【心理臨床講座】
 

 
内 田 一 成(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態,学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 全科目ともスライドの配布資料(2単位科目で約30頁)を配り,スライドショウやVTRを中心に講義している。受講生の成績評価はもちろんであるが,その前提である教育の質,授業の質に注意を払うようにしている。臨床心理士試験の合格者数,質の高さが世間から問われることを認識した責任ある教育を日々心がけている。
 授業評価によれば,どの科目の授業方法についても内容についても総じて高い評価であった。大学院科目のうち,発達臨床心理学特論を例にとると,約9割の受講生(N=25名)がこの授業に4以上の高い満足度を示し,自由記述では「自分は心理専攻でないのですが,それでも大変わかりやすく興味深いものでした。非常によい授業でした。」「ありがたいです。無上の喜びがありました。」「講義中の先生のちょっとした脱線話がおもしろかったです。」「真剣な中にもスリル感があって良かった。」「最後のケースの紹介はとても興味深かった。他にもいくつかケース紹介をしてもらえるとよかったかもしれない」。」「素晴らしかった。」「素晴らしい授業進行でした。お世話になりました。」「パワーポイントや資料を使ってありがたかった。」 など肯定的評価ばかりで,身の引き締まる思いがするとともに,よりよい授業に向けてさらなる工夫を心がけたいと思った。他方,同じく後期開講の学部授業のうち,臨床心理学では,心理臨床分野への配属学生が例年の半分となった学年が受講したわけであるが,「学生自身の取り組み」,「授業の方法」,「授業の内容」の18項目すべてが信じがたい低い評価であった。更新はしているがパワーポイントとその配付資料,並びにビデオを用いた例年通りの授業にもかかわらず,わずか7名ほどの受講生が後方に着席し,授業中に内職したり居眠りしたりが注意しても後を絶たず,反省を促すことがたびたびあったことに対する感情反応とも考えられるが,そういう幼さが非常に残念でもあった。前任の大学と類似の客観式テストを行ったがその結果は惨憺たるものであった。今年度のように学力が著しく低い学年の場合には,毎時間ごとに小テストを実施したりして,一回一回の授業内容の何をどの程度理解しているのかを把握しながら,パワーポイントや配付資料の内容の簡単にしなければならない必要性を感じた。
○成績評価法に関する取組状況
 特に講義科目においては安易に論述形式やレポートにするのではなく,大学の社会的責任に応え,入学後の学力向上に応えるため,あらかじめ各授業の学習目標,授業計画,並びに成績評価基準を明示し,各授業のユニットごとの達成度の観点で厳正に評価する必要性を感じており,それに向けて努力している。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 学部4年生を1名担当し,その1名は公務員試験に合格した。大学院2年次生は5名担当したが,そのうち教員派遣生の2名は修了後それぞれ学校現場へ復帰した。ストレートマスターの3名の進路は,それぞれ医療法人の精神病院常勤臨床心理職,社会福祉法人の発達支援センターの常勤臨床心理職,国立大学法人の大学附属心理教育相談室の非常勤臨床心理職であった。また,平成18年度臨床心理士認定試験には,昨年度修了した3名全員がの1次試験に合格したが,最終合格者はそのうちの2名であった。
研究指導
【観点1】学部
 教育に関わる臨床的な実践力の修得並びに教員採用試験等に向けての動機づけの増進を図るため,教員派遣生の大学院生とともに研究指導を行っている。
【観点2】大学院(修士過程,博士課程)
 修士課程の臨床心理学コースにおいては「practitioner-scientist model」並びに「実践即研究」の観点から,基礎研究はもとより,日常の臨床活動を科学的研究に高められる研究指導を行っており,今年度はゼミ生全員が紀要に掲載したが,順次,全員が学会誌掲載(紀要論文のいくつかは学会誌でも十分採択されるレベルのものであるが,在学中に成果をいち早く公表したいという事由を尊重し,紀要投稿を優先したが)を達成できるように努力したい。
 博士課程については,学力優秀で修士論文の発展可能性から博士論文への見通しがたち博士課程への進学を嘱望した院生がいたが,経済的理由等により博士課程への進学を断念せざるをえなかったのが残念であった。
その他の教育活動
 福岡教育大学で集中講義。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年3月:『中学生における他者への愛着とレジリエンスとの関連について―性差についての臨床心理学的研究―』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第6巻, 1-12.
A平成19年3月:『通常学級に在籍する軽度発達障害を持つ1児童に対するビデオ・セルフモデリングの臨床効果』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第6巻, 13-22
B平成19年3月:『コーピング柔軟性モデルについての臨床的研究―促進要因としてのlearned resourcefulnessの役割について―』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第6巻, 23-36.
C平成19年3月:『高校生の対人関係に及ぼす集団主張訓練プログラムの臨床効果』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第6巻, 37-49.
D平成19年3月:『不安障害をもつ青年期ADHDへの心理療法過程についての一考察』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第6巻, 59-72.
学会活動への参加状況等
@平成18年度日本福祉心理学会理事
A国際サイコセラピー会議参加(平成18年8月28日〜9月1日)
◎特色・強調点等
 世界最高の心理学のバイブルとして半世紀の間改訂し続けられてきた,Atkinson,R.L., Atkinson,R.C., Smith,E. E., Bem,D.J., & Nolen Hoeksema,S.(2000)による「『Hilgard’s Introduction to Psychology』(13th.Ed.).Fort Worth: Harcourt College Publishers」を平成14年に,内田一成監訳「『ヒルガードの心理学』第13版 ブレーン出版(全1540頁)」として出版した中古本が大手ウェブ上のオークションで,一時定価の約2倍を超える4万円以上で取引きされていたと言う。これは昨年11月に最新版(内田一成監訳『ヒルガードの心理学 第14版』ブレーン出版(全1063頁))が出版されても止まることを知らず,もともと心理学のバイブルと言われていた本書ではあるが,臨床心理士指定大学院入試の必携書,並びに臨床心理士資格認定試験受験のための必携書とも言われていて,多くの大学・大学院で教科書・参考書指定されているように,世界的名著の出版は学問の底力を高め,持続性のある大学貢献にもなると考えられる。
 
<社会との連携>
@独立行政法人国立病院機構さいがた病院倫理委員会委員
A新潟県カウンセラー学校派遣事業(糸魚川東中学校,下早川小学校)(平成18.4.1〜平成19.3.31)
 

