4 教育・研究組織等
 
(1)各コースの教育
 

@ 学校臨床研究コース
ア 組織
本コースは,学習臨床研究科目群(学部では学習臨床科目群),生徒指導総合科目群,学校心理科目群より構成されている。平成25年3月時点での学習臨床研究科目群スタッフの構成は,教授10名,准教授7名,講師2名であり,大学院生は84名が在籍した。生徒指導総合科目群と学校心理科目群における平成25年3月時点でのスタッフの構成は,教授5名,准教授6名,講師3名であり,大学院生は79名が在籍した。
イ 教育の特色
本コースは,教育の単なる表層的な知識・技能の修得を目指すのではなく,基盤にある教育理論を学び,知識と理論に裏付けられた新たな教育活動を構想し推進できる能力の育成を主眼としている。学部生・大学院生は,「学習臨床研究」(学部は「学習臨床」),「生徒指導総合」及び「学校心理」の各科目群のいずれかに所属して学びながら,各自の研究課題を追究し卒業研究(卒業論文)・修士論文の作成を目指している。
ウ 運営・活動の状況
@) コース会議等の開催状況
学習臨床研究科目群では月1回会議を開催し,生徒指導総合科目群と学校心理科目は合同で月1回会議を開催し,それぞれ教育研究に関する事項を協議し決定している。入試や修論指導等に係る審議もすべて,学習臨床研究科目群と,生徒指導総合・学校心理科目群の2領域ごとに行っており,コース全体の会議は開催していない。しかし,両領域の世話役の間で緊密に連絡を取り,情報の共有と調整に努めており,全体として円滑に運営されている。
A) 審議された主な事項
もともと2つの講座であったものが1つのコースになったことで,運営体制及び教育研究体制に関する様々な部分で調整が必要となっている。カリキュラムの学年進行に合わせて,それらについて順次検討を進めている。
B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項等
ここ数年でスタッフの多くが入れ替わったため,科目群のカリキュラムや授業内容,論文指導計画を全般的に見直し,適宜,必要な改善を加えてきた。本年度は前年度同様,FDの推進と学生定員確保のための方策について検討を進めてきた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
本コースでは,多様なスタッフが学校現場と連携しながら教育実践研究に取り組んでいる。また修論指導に関しては,スタッフ間で比較的自由にアドバイスを得られるような体制を作り上げている。スタッフの数が30数名という中で,こうした体制を維持できていることは特筆すべきである。
しかし,本コースの教員数の多さは,学内の他コースと比較して突出しており,意見の集約や調整に際して多大な困難を抱えているのも事実である。スムーズな運営のためには早急な改善を要する。
なお,「科目群」は,学部生・大学院生指導上も教員組織としても実質的な基本単位となっているにもかかわらず,運用上の組織という位置づけでしかないうえ,「科目群」という名称は大学院の単位としては外部から理解し難い名称である。学部生・大学院生募集のための広報活動においても支障が見られる。名称変更や科目群とコースとの関係の見直しを含め,早期の改善を要望する。
 

A 臨床心理学コース
ア 組織
本コースは8人体制であるが,学長と理事の承認の下,教育研究指導体制は,日本臨床心理士資格認定協会による指定大学院の内容通り,実質,教授3名,准教授3名,助教1名の計7名という厳しい陣容の下,特に修士課程では心理教育相談室での臨床活動を中心とした臨床指導,並びにゼミ活動を中心とした研究指導を精力的に行い,学生のニーズ及び社会的ニーズに応えるよう万全を期してきた。しかし,内田一成教授が自己都合により定年退職まで5年を残し平成25年3月31日付けをもって早期退職することになった。その教育研究指導体制の支障を最小限にするため,後任人事を早急に進める必要がある。幸い本コースでは,教授昇格基準,並びに講師または准教授昇格基準を満たしている各1名が在職していることから,新年度早々にこの2つの人事案件を発議することをコース会議で確認した。
イ 教育の特色
本コースは,日本臨床心理士資格認定協会の第1種認定を受けた臨床心理士養成コースであり,教育,医療,福祉,司法に関わる人間の心の問題の解決に関する実践と解決方法の開発研究を目的とした専門的な教育研究分野である。一昨年度から学部も臨床心理学コースとして独立したため,6年一貫の臨床心理士養成,その後の博士後期課程3年間を含む臨床心理学研究者養成といった条件整備が今後必要になる。
