標が達成される見込となった。
 
 教育研究活動では,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,教員養成GP,現代GP(以下,各種GPという。))に関する取り組みとして,本学の独創的な教育実習プランを中心とした実践的指導力の育成の実績に基づき申請した教職キャリア開発研究プロジェクト案が,「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に採択され,更に大学と学校教育現場が連携して教育プログラムの開発を目指した開発研究プロジェクト案『マルチコラボレーションによる実践力の形成』が,「大学・大学院における教員養成推進プログラム(教員養成GP)」に採択された。各種GPについては,それぞれ申請ワーキンググループを組織し,採択後は各GP毎の実施委員会を組織して対応に当たっていたが,各種GPに対して情報提供から学内でのプロジェクト案決定や申請案の作成等,全体の取りまとめと,採択後の円滑な推進を図るため,GP支援室を設置した。
  また,学部における教育実習の体系化を図る取り組みとして,授業科目「総合インターンシップ」を立ち上げた。これは4年次の教育実習を終了した後に,教育実習校の協力を得て,時間を決めて長期的に学生が入り込み,正規の教員に近い教育現場環境の下で実践経験を積もうというものである。参加した学生は一様に大きな収穫を得たようであり,この取組はNHKでも取り上げられるなど,各方面から注目された。
 授業改善のための取り組みとしては,学生による授業評価アンケート及び結果の活用に関して改善・充実を図ったほか,授業の改善につながる試みのひとつとして,7月と1月に公開授業を,3月にファカルティ・ディベロップメント推進のためのパネルディスカッション・情報交換会を実施した。
 さらには,平成17年4月に新潟県教育委員会から一定の任期(原則3年)を付し助教授として採用した3人の現職教員等が,実践教育や教育実習指導のほか,上述の教育職員免許取得プログラム受講学生の履修指導及び就職指導に極めて大きな力を発揮した。
 
 学生支援に関しては,健康・精神衛生相談の充実を図った。中でも,多様化している学生の精神衛生相談については,学外女性カウンセラーによる相談日を前年度月平均16時間から30時間に増やすことにより,一人当たりの相談時間に余裕が出てきた。また,平成17年10月からは,本学として初めて専任の精神科医を採用し,これからの精神衛生相談体制に係る一層の人的基盤の整備・充実を図った。
 
 学内の競争的資金の獲得につながる研究プロジェクトでは,若手研究の区分で全18件の申請のうち附属学校園教員からの応募が15件(うち6件を採択,全体としては9件を採択)あった。附属学校園教員の研究プロジェクトに対する意識が極めて高いことは,大学と附属学校園との連携の良好さを示すもので,連携して教育現場の課題を解決しようとする姿勢の現れであると高く評価できる。
 また,競争的教育研究資金の配分については,これまでも教員に対する配分基準としては,教育,研究,地域貢献,学内貢献などを柱としていたが,今年度はそれらをさらに見直し,新たに本学の特色である教育に関する臨床研究などを柱とした評価の基準と観点を検討し,教育研究指導などが教育実践へどの程度関わっているかに応じて重み付けが異なるなどの配分基準を検討し,それを基にして新たな競争的資金の配分の方針,配分の比率等を決定し,試行的に資源配分を実施した。
 
 地域との連携の面では,新潟県中越地震で大きな被害を受けた小千谷市立東山小学校に対する支援活動については,今年度も体験授業を含めた実践的な教育活動を中心に継続的な支援を行った。中でも,新校舎の完成に合わせて同校が復興の趣旨も込めて計画した学習発表会のための造形作品「宝の木」の制作指導,「錦鯉の歌・闘牛の歌」の編曲及び踊りの振付け指導などの支援活動を行い,発表会当日には大学教職員,大学院学生及び学部学生を派遣した。
 また,危機管理面における地域社会への貢献として,上越市との連携を図り,地震,大雨等の異常な自然現象に伴う災害及び大規模な火災によって相当程度の被害が生じた場合並びに災害等の発生が予測される場合に,附属小学校,附属中学校及び大学を避難場所とする覚書を平成18年3月に締結した。
 
 業務運営の効率化の面では,政府の「行政改革の重要方針」において示された総人件費改革の実行計画を踏まえ,人件費削減に向けた取組として,事務組織においては,従来の課・室の構成組織である41係体制を統廃合し,平成18年4月から一定の業務を包括した16チームとして再編することとした。さらに,課長補佐の職名を副課長に,係長の職名を主査に変更し,主査等のうちからチームリーダーを置き,要員をチームとして束ね,機動的かつ柔軟な事務が執行できる体制とした。また,これと併せて教育支援と研究支援事務の一元化の観点から,総務部の所属であった研究連携室を学務部へ変更することとした。
 
 自己点検・評価の充実の面では,平成16年度にこれまでの規則を見直し,新たな自己点検・評価規則,評価基準及び観点・指標を制定し,平成17年4月から施行した。同評価規則等は,法人評価及び認証評価等の外部評価にも対応し,国立大学法人組織に適合した評価結果のフォローアップサイクルを定めるとともに,評価基準等では,新構想の教育大学としての社会的使命を中期目標・中期計画に則して一層明瞭にするため,観点等の作成に工夫を凝らした。
 平成17年度は,この新たな規則等に基づき,「教育内容及び方法」,「教育の成果」,「教育の質の向上及び改善のためのシステム」,「正規課程の学生以外に対する教育サービスの状況」に関する自己点検・評価を実施し,今後の検討課題とされた事項等については,評価規則に基づき改善に向けた取組を開始した。
 
 上述の他にも,平成17年度における大きな取組として,中央教育審議会で審議が進められている教職大学院について,本学としての構想案を取りまとめるための活動が挙げられる。同構想案については,今後,都道府県教育委員会等からの意見や中央教育審議会からの最終答申及び関係法令等の整備に合わせ,更にブラッシュアップしていく予定である。