 
加 藤 哲 文(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 大学院担当授業の「心理アセスメント演習U」では、 臨床心理学コース学生を対象に心理検査法の演習を行った。特に学校教育場面で必要とされている知能検査法を中心に、 実際の検査機器を用いた実習指導を行い、 その後に検査結果の見たて方について、 実際のデータをもとに小グループによる実地指導を行った。また「臨床心理基礎実習」及び「臨床心理実習」では、 実際の心理臨床業務に準拠した実習を、 心理教育相談室及び外部実習機関(病院や教育センター等)で行い、 1年間に渡り、 毎週3〜4時間をかけてケース担当実習時の指導とケース担当前後の打ち合わせやケースカンファレンス及びスーパービジョンを行った。「応用行動分析学特論」では、 臨床心理学コースの院生だけではなく、 障害児教育コースや発達臨床コースの学生も多数受講する中で、 教育相談、 カウンセリング、 障害児教育、 学級経営等に役に立つ指導・訓練やコンサルテーション方法の実際について、 多数の事例を取り上げながら「応用行動分析」の最新知見や技法の実際を講義した。また、 「発達障害学特論」では、 最近の学校現場で最も関心が高まっていることもあり、 多数の受講生のもとで開講された。最新の話題(新聞等で頻繁に報道されている話題も含めて)を取り上げ、 発達障害に関する誤解や偏見を解き正しい理解を促進することと、 学校での教育的支援の具体的な方法論について講義を中心に授業を進めた。以上の各授業では、 毎回の印刷資料の配布、 パワーポイントやビデオ教材の使用を通して、 知識や技術を実践的にリアルに再現できるよう工夫をした。
研究指導
 修士課程2年次生5名及び1年次生3名について、不登校等の学校不適応、 発達障害や特別な教育的ニーズのある児童生徒への臨床心理学的な支援方法について研究指導を行った。その結果2年次生は、 発達障害のある児童生徒を担任する教師へのコンサルテーション方法に関する臨床実践的な研究や、 軽度発達障害のある児童への社会的技能訓練に関する臨床研究に関する実践的研究といった3つの修士論文を完成させた。これらはいずれも平成19年度に開催される各種学会で発表される予定である。また修士課程1年次生は、 不登校や発達障害への支援方法に関する自主ゼミナールを立ち上げ、 ほぼ1年間にわたって欧米文献の購読や研究方法の検討を行ってきたので、 これらへの指導を毎週定期的に実施してきた。また学部学生は4年次生1名と3年次生1名への指導を行い、4年次生は卒業研究として「いじめの問題」に関する調査研究を行った。さらに、 新潟県派遣の長期研修生1名(1年間)と、 鳥取県派遣の長期研修生1名(6ヶ月)の指導を行った。
その他の教育活動
@富山大学(教職課程)で「生徒指導論T」、A新潟県立看護大学で「心理学」、B横浜国立大学教育人間科学部で「行動情緒障害の心理」の講義を行った。
◎特色ある点等
 臨床心理学及び学校心理学を基礎として、学校現場で役に立つ、教育相談やカウンセリング、及びコンサルテーションの方法論ついて教育研究指導を進めてきた。特に、 最近では小中学校の通常学級に在籍している軽度発達障害のある児童生徒の支援や、 彼らを担当する教員への支援に関わる方法論の提供が求められていることから、 今年度の教育研究指導も、 学校教育現場におけるこれらの研究を希望している学生や研究生に寄与できたと思われる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成19年2月:『社会福祉総説』(共著)学芸図書
論】@平成18年4月:『教室で使えるやさしい行動分析(1)行動理解の基本はABC分析から』(単著)LD&ADHD(明治図書出版)No.17 pp54-57
A平成18年7月:『教室で使えるやさしい行動分析(2)望ましい行動を育てる・増やす方法』(単著)LD&ADHD(明治図書出版)No.18 pp54-57
B平成18年10月:『教室で使えるやさしい行動分析(3)問題行動を減らす・修正する方法』(単著)LD&ADHD(明治図書出版)No.19 pp54-57
C平成19年1月:『教室で使えるやさしい行動分析(4)教えた行動を学校生活で生かすために』(単著)LD&ADHD(明治図書出版)No.20 pp54-57
発】@平成18年9月:『学校支援において連携や協働を進めるために、 『行動コンサルテーション』はいかに役に立つか−わが国への適用の現状と課題−(共)日本行動分析学会第24回大会発表論文集 pp.27.
A平成18年10月:『行動問題に対する応用行動分析からのアプローチ』(共)日本LD学会第15回大会発表論文集 p.177
B平成18年10月:『行動問題の意義と応用行動分析による支援法略』(単)日本LD学会第15回大会発表論文集 pp.178-179
C平成18年10月:『小中学校の特別支援教育の校内委員会における参加メンバーの支援行動促進に及ぼす行動コンサルテーションの効果』(共)日本LD学会第15回大会発表論文集 pp.336-337
D平成19年3月:『通常学級における特別支援教育と学校支援の課題』(共)日本発達心理学会第18回大会発表論文集
学会活動への参加状況
@平成18年9月1日〜3日:日本行動分析学会第24回大会出席・発表
A平成18年9月15日〜18日:日本心理臨床学会第25回大会出席
B平成18年10月7日〜9日:日本LD学会第15回大会出席・発表
C平成19年3月24日〜26日:日本発達心理学会第18回大会出席・発表
D日本行動療法学会編集委員
E日本発達障害学会評議員
F日本行動科学学会運営委員
 ◎特色・強調点等
主として通常の学級における特別な教育ニーズのある児童生徒への支援方法について研究を進めてきた。そして教育相談室等での児童生徒への直接的な指導や訓練のみならず、 学校や家庭における教師や親を対象とした行動コンサルテーションの方法論の研究を進めてきており、 今年度もそれらの成果を3つの学会で開催したシンポジウムで公表した。したがって、 今年度もこの領域の研究成果の蓄積や研究レベル向上に貢献したと考えられる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年4月〜19年3月:新潟県教育委員会学校派遣カウンセラー事業における非常勤相談員(上越市雄志中学校)
A平成18年4月〜19年3月:上越市教育委員会就学指導委員会委員
B平成18年4月〜19年3月:新潟県特別支援教育推進体制事業委員
C平成18年4月〜19年3月:新潟県教育委員会学校派遣カウンセラー
D平成18年4月〜19年3月:新潟県立高田養護学校学校評議員
E平成18年4月〜19年3月:上越市特別支援教育巡回相談事業全体会委員長
F新潟県臨床心理士会副会長
G平成18年6月、 9月:新潟県特別支援教育推進員養成研修会講師
H平成18年7月:新潟県立総合教育センター発達障害児教育講座講師、
I平成18年5月、 8月:八戸市総合教育センター特別支援教育特別支援教育研修会講師
J平成18年8月:新潟県教育委員会12年教員研修会講師
K平成18年7月:新潟県保育士会障害児保育講座講師
L平成18年5月、 8月:特別支援教育士養成研修会講師
M平成18年8月:石川県教育センター特殊教育研修会講師
N平成18年1月:兵庫県障害児教育センター講師
O平成18年8月:福岡県総合教育センター特別支援教育研修会講師
P平成18年6月:富山県総合教育センター特別支援教育研修会講師
Q平成18年7月:群馬県総合教育センター講師
◎社会への寄与
 学内においては、1年間にわたって、心理教育相談室室長及び相談員として、外来ケースへのカウンセリングや教育相談、学校の教師等へのコンサルテーションを行ってきた。また、学外での寄与としては、主として、スクールカウンセラー等の巡回指導・相談業務、学校、教育センター、教育委員会、保育関連施設で開催される教職員研修会での講師を担当した。特に、不登校や非行、発達障害に関わる問題をテーマとした講演や、指導助言が大半を占め、現在の学校現場でのニーズに多大な貢献をしたといえる。
 