ウ 運営・活動の状況
@) コース会議等の開催状況
定例のコース会議は,毎週火曜日10:30−12:00の日程で行ってきている。教育の質の向上に向けての審議をはじめ,コースのいっそうの活性化に向けて昇任人事に向けての積極的対応を促すとともに,折りに触れてその触発を行った。また,連合大学院博士課程のマル合や合の審査への申請を積極的に促した。
A) 審議された主な事項
全学的な検討事項等についての議論はもとより,特に次の点について検討した。a)資源配分申告書(評価区分147−U)コース・科目群別研究評価についての基準の作成を行った。b)学部臨床心理学コース並びに大学院臨床心理学コースのよりいっそうの教育の質の向上のためのカリキュラム検討を行った。c)日本臨床心理士認定協会の平成20年度から施行してきたカリキュラムの完全実施と質の向上を行っている。d)本コースに所属していながら,教育・研究面でその力量を十分に発揮できないでいる1講師に対しての対応策の検討を何度も重ね,本人の活躍の場を広げるという意味からも,コース内全員一致で当該講師の所属変更の要請を学長に対して行った。
B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項等
日本臨床心理士認定協会の平成18年度指定継続申請に関して平成20年度から施行してきたカリキュラムの完全実施を行ってきており,非公式ではあるが高い評価を頂戴している。また,臨床心理士養成コースの学内実習施設である心理教育相談室は地域の基幹をなす心理臨床サービス機関であるとともに研究機関でもあり,質の高い臨床サービスと臨床指導体制のよりいっそうの充実が望まれる。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
本コースの連合大学院博士課程のマル合教授は3名である。このうち,教授1名が平成25年3月31日付けで退職したためマル合教授は1名減となるが,新年度マル合申請の予定者がいるため,博士課程に関する限り現行の教育研究指導体制と比較して,特に支障を来すことはないと考えられる。しかしながら,学部,修士課程,博士課程をこれだけの陣容で,しかも他のコースと異なり,心理教育相談室に相談に来られるクライエントの方々への臨床サービスと相談研修生への臨床指導を日々行いながらの教育研究指導体制には多くの無理があるとは否めない。よって,「ア組織」「ウ運営・活動の状況 A)審議された主な事項」で述べた現行の7名体制には無理があり,新年度以降では新メンバー2名を加えた8名体制が必要不可欠である。
今後,臨床心理士資格を有する現職教員の輩出による教育界への貢献はもちろんのこと,学部の臨床心理学コースと大学院修士課程臨床心理学コースの6年一貫の臨床心理士養成,及び博士後期課程3年間を含む9年間一貫の臨床心理学研究者養成といった条件整備が現実的な検討課題になってきていると考えられる。
 

B 幼児教育コース
ア 組織
幼児教育コースは幼児教育学,幼児心理学,保育内容の研究の3つの専門分野から構成されている。現在の幼児教育コースの構成メンバー(専任教員)は4名であり,その氏名及び担当分野等は以下の通りである。杉浦英樹准教授は幼児教育学,鈴木情一教授は幼児心理学,丸山良平教授は保育内容の研究「領域・環境」,香曽我部琢講師は保育内容の研究「領域・表現」である。香曽我部琢講師は今年度末で他大学に異動される。
イ 教育の特色
教育内容・方法面での特色は,「教育実践セミナーT・U」及び大学院の「実践場面分析演習T・U」に代表される教育実践的な指導を推進していることにある。今年度は「教育実践セミナーU」「実践場面分析演習U」では専門セミナー単位で専門性をいかした指導を行い成果をあげた。
4人の教員の専門性を活用した複数担当授業(「総合演習」,「子ども理解の実践演習」等)を設け,専門領域に偏らない総合的な指導をしている点も特色として挙げられる。本学の保育士養成を中心的に担っている点も特長としてあげられる。
ウ 運営・活動の状況
i) コース会議等の開催状況
平成24年度に開催したコース会議は,臨時会議を除き21回であった。隔週開催を原則とし,委員会関係の「報告」は事前にメールで配信するなど効率化を図った。