 
阿 部   勲(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 受講者が,講議した内容の一つひとつをただ単に暗記したり,理解するだけでなく,その内容をめぐって,自分なりに考え,問題を発見するよう努力してきた。
研究指導
 学部,大学院ともに自分で問題意識をもち,自分で研課題を設定し,自分でその解明に努力するよう,こちらからの指示を極力さけて,学習支援に努めた。
その他の教育活動
@上越保健医療福祉専門学校「発達心理学」
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟労災病院倫理委員会委員
 

 
五十嵐 透 子(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 学部:カウンセリング基礎実習・演習では、コミュニケーション・スキルの基礎的なスキルの向上に加え、地域の教育や医療領域での精神保健福祉活動での体験学習を通し、自分自身の精神障害に対する偏見や誤解などを見つめ、今後の教育における精神障害に対する的確な理解を促す教育につながるような指導を行った。
 大学院:心理臨床の専門家としての、自他ともの理解を深めると同時に“あるがまま”の状態を受容することとに関し研究指導を行った。
その他の教育活動
@金沢大学大学院医学系研究科 非常勤講師
A新潟県立看護大学 特別講義
B学校や地域での講演や研修会
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成19年2月:『精神看護実習ガイド』 (共著) 照林社
論】@平成18年10月:新潟県中越地震における学校現場での臨床心理士によるこころのケア活動 トラウマティック・ストレス,第14巻2号,pp. 115-125
A平成18年12月:アメリカ合衆国・イギリスと日本の精神科リハビリテーションの治療的位置づけの文献レビューによる検討(共著)上越教育大学 心理教育相談研究,第6巻,pp.97-107 
B平成18年12月:教師のソーシャル・サポートの互恵性とその関連要因(共著)上越教育大学 心理教育相談研究,第6巻,pp.109-123.
C平成19年3月:対処行動として使用された健康行動とメンタルヘルスとの関係:看護職従事者を対象に(共著)比治山大学 大学院現代文化研究科附属心理相談センター年報 第2号
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@教員や看護職を含むヘルスケア・ワーカーのメンタルヘルスに関する研修講師(長岡市・新潟県・神奈川県・茨城県・福島県)
A中越地震に関する児童・生徒・教職員の“心のケア”事業でのカウンセラー
B中越地震に関する地域社会福祉事業実施のおける対人援助職への研修会
C高等学校における生徒理解に関するコンサルテーション活動
D被害者支援アドバイザー
E国際交流や外国人への心理的サポートへのコンサルテーション
 

 
越   良 子(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 授業時に課したレポートのいくつかを全体に向けてフィードバックすることで,知識・理解の促進と共有を図った。試験を行った際には,授業時に学生自身に答え合わせをさせ,その結果に基づいて再度の書き直し答案を提出させるなどして,知識・理解の定着を図った。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 学級集団心理学および社会心理学に関する基礎的知識を習得させることは,ある程度達成されたと考える。それによって,院生・学部生自身がそれまで持っていたのとは異なる視点によって,学級集団や人間関係について考えることが可能になったと考える。これは修了・卒業後の進路に直接すぐさま反映されるものではないが,心理学的な考え方,心理学の知識,多面的な視点による柔軟な思考は,教職その他の職能発達,社会人としての成長に有意義であろう。
研究指導
【観点1】学部
 先行研究に基づいて,論理的に思考を展開させる点を重視して指導した。分析方法などは無理に高度なことを求めず,学生が納得しながら自分で考えて研究を進めることが重要だと考えている。
【観点2】大学院
 学卒院生に対しては,丁寧な文献研究に基づく各自の問題意識の深化,現職院生に対しては,既定の方法論にこだわらない各自の問題意識の深化を求め,現場で独り立ちして実践的研究を行えるようになるためにも,基本的なことではあるが,論理的に思考し記述するという点を重視して指導した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 ゼミにおいては,ゼミ生同士がお互いの研究について議論し,教え合い助け合う文化を作り上げることができたと思う。研究はおもしろいと思えるようになって修了するゼミ生は多く,研究職を志望しドクターに進学した修了生もいる。この雰囲気を残したまま,より高度な研究レベルを目指したい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年2月:『中学生の所属集団に基づくアイデンティティに及ぼす集団内評価の影響』(単著)上越教育大学研究紀要 第26巻,357-365.
発】@平成18年9月:『所属集団における自己への評価とアイデンティティ・シフト』日本社会心理学会第47回大会
学会活動への参加状況等
@9月17〜18日:日本社会心理学会第47回大会出席
A「教育心理学研究」常任編集委員
◎特色・強調点等
 子どもの学校不適応や逸脱行動を,所属集団と本人の社会的アイデンティティの不適合の問題として捉えられることを明らかにした。子どもに対し,どのような自分自身になりたいかという観点からの指導の有効性が示唆される。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟市立白根小学校校内研修会講師(『みんなでリフレクション−よりよい学級集団づくりをめざして−』を講演)
 

 
角 田 京 子(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
@臨床心理演習
 講義内容に教官の臨床経験談を交え,実践的興味を高めるようにした.
 演習のレポート内容から学習が不十分であると判断されたテーマについては,やり直しの演習を行った.
 さらにカウンセラーやクライエントが聴覚障害を持っている場合を想定しての演習を行い,通常の演習よりもさらに意義深くなることを示した.
A臨床心理面接特論U
 受講者が臨床訓練を有意義に行うことができるよう,系統的で実践的な講義内容とし,実践演習に近い授業も加えた.
Bカウンセリング演習(書類上は担当したことになっていないが,実際には他2名の教官と分担)
 学生の障害者施設見学の前後に講義を行い,見学実習がより有意義なものになるように講義内容を工夫した.
 見学実習のレポートについてはそれぞれコメントを入れると同時に,講義での返しも行った.
Cその他オムニバス形式の授業
 オムニバス形式であるので,他の教官の担当分とのバランスを重視した.
【観点2】教育の達成状況
@受講者の取り組みが積極的なこともあり,講義の終了時にはかなり実践力を身につけたと思われる.
A昨年度受講した学生が,講義で学習したことを今年度の臨床訓練にも生かしている.
研究指導
【観点1】学部
 学生の個性と進路希望を熟慮し,それが卒論のテーマや問題意識に反映されるようにすることで,研究への動機を高め,内容をより豊かにできるように指導した.
【観点2】大学院
 学生それぞれが研究への動機を十分に持ち,研究テーマへの思い入れも強かったため,学生の自主性を尊重しつつ,研究が学術的に意義があり,かつ実行可能なものになるように指導した.
その他の教育活動
@東京家政大学大学院家政学研究科において非常勤講師として「小児精神保健学特論」を講義.
A京都大学医学部精神神経科セミナーにおいて講演.
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 今年度は引き続き担当する講義は更に内容を洗練し,新しく立ち上げる講義は(受講者の多くが共通するため)それらと有機的に繋がるものとしたい.
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年3月:「統合失調症の母親を持つ姉弟の療育について.」小野早知子,角田京子.上越教育大学教育相談室紀要.
発】@平成18年6月:「20世紀女性自然科学者におけるジェンダー逸脱とハイポセクシュアリティ.」日本病跡学会,東京.
A平成18年7月:”Pathological aspects of “awakening” phenomena in schizophrenia ?from viewpoints of epistemological philosophy and Zen psychology.”International Conference on Philosophy, Psychiatry and Psychology, Leiden.
学会活動への参加状況等
@平成18年6月:日本病跡学会,東京.
A平成18年7月:International Conference on Philosophy, Psychiatry and Psychology, Leiden.
B平成19月1日:日本大学メンタルヘルス学会,伊東.
◎特色・強調点等
 学会発表は2題とも赴任前から計画・準備してきたものである.フロアからの反響も多く学会参加は有意義であった.特に国際学会での発表は海外の研究者からの問い合わせもあり,内外の研究者と意見交換の場を持つことができた.発表したテーマは今後の研究テーマとしても発展させていきたい.
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@国立病院機構さいがた病院「倫理会議」委員 
 

 
内 藤 美 加(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 大学院の講義では自閉症など発達障害の特徴や社会性の発達に関する最近の認知発達心理学的な知見に基づく研究成果を紹介し,子どもの発達に関する心理学的な理解を促した。講義終了後,学生の興味に応じたトピックについてレポートを提出してもらい成績評価を行った。大学院および学部の実験では,レポートの添削及びその解説を行い,心理学的データの分析方法や研究計画法,研究報告書の作成方法を習得させた。基準点に達しないレポートは再提出を課し,修士論文や卒業論文につながる心理学の報告書として最低限の形式と内容を備えたものを評価対象とした。
 学部の概論では,心理学入門としての位置づけを明確に説明した上で,心理学の面白さを体験させることを目標として学生が内容を理解することに重点を置いた。講義3回終了ごとに1回の割合で学生に質問表を提出させ,質問の解説を行った。こうした講義内容の定着度を期末試験によって評価した。学部専門科目では,認知現象を実体験させる模擬実験と講義を週ごとに交互に実施し,認知活動の面白さを経験することに加え,それを理論的に言語表現するためのレポートを課した。模擬実験と講義のセットからなるトピック2つごとに1回,計3回のレポートを提出することをシラバスであらかじめ周知し,各レポートの成績(不十分な場合は再提出)と授業出席状況を総合的に評価した。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 学部1名の卒業生は,新潟県職員採用試験に合格した。大学院2名の修了生のうち,1名は新潟県の心理職臨時職員として採用され勤務するとともに,国家公務員採用試験受験準備を行っている。もう1名は,新潟県小学校臨時職員として採用後,現在は教職員採用試験および公務員採用試験受験準備を行っている。
研究指導
【観点1】学部
 3年生1名は保育し資格取得のための授業でなかなか出席できなかったものの,できる限り定期的に発達心理学の翻訳書購読を行った。学部4年生1名に対しては,年間を通じて卒論研究のための文献購読と保育園での実験(3〜6歳児計76名)を行わせ,卒業論文を執筆させた。保育園への研究協力依頼や成果報告などに付き添い,対外的な依頼や交渉能力を修得させた。
【観点2】大学院
 2年生2名に対して,不定期にゼミを行い,修士論文のための文献購読,保育園での実験(2人それぞれ,3〜6歳児計76名と78名)および論文執筆指導を行った。特に実験データの収集と分析,結果の解釈について助言を与え,原稿に丁寧に朱を入れて論文の向上を図った。また保育園への研究協力依頼や成果報告などに付き添い,対外的な依頼や交渉能力を修得させた。1年生3名に対しては,3月中旬まで定期的に国内外の心理学雑誌論文を購読させることにより,心理学論文の読み方とその内容を批判的に理解する技能を習得させた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 以上の教育活動における特色の第1は,講義への模擬実験の導入である。こうした模擬実験を頻繁に行うことにより,心理現象の面白さを実感させ,その心理学的な捉え方を身近な実体験から理解するよう努めた。特色の第2は,実験実習や専門科目でレポートの内容を重視した点である。レポートを詳しく添削したり,解説に十分な時間を取り,心理学の方法論を修得,理解させた。第3に研究指導上の特色として,各学生の問題意識を具体的な研究に結びつけ,実証的に検証するための方法を考えさせた。また実際に幼児を対象とした実験を行うことにより,子どもの発達に関する心理学的な捉え方とその面白さを体験させ,あわせて,対象を客観的,理論的に分析する能力を養った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年9月:The development of false belief understanding in Japanese children: Delay and difference? International Journal of Behavioral Development, 30,290-304.
発】A平成18年7月:第19回(隔年)International Society for the Study of Behavioural Development シンポジウム(Sociocultural and communicative foundations of the development of theory of mind)話題提供「A long way towards integrated social cognition: Japanese children's understanding of second-order false beliefs and complex emotions」
他】@平成19年3月:チャーリー・ルイス教授を囲むワークショップ 話題提供
学会活動への参加状況等
発達心理学会論文審査委員
科学研究費取得状況
2006-2008 平成18年度科学研究費補助金基盤研究C
◎特色・強調点等
 論文及び国際行動発達学会シンポジウムでは,心の理論(人の心的状態を理解する能力)の発達およびそれと高次感情の理解との関連を,日本の子どものデータをもとに論じた。日本の子どもでは,心の理論発達が欧米の報告よりも遅いこと,こうした認知領域の理解は感情領域の理解と児童期を通じて徐々に統合することを指摘した点で,極めて先進的である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年4月1日〜平成19年3月31日 上越市子どもの権利条例検討委員会委員
A平成18年4月1日〜平成19年3月31日 放送大学講師「感情の心理学」
B平成19年2月17日 横浜市リハビリテーションセンター研修会講師
◎社会への寄与等
 上越市条例制定委員会では,子どもの権利に関して,発達と教育からとらえる視点を提供した。横浜市リハビリテーションセンターでは,日本の子どもの社会性の発達に関する最新のデータを紹介し,発達障害児の障害のあり方を,欧米の研究成果や理論とは異なる日本の子どもの定型的な発達から捉え直すことに寄与した。
 