A) 審議された主な事項
昨年度と大きな変更点はない。大学院定員充足,保育士関連のカリキュラム・実習,幼稚園専修教育実習の指導,複数担当授業の内容・方法等,卒論・修論発表会の開催,各種委員会からの要請事項,学生・院生を巡る課題,等々について審議を尽くした。
B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項等
昨年度実施した教育実地研究TB(観察・参加)における幼稚園実習の改善,幼稚園専修教育実習評価法の改善を過不足なく実践することに重点を置いた。複数担当授業内容・方法の改善や会議の効率化をさらに推進することも留意した。
エ 優れた点及び今後の検討課題
4人の教員が密接な連携と協力のもとに各種の業務及び授業等を行い,保育士養成,幼稚園教員養成の中心的な役割を果たすことで学内・学外に重要な貢献を行っている。
今後の課題として,3人で1コースを運営する業務の配分と負担量の軽減が大きな課題である。さらに入学した院生に対する指導の質的向上も必要であり,特に教育職員免許取得プログラムの履修者に対する指導のあり方を明確にしておく必要がある。これらの課題を解決していくためには,スタッフの充実が必要不可欠である。
 

C 特別支援教育コース
ア 組織
特別支援教育コースは特別支援教育実践研究センターと一体となって運営されており,平成24年12月1日付けで村中智彦講師が准教授に昇任し,教授5名,准教授4名,講師1名,助教1名の計11名の構成になった。その後平成25年3月31日付けで葉石光一准教授が埼玉大学教育学部に転出したことにより,教授5名,准教授3名,講師1名,助教1名の計10名の構成となっている。また,全教員が特別支援教育実践研究センターの兼務教員となっている。
イ 教育の特色
本コースは,幼稚園,小学校,中学校または高校のいずれかの教員免許状を有する者あるいは取得見込みの者を対象に,特別支援学校教諭専修免許状,同一種免許状を取得するために必要な科目を開設している。特別支援教育に関する高度な専門的知識と実践的指導力を習得させることにより,障害のある幼児児童生徒の教育的ニ−ズに応じて適切な支援を行うことが出来る教員を養成している。教育学,心理学,指導法など多岐にわたった授業科目を用意しているが,特色としてはあらゆる障害種の障害児を対象としていること,臨床実習を重視したカリキュラムになっていることが挙げられる。
ウ 運営・活動の状況
@) コース会議等の開催状況
原則として毎月第2第4火曜日に,特別支援教育実践研究センターの兼務教員による会議と併せてコース会議(以下コース・センター会議という。)を開催しているが,平成24年度はコース・センター会議を27回開催した。
A) 審議された主な事項
特別支援教育コースでは,入試,学生支援,カリキュラム,研究プロジェクト,人事,センター運営などのワーキング・グループを組織し,それぞれに関係する検討事項について適宜会議を開催して協議し,コース・センター会議に付議された。
B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項等
特別支援教育実践研究センターの将来構想に関してセンターワーキングを中心に検討を続けた。また,特別支援学校教員1種免許状に係る教育実習を新潟市や長岡市などの遠隔地で実施せざるを得ず受講生に種々の負担をかける状況の改善に関して検討を重ねた。さらに障害学生の授業における情報保障の推進に関して協議した。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
本学の特別支援教育コースは,視覚・聴覚・知的・肢体不自由・病弱の特別支援学校教諭免許状の5領域すべてをカバーできることが大きな特徴になっているが,それだけでなく重複障害・発達障害の領域もカバーできることも優れた特徴となっている。特に喫緊の課題となっている通常学校における発達障害児の教育に関する研究にも力を入れ,特別支援教育実践研究センターとの連携を密にして地域貢献事業も継続的に行った。
平成24年度は,特別支援教育コースに4名の聴覚障害学生が在籍した。彼ら障害学生に対する情報保障,講義保障に関して健常学生によるサポート体制の構築,手話通訳者の配置,ビデオ教材の文字化,授業担当教員への配慮通知などを行った。