 
中 山 勘次郎(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 大学院「学習心理学特論」では,動機づけに関する最新の研究成果をとり入れながら,教育実践への適用事例をあげながら講義した。また,過去のレポートの例とコメントをWeb上に掲載し,発展学習やレポート作成の参考にできるよう配慮した。
 学部「学習心理学」では,学習領域に限らず教育心理学全般にわたる基礎概念について講義を行い,さらに,最新の研究成果にもとづいて実際の授業のありかたを考える「授業の心理学」を開講して,体系的な学習を支援している。
【観点2】教育の達成状況
 学部「学習心理学」において,教員採用試験を見通したテーマ・教材等をなるべく多く取り入れるよう努めている。
研究指導
【観点1】学部
 4年生2人・3年生1人を指導した。実践的な問題意識や発想を取り入れた研究指導を行い,本年度は「数学問題解決過程」および「ストレスへの対処」という,実践的なテーマの卒業研究が生み出された。
【観点2】大学院
 2年生3人(うち2人は長期履修生)・1年生2人を指導した。学校現場の実践的な問題意識を,心理学の視点から理論的に裏づけ,解決方法を探るという方針で指導にあたっており,本年度は「ストレス対処を指向した心理教育」に関する修士論文が生み出された。
その他の教育活動
@附属中学校教育相談体制に基づく相談員
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学校現場での実践という視点を常に意識しながら,内容を構成している。また,受講生の質問を積極的に汲み上げ,フォローしたり授業改善に役立てるよう努力している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成18年6月:『教育評価事典』(共著) 図書文化
論】@平成18年6月:『外国映画のリスニングが中学生の学習意欲に及ぼす影響』(共著)教育心理学研究 54巻 pp.254-264
A平成19年3月:『教師の「注意言葉」に対する中学生の受けとめ方』(共著) 上越教育大学研究紀要 26巻 pp.367-379
学会活動への参加状況等
@9月16日〜18日:日本教育心理学会第48回総会(岡山コンベンションセンター)出席
A日本教育心理学会理事
B日本教育心理学会『教育心理学研究』常任編集委員
C日本教育心理学会学校心理学実行委員会委員
D日本学校心理士会新潟支部長
◎特色・強調点等
 児童の学習への動機づけの予測因としての学習目的の影響性を中心に,個々の学習意欲の特徴をとらえようとする研究を継続して進めている。また,学習指導に関する教育的カウンセリングやコンサルテーションに対して,動機づけ理論にもとづいて提言を試みている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@カウンセラー学校派遣事業に基づく派遣カウンセラー:中越教育事務所管轄(柏崎市立剣野小学校・柏崎市立日吉小学校)
Aカウンセラー学校派遣事業に基づく派遣カウンセラー:上越教育事務所管轄(上越市立東本町小学校・上越市立八千浦小学校・上越市立高士小学校)
B4月22日:上越生徒指導研究会春季研修会講師
C8月2日〜4日:新潟県教育職員免許法認定講習講師(教育の基礎理論に関する科目)
D9月25日〜27日:新潟県看護職員臨地実習指導者養成講習会講師(教育心理)
◎社会への寄与等
 前年度に引き続き,派遣カウンセラーとして臨床的な面での地域への支援を行うとともに,カウンセリング活動の学習指導への拡大についても,積極的な提言を行った。
 

 
藤 生 英 行(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 「学校臨床心理学特論」においては,学校現場で遭遇する不登校,行為障害などを取り上げ,その発症,最新の対応方法などをわかりやすく説明する工夫を行った。学卒者には最新の文献をレポートさせるともに,現職のものには自分の経験してきた事例をレポートさせ,一方通行とならない授業を心がけ相互交流に勤めた。
 「家族・集団心理学特論」においては,集団心理療法から集団作業までをグループアプローチとして位置づけ,その心理メカニズムを概説すると共に,集団作業や集団での課題を課し適宜グループ経験を受講者に心がけた。
 「臨床心理基礎実習1」は,藤生が中心となってカリキュラム整理をしカウンセリングの基礎となる,コミュニケーションスキルについて,ロールプレイを交えながら実施し,定着をはかった。不足しているカウンセリング手法の演習も含め,臨床心理学に関する事柄をわかりやすく説明した。体得しやすいように,適宜実践を取り入れて現職教員に理解しやすい形態に工夫した。
 また,全学選択必修授業「臨床実践援助法」のオーガナイズし授業を体系立てるとともに,授業運営を担当し,実際に一コマ担当した。全学選択必修授業「学校心理解析法」の一コマを担当した。そのほか,共同担当授業も多く行った。シラバスへの授業内容の明記は,すべての担当授業科目において実践した。成績基準もシラバスに掲載した上,授業での説明を行い実施した。現職教員と学卒から大学院生が構成されているので,それぞれに有益であるよう,目的意識を持たせ指導を行った。
 それぞれの,成績評価基準についてはシラバスに明確化し,それに基づいて評価した。
 学部卒業生1名は,富山県小学校教員に採用された。また,修士課程修了生4名について,3名は現職の教員(東京都高校教員,長野県高校教員,新潟県小学校教員)に復帰し,学卒者の1名は新潟市のスクールカウンセラーに採用された。なお,現職者の1名は兵庫教育大学連合大学院研究科に合格し,フレックスタイム制で研究を続けることとなった。
研究指導
 平成18年度は学部3年生2名,4年生1名の計3名おり,卒論テーマに関わる専門文献の購読を行った。先行研究の確認,実際の調査のプランニング,結果をまとめなどを通して卒論指導を行った。臨床的な実践力を修得させるために,適宜学校教育相談事例などの検討もおこなった。
 また,大学院においては修士1年3名,2年4名の研究指導を行った。それぞれの関心領域の文献購読などを行った。1年生は,多彩な関心があったがそれぞれについての,文献購読,予備調査などを指導した。2年生にはそれぞれの関心領域である先行研究の確認,実際の調査のプランニング,結果をまとめなどを指導した。また,大学院生については,相談室において受理した相談事例への実際の対応を通して,相談の進め方,見立て方,介入の仕方,症状への知識の獲得などを,サブゼミで行った。また,カリキュラム外で,サブゼミとして大学院生および学部生に対して「うつの心理,介入法」「不登校の見立て,介入法」に関わる基礎文献の英文購読を行った。また,県内のスクールカウンセラーに採用された修了生を交えてのグループスーパーバイズを行い,臨床実践上でも最新の知見などを取り入れることを援助した。
 大学院修了生2名と大学院在学生3名が,日本応用心理学会,日本健康心理学会,日本発達心理学会,厚生労働省・精神・神経疾患研究委託費発表会等において藤生と連名で発表した。大学院修了生1名の修士論文の内容を加筆修正したものが学術雑誌健康心理学研究に掲載され,もう1名が学術雑誌健康心理学研究に掲載が決まった。
その他の教育活動(学外を含む)
@上越市立浦川原中学校および柿崎中学校において,計12回にわたる教員対象のコンサルテーションを行い,その1部として,ピアカウンセリング導入基礎として,全校生徒対象のカウンセリングスキル訓練の講義を大学院生とともに実施した。
特色ある点及び今後の検討課題等
 授業,研究指導以外に,相談室事例を通した実際の介入方法などを中心に指導を行うことで,現場で役立つ知識・技能を獲得させることができたと考えられる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年6月:『わが国最近1年間における教育心理学の研究動向と展望−発達部門(児童・青年)動機づけ,人格・社会,臨床の観点から』(単著)教育心理学年報,第45集 pp.43-52.
A平成18年12月:『身体感覚増幅とストレス反応が心気症傾向に及ぼす影響−心気症の認知的発展モデルを基にした仮説モデルの検証−』(共著)健康心理学研究 第19巻第2号 pp.20-28.
B平成19年3月:『心気症傾向に見られる自動的情報処理を検証する修正ストループ課題の開発』(共著)上越教育大学心理教育相談研究 第6巻 pp.51-58.
発】@平成18年9月:『行為障害傾向を持つ子どもへの介入プログラム開発のための基礎研究(1)−教師評定と自己評定の尺度構成とその関係について−』(共)応用心理学会第73回大会発表
A平成18年9月:『行為障害傾向を持つ子どもへの介入プログラム開発のための基礎研究(2)−親子関係とCP関連要因との関連に着目して−』(共)応用心理学会第73回大会発表
B平成18年9月:『行為障害傾向を持つ子どもへの介入プログラム開発のための基礎研究(3)−中学生の学業成績,社会スキルと行為問題傾向との関連について−』(共)応用心理学会第73回大会発表
C平成18年9月:『中学生における抑うつ保護要因に関する研究−家族との葛藤,信頼できる大人の存在,学業成績に着目して−』(単)健康心理学会第19回大会発表
D平成18年9月:『抑うつへのコーピングスタイルの因子的検討』(共)健康心理学会第19回大会発表
E平成18年9月:『心気症傾向に見られる情報処理を検証する修正ストループ課題の開発』(共)健康心理学会第19回大会発表
F平成18年9月:『高校生の学校不適応に対する保護要因の研究−自己効力感に着目して−』(共)健康心理学会第19回大会発表
G平成18年9月:『親行動の認知が大学生の反すう的傾向に及ぼす影響』(共)健康心理学会第19回大会発表
H平成18年11月:『教員の認知に関連する予備的研究T‐児童・生徒の問題行動への教員の認知を規定する要因について‐』(共)日本教育実践学会第9回大会発表
I平成18年11月:『教員の認知に関連する予備的研究U‐カウンセリング研修の評価に影響する要因について‐』(共)日本教育実践学会第9回大会,発表
J平成18年12月:『統合失調症患者入院継続の予測因子について−旧国立精神療養所への82ヶ月以上入院を続けた患者群について−』(共) 精神政策医療ネットワークによる統合失調症の治療及び社会復帰支援に関する研究厚生労働省・精神・神経疾患研究委託費 精神疾患関連研究班(16指−1)平成18年度研究報告会発表
K平成19年3月:『小学校高学年児童の関係性攻撃と「自動思考」「スキーマ」との関連について』(共)日本発達心理学会発表
学会活動への参加状況等
@9月 日本応用心理学会出席
A9月 日本健康心理学会出席
B9月 日本教育心理学会出席
C11月 日本教育実践学会出席
D学会誌カウンセリング研究の査読
E学会誌健康心理学研究の査読
F学会誌教育実践学研究の査読
G学会誌教育心理学研究の編集
◎特色・強調点等
 大学院生に強調しているように,心理学における臨床実践は,実践のみならず,研究・教育も必要であるという観点から,研究での成果もあげる必要がある。研究的観点から絶えずその実践が有益であるかどうかを客観的に評価するためである。そのような趣旨から,特に実践上役に立つことに焦点を当て,それについて研究を行った。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@4月から3月 新潟県学校派遣スクールカウンセラー(上越市立浦川原中学校,柿崎中学校)
A上越教育大学心理教育相談室相談員として,地域の教育・心理相談
B上越教育大学心理教育相談室運営委員会委員
C本学で実施された大学院説明会への参加
D臨床心理士養成大学院連絡協議会への本学代表として参加
E独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)実用化開発助成事業ピアレビュー者
F連合紀要「学校実践学論集」査読者
G8月 新潟県中越教育事務所主催教職12年研修「いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任」(小・中・特133名)
H8月 上越市立教育センター教員研修講師(学校で使えるヘルピングスキル−カウンセリング技法の基礎−)
I9月 第2回全国臨床発達心理士大会コメンテーター
J11月 妙高自然の家「わくわく体験塾」不登校児を持つ保護者グループカウンセリング講師
K11月 定時制・通信制ステップアップ事業教員対象講演会「不登校の心理」(高田南城高校)
◎社会への寄与等
 地域への知識普及の拠点として,上越教育大学があるとの観点から,業務上差し支えない範囲で知識普及に勢力を注いだ。また,現場のニーズとして,こころの問題についての知識や技能への要望が高い。しかしながら,今後このような多忙な状態が続くと,研究上差し支えると考えられ,今後は対応を減らさざるを得ない状況である。教育相談への要望も高く,そちらへの対応でも地域貢献ができたと考えられる。しかしながら,当相談室へ来談するケースの多くは,この地域での相談機関を転々としてくるものが多く,地域全体での臨床専門家の臨床技能や知識の向上が必要であると考えられる。このための,活動も今後大学として対応する必要があろう。
 