一方,平成24年度は附属学校園との連携はあまり活発ではなかったので,この点が今後の検討課題となる。また長期的な課題としては,特別支援教育コースの教育,研究,及び地域との連携に関する活動と特別支援教育実践研究センターの将来構想に関して一体的に検討を進めることが挙げられる。
 

D 言語系コース
(国語)
ア 組織
平成24年4月1日現在の国語の構成員は,教授3名,准教授4名の計7名であり,他に特任教授が1名である。なお,平成25年4月1日に,准教授1名が教授に昇任し,講師1名が新たに着任する予定である。
イ 教育の特色
本科目群は,国語学,国文学,国語科教育,書写・書道の4領域で組織されており,学部学生・大学院学生ともにその各領域に所属している。在籍学生は,学部2年生17名,3年生17名,4年生18名,大学院修士課程1年生11名,2年生10名である。指導の具体はそれら領域における教育を中心とするが,必要に応じて複数領域での指導を柔軟に行っている。卒業論文と修士論文の指導に係る構想発表会・中間発表会は全領域合同で行い,領域にかかわらず相互に議論が展開されている。なお,漢文学を専攻する教員を欠き,大学院(隔年)・学部(毎年)ともに非常勤講師を招いて充実をはかっている。
また「上越教育大学国語教育学会」を組織しており,年2回の例会では,卒業・修了生の実践または研究の発表,卒業論文・修士論文の発表及び教員の研究発表が行われている。今年度末で64回をむかえ,小中高大教員,指導主事,大学院入学予定者など,修了生・卒業生を含む学外からの参加者も少なくない。学会誌として年1回『上越教育大学国語研究』を刊行,今年度で27号を数える。掲載論文は,学界時評等でしばしば高く評価されている。
ウ 運営・活動の状況
科目群会議は16回開催された。主たる審議内容は,科目群の運営・人事計画と今後の教育の方針,カリキュラムの具体的な内容の検討,修士論文・卒業論文の指導方法,附属学校(国語科関係)との連携,科目群の広報活動,大学院定員充足の方策,入試に関する事柄,「上越教育大学国語教育学会」の運営方針・同学会誌の編集,学生動向等である。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
学生の教育・研究指導において科目群内の領域を横断した体制が組織されている点が優れている。このため卒業・修士論文の指導・評価ともに広い視野で実施することが可能になっている。卒業・修了生の学業成績や教員採用状況も高い。
今後の課題としては,中教審答申を含め,教員養成と教育に係る諸状況を念頭におき,科目群の運営と教育の方針の策定,大学院学生,特に現職教員の減少傾向への対策が必要である。また,大学院の所属学生は,現職教員,新卒進学者,教育職員免許取得プログラム受講生,留学生のごとく,多岐にわたる。このため単一の方法では有効に指導しがたい状況が生じている。修士論文の質的水準の維持をはかりつつ,学生の属性や資質に応じたきめの細かい教育・研究指導の対応が必要である。学部については,教科内容等の基礎学力を養成しつつ採用試験の合格率をさらに上昇させることが求められる。教育・研究指導を教員の専門領域を横断して実施していることが,これら諸問題への有効な方策だと考えられる。また,学生のメンタル面でのケアも必要とされるところである。
 
(英語)
ア 組織
平成24年4月1日現在の英語の構成員は,教授4名,准教授3名,外国人特任講師1名の計8名である。
イ 教育の特色
学校教育学部では,英語の基本的な力を身につけさせるとともに小・中・高等学校及び社会のニーズに対応できる能力の育成を目指して創設された言語系英語コースの12年目にあたり,在学学生は,学部2年生17名,3年生17名,4年生17名である。11月に卒業論文中間発表,平成25年2月には卒業論文発表会を開催した。大学院言語系英語コースでは,英語教育に関する指導力・教科専門性・実践的技能をあわせもった人材の育成を目指している。平成24年度は,大学院修士課程1年生20名,2年生15名,3年生13名が在籍した。2・3年生は4月の修士論文構想発表会,10月の修士論文中間発表会,1月末の修士論文審査・試験を経て平成25年3月に修了した。1年生は,前期の6月末までには指導教員を確定し,次年度の構想発表に向けて本格的な研究活動に入った。
ウ 運営・活動の状況
平成24年度は科目群会議を18回開催した。審議した主な内容はカリキュラム,修士論文,卒論,入試に関する事柄,予算,学生動向等である。学会に関わる活動では,平成24年7月には,言語系英語コース(英語)が事務局となっている「上越英語教育学会」の第16回大会が本学マルチメディア教室で開催された。県内・県外から大勢の参加者があった。実践報告・研究発表を行うとともに,機関誌『上越英語研究』第13号を刊行して,地域・社会との教育・研究分野での連携を図っている。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
「マルチメディア語学教材システム」の本格的稼働に伴い,e-Learningを活用した教材開発や自学型カリキュラムの整備などをさらに進めていく必要があると思われる。また,「英語コミュニケーション能力向上」,「小学校英語指導力養成」,「異文化理解マインド育成」の3点については重点的に取り組んでいくことが求められる。とりわけ,「小学校英語教育」については,「小学校英語教育」に係わる出前講座を実施し,上越市教育委員会との連携・協力体制確立に努めた。また,附属小学校,上越市,糸魚川市の公立小学校から「小学校外国語活動」について支援を求められ,北條教授,石濱准教授が指導・助言を行っている。平成23年度から本格導入された小学校における外国語活動に向け,教育課程,教材開発のさらなる充実を図る必要がある。その結果として本学の大学院定員充足にも貢献することにつながると思われる。
 

E 社会系コース
ア 組織
前年度末をもって人文地理学担当の赤羽教授が定年退職となり,後任として平成24年4月1日付で矢部准教授が着任した。また,同日付で地理教育担当の志村准教授が教授に昇任した。この結果,本年度の社会系コースの構成は,前年度と同様,教授6名,准教授5名,講師1名の計12名,分野的には地理・歴史・公民・社会科教育各3名の体制であった。なお公民に関しては,中学校社会科及び高等学校公民科の教員免許選択必修科目である哲学,倫理学,社会学を担当する者おらず,非常勤講師でまかなっている現状である。
イ 教育の特色
当コースには,教科内容にかかわる地理学,歴史学,法律学,経済学,宗教学などの専門諸学,及び教育方法にかかわる社会科教育学の各研究室があり,学部生は3年次より,大学院生は入学当初より,自らの研究課題に基づいていずれかの研究室に所属し,各指導教員のもとで卒論,修論を作成している。一方で,教育・研究指導にはコースの全教員が協力・連携して当たるという共通認識のもと,大学院においては修論作成までの間に4回の全体での中間発表会を実施している。また学部においても,毎年,下級生も含めた全員参加の卒論発表会を開催している。このことから,学部生及び院生の研究内容は,教科専門, 社会科教育,教科専門内容の教材化という各視点で構成された学際的・総合的な研究に取り組んだものが多くみられる。
ウ 運営・活動の状況
当コースでは,月例1回の会議の他,必要に応じて臨時の会議を開催することとしており,本年度は計17回のコース会議を開催した。このなかでは,昨年度の当コース大学院受験者の大幅な減少という事態の反省から,当コースのホームページをリニューアルとアクセスの改善が引き続き話し合われた。
研究活動では,昨年度末に追加寄贈された旧市川家蔵書の目録を作成するとともに,浅倉教授を代表として本学プロジェクト研究「高田における知の系譜」を推進した。また,松田教授が代表となって本学地域貢献事業の助成を受け,新潟県社会科教育研究会の協力のもと,昨年度に引き続き地域教材の教師用冊子『平成の大合併〜上越の過去・現在を綴り未来を探る〜』を刊行した。この事業は,これまでの成果と併せて,新潟日報上越かわら版において紹介された。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
優れた点としては,上記のように,卒論及び修論において個別指導と集団指導の指導体制を確立しており,特に修論指導においては全教員参加による数回にわたる研究発表会を開催していること,また,実践セミナー・実践場面分析演習では学部生及び大学院生との合同授業の成果の発表会を開催すると同時に,その成果を冊子にまとめていること等があげることができる。また,地域貢献事業の報告書も高い評価を得ている。
今後の検討課題としては,今年度もまず大学院の定員充足を挙げなくてはならない。本年度は受験者数が反転増加し,来年度入学予定者は20名とほぼ平成23年度以前の状態を回復した。しかし,この間の増減の真の理由はほとんど不明であり,再び減少に転じる可能性も否定はできない。当面は思いつく限りの広報活動に邁進していくしかないものと思われる。
 

F 自然系コース
ア 組織
科目群「数学」(以下,「数学」)では,4月に林田氏が代数学の准教授として着任し,科目群「数学」の教員スタッフは教授3名(数学教育1,数学プロパー2),准教授4名(数学教育2,数学プロパー2)の計7名となった。
科目群「理科」(以下,「理科」)の教員スタッフは,物理学2名(准教授2),化学2名(教授1,講師1),生物学2名(准教授1,講師1),地学3名(教授1,准教授2),理科教育学2名(教授1,講師1),理科野外観察指導者養成部門1名(教授1)の合計12名で構成されている。
イ 教育の特色
「数学」:
教育の特色は,基礎教育に大きく貢献していることである。各教員が授業,演習,ゼミ等において学部生,院生に対する魅力ある教育活動を展開している。
「理科」:
自然の事象に興味関心を持たせるとともに,積極的に科学研究に取り組む意欲や態度・能力を育て,その資質・能力を次世代の教育に生かせる人材の育成を目指している。学生・院生はいずれかの研究室に所属し,講義,演習,実験,ゼミナール等の指導を受けながら研究を行うと共に理科の教材とその指導方法を学習する。「理科野外観察指導実習」は,本学大学院の授業科目であり,地域の教員に対して専修免許状取得に関わる学習の場を提供している。
ウ 運営・活動の状況
「数学」:
全員の会議は必要に応じ,機敏に開催した。教授部会は,人事に関する必要性が出てきたときに,開催した。会議においては日常の校務分掌から,教育論に及ぶ,幅広いテーマが審議された。院生の指導に関しての問題点があれば,これを共有し,全員で解決する意識を持つことに努めた。
「理科」:
月ごとに定例の理科部会を開催し,教育・研究と分野運営等に関する計画立案や情報の共有をはかっている。特に,卒業研究・修士論文の研究指導については,年度初めに綿密な年間指導計画を立て,学生に周知させるとともに,教員が連携して指導に当たっている。修士課程の広報活動としては,前年度に引き継ぎ,雑誌『教職課程』に科目群「理科」の概要や入試の日程等の広告を掲載した。受験者数を増やすために,各種のパンフレットの発送につとめた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
「数学」:
この数年間で数学の教員が大幅に入れ替わったこと,また,大学全体のカリキュラム改革に対応するため,数学に関するカリキュラム全体について再検討し,数学の教員として必要な知識・教養を習得できるように改善していかなければならない。
「理科」:
どの授業科目も学部生,現職教員及び教育職員免許取得プログラム受講者など多様な受講生をかかえている。学部・修士課程ともに,教科「理科」の実践的指導力を確実に習得させるためにはカリキュラムを一段と改善する必要がある。
 

G 芸術系コース
ア 組織
「音楽」では平成24年4月に音楽教育学の時得紀子が教授昇進となり,教授3名,准教授2名,講師3名の全8名で,「美術」は,教授3名,准教授3名,講師2名の全8名で教育・研究・運営を行った。
イ 教育の特色
実技系コースの特徴を活かし,その成果発表が精力的に行われた。
音楽では恒例の院生演奏会「アウトゥンナーレ」が平成24年11月4日に,卒業・修了演奏会が平成25年2月3日に,学部4年次生による音楽劇が2月23日に開催された(会場はいずれも本学講堂)。そのほかに,声楽や器楽,作曲領域の実技ゼミの発表も活発に行われた。卒業・修士論文についても指導助言の機会を増やすために論文発表会を学部3年次に1回,4年次には2回行った。大学院では1年次に学位論文研究デザイン発表会等2回,2年次に学位論文中間発表会を平成24年6月に,学位論文発表会を平成25年2月に行った。
美術では卒業・修了研究展,院生展が意欲的に開催された。学部卒業生,修士課程修了生による「卒業・修了研究展」は平成25年2月22日−28日,大学院2年・3年生による「院生展」は平成25年3月6日−13日に,小川未明文学館(高田図書館1F市民ギャラリー)で開催した。また上越市展,妙高市展での入選,受賞が数多くあった。修士論文に関しては指導の徹底を図るべく,1年次に構想発表会等2回,2年次に中間発表会を行い,平成25年2月に修士論文発表会を行った。大学院生(2年)の油彩作品がフィレンツェ