 
宮 下 敏 恵(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部の授業である「教育実地研究X(教育相談、カウンセリング論)」では、学校現場において生じる児童・生徒の様々な不適応問題、病理の問題などを理解し、援助をおこなえる実践力を身につけるために、各教員の専門性を生かしたティームティーチングにより、講義を行った。大学院の授業である「心理アセスメント演習T」では、学校現場、医療現場などで用いられているパーソナリティ検査を中心に、実際に心理検査用紙を用いて検査を施行、採点、結果を解釈し、レポートにまとめることにより、理解がより深めることが出来たと考えられる。また「臨床心理学特論U」では、イメージ療法、箱庭療法、芸術療法、遊戯療法などについて学生が事前にレポートをまとめ発表し、まとめることにより、より意欲的に授業に参加することができたと考えられる。
○成績評価法に関する取組状況
 シラバスにおいて、成績については明記し、評価基準通りに評価を行った。
【観点2】教育の達成状況
 不登校、いじめなどの学校での問題について講義を行い、学校現場における教育相談の必要性について述べ、教師となったときにどのようにしたらよいかなどを考えさせ、学校現場を中心として、現場に出たときに自分は何を出来るか、何をしたいのかについて考えさせた。
研究指導
【観点1】学部
 学部3年生については、青年期の発達課題、友人関係、自尊心との関係など臨床心理学の基礎研究の文献購読を行った。学部4年生については、高校という環境移行時の適応と親子の愛着関係に関する卒論研究について指導を行った。小学校から中学校、中学校から高校など環境移行において、どのような問題が生じやすいかについて指導を行った。
【観点2】大学院
 小学校低学年における学級適応の問題、中学校における不登校の問題、教師のメンタルヘルスなどについて指導を行った。また、学校現場における教育相談の実践力を習得させるために、カウンセリング技術をはじめ、様々な臨床技法の実習を行った。さらに、心理教育相談室において受理した事例への関わりを通して、事例の見立て、面接の進め方、面接技術、介入方法、さまざまな病理や症状の知識について指導を行った。 
その他の教育活動
@放送大学教養学部非常勤講師(「臨床心理学実習T」を担当)
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学生が意欲を持って取り組めるように、授業の内容を修正し、事前準備の方法を指示したり、適宜よりよい方向に変更を行った。今後、限られた授業時間、指導時間の中でどのように効率的に効果的に指導できるかをより工夫していきたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成18年6月:「臨床心理学30章」長田久雄編 日本文化科学社 第19章「催眠と自由連想法」担当 pp186-196.
A平成18年12月:「新体系看護学基礎科目心理学」田中一彦・長田久雄編 メヂカルフレンド社 第7章「心理臨床からの人間関係」A適応のメカニズム、Bカウンセリングと心理療法担当 pp222-248.
論】@平成18年9月:「新潟県中越地震における学校現場での臨床心理士によるこころのケア活動」(共著)トラウマティック・ストレス,4,115-125.
A平成19年3月:「担任教師カウンセラーを中心とした校内支援体制のあり方−転校により不登校となった生徒の事例を通して−」(共著)上越教育大学心理教育相談研究,6,87-95.
発】@平成18年9月:『語彙分析を用いた質的研究(2)−初回面接の特徴に注目して−』(共)日本心理臨床学会第25回大会研究発表
A平成18年9月:『語彙分析を用いた質的研究(1)−1夢分析事例における夢内容語彙と全発話内容語彙の比較検討−』(共)日本心理臨床学会第25回大会研究発表
B平成18年9月:『語彙分析を用いた質的研究(3)−物語展開の検討』(共)日本心理臨床学会第25回大会研究発表
C平成18年9月:『語彙分析を用いた質的研究(4)−面接記録の分析−』(共)日本心理臨床学会第25回大会研究発表
D平成18年9月:『語彙分析を用いた質的研究(5)−ロジャースのあるカウンセリング事例における心的プロセス−』(共)日本心理臨床学会第25回大会研究発表
E平成18年9月:『教師のバーンアウト傾向とソーシャルサポートとの関連』日本教育心理学会第48回総会研究発表
F平成18年9月:『中学校校内連携基盤尺度の作成』(共)日本教育心理学会第48回総会研究発表  
G平成18年9月:『小学校におけるピア・サポート・プログラムの適用と効果に関する研究−学級適応感、社会的スキル、自尊感情に焦点をあてて−』(共)日本教育心理学会第48回総会研究発表
学会活動への参加状況等
@9月  日本心理臨床学会出席 
A9月  日本教育心理学会出席 
Bパーソナリティ心理学会 編集委員 
◎特色・強調点等
 心理臨床の面接場面における質的研究を進めていること、教育相談を中心とした校内の連携や教師のバーンアウト傾向について研究を進めていることが特色としてあげられる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年4月〜平成19年3月 新潟県スクールカウンセラー活用事業によるスクールカウンセラー(上越市立大潟町中学校、上越市立大潟町小学校)
A平成18年 新潟県カウンセラー学校派遣事業による派遣カウンセラー(上越市立吉川小学校、上越市立吉川中学校、上越市立八千浦中学校)
B平成18年7月 新潟県小・中・特殊教育諸学校教職12年経験者研修コース別研修生徒指導講師「カウンセリングテクニックを生かした生徒指導のコツ」
C平成18年8月 新潟県小・中・特殊教育諸学校教職12年経験者研修地区別全体研修「いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任」講師
D平成18年8月 上越市立教育センター主催カウンセリング研修会講師「不登校への援助」
E平成18年5月、7月、9月、12月、2月「新潟県中越地震に係わる児童生徒の心のケア」カウンセリング派遣(北魚沼郡川口町立川口小学校、北魚沼郡川口町立田麦山小学校、北魚沼郡川口町立泉水小学校)
F平成18年10月 新潟県教育センター主催 学校教育相談基礎講座佐渡地区研修会講師
G平成18年11月 上越市立南本町小学校保護者向け講演会講師「入学前に知っておきたい子どもの心と親のかかわり」
H平成19年2月 上越市立八千浦中学校保護者向け講演会「思春期の子どもと保護者の関わり」
◎社会への寄与等
 小学校、中学校を中心にカウンセラーとして児童・生徒の心理的援助、教職員の研修などに関わった。不登校をはじめとする事例検討会のありかた等について研修を行い、より効果的な教育相談体制づくりについてコンサルテーションを行った。また心理的悩みを抱えて附属の心理教育相談室に来談する児童、生徒、成人に対して、心理療法を行い、地域のメンタルヘルスのために寄与した。
 

 
井 沢 功一朗(講 師)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 前期はノートパソコンの購入が間に合わず、パワーポイントなど視聴覚教材を使用できなかったため、学部4年生対象に開講している「個性の心理学」では学生からあまり肯定的な評価を得られなかった。
 後期には視聴覚教材ならびに配布資料等を可能な限り整備する努力をし、大学院開講の「臨床的パーソナリティ発達論」ならびに「投影法特論」では学生からの積極的な授業参加を得られ、また授業評価も肯定的なものであった。
 成績評価に関しては、特に臨床心理学関連の科目で出席と中間レポートを課題として出し、学生の理解度を把握しながら授業の難易度を調整するよう心がけた。
【観点2】教育の達成状況
 学部4年生対象「個性の心理学」は、5月いっぱいが受講生の中学校実習にあたるため、出席者が極端に減少するという問題点があるが、欠席時の授業内容をまとめたプリントや配布資料などを実習後に渡し、受講生全員にパーソナリティ心理学の基礎的な知識や研究方法などを伝達できたと考える。
 大学院開講の上記2教科については、臨床心理学的な観点からのパーソナリティ心理学の理解、およびロールシャッハ・テストの実施方法と解釈について、当初教員側が設定していた以上の学生側の理解が得られたと考える。
 
研究指導
【観点1】学部
 進学を希望している学生に対しては、まず学術論文の読み方やまとめ方などのごく基本的なことから指導し、調査・分析方法についてもサブゼミを設けて別途指導した。多様な資料やデータを効率的にまとめ、それを客観的に判断できる能力を伸ばすことに重点を当てた。
【観点2】大学院
 現在、心理教育相談室での臨床実習指導は行っていないため、主に臨床心理学コース院生の修士論文の研究デザイン法やデータ解析法などについて、個別指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 心理学関連領域での進学を希望する学生に対して、教員としての自覚の育成をどのように織り込むかが現在の指導上の課題である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@日本パーソナリティ心理学会 機関紙「パーソナリティ研究」編集委員 
◎社会への寄与等
 書籍出版など
 

 
吉 田 真 弓(助 手)
 
<教育活動>
授 業
 「臨床心理基礎実習T,U」では,外部機関での見学実習の調整と引率指導,カンファレンス指導補助,「臨床心理実習T,U」では,病院実習指導,カンファレンス指導補助,「実践場面分析演習T,U『臨床心理』」,「実践セミナーT,U『臨床心理』」では,指導補助を行った。
 「臨床心理学研究法特論」,「臨床実践援助法」,「教育実地研究Uカウンセリング論」を分担担当し,受講者の理解を促進する目的でパワーポイントによるプレゼンテーションを行い,小テストやレポートによる理解度の確認を行った。
研究指導
学部 「臨床心理学セミナーT,U」指導補助
大学院 「臨床心理研究セミナーT,U」指導補助
その他の教育活動
 放送大学「臨床心理実習U」講師(集中講義,前期・後期の計2回)
 
<研究活動>
学会活動への参加状況等
@11月23日〜24日 日本精神分析学会第52回大会出席
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟県立高田高等学校 1年生オリエンテーション合宿講師 平成18年4月25日
A高田養護学校 学校保健委員会講演会講師 平成18年7月3日
B上越市学校教育研究会研修会講師 平成18年7月20日
C新潟市教育委員会豊栄教育事務所 夏季教育研修会講師 平成18年8月4日
D糸魚川地域振興局健康福祉部 乳幼児虐待予防研修講師 平成18年10月11日
E糸魚川市健康増進課 すくすく赤ちゃん広場講師 平成18年10月25日
F新潟県カウンセラー学校派遣事業カウンセラー(上越市立春日小学校,上越市立谷浜小学校,妙高市立吉木小学校)
G新潟県立高田高等学校 保健相談員(月2回)
H糸魚川市健康増進課 3歳児健診講師(計9回)
I医療法人社団 うえくさ小児科 心理相談員(月3回)
J上越教育大学附属心理教育相談室 相談員
◎社会への寄与等
 乳幼児期から青年期まで子どもを持つ養育者,および,その支援者である教育・児童福祉関係者への講演を通して地域での養育支援に寄与し,本学附属の心理教育相談室をはじめとするカウンセリングを通して地域住民のメンタルヘルスの向上に寄与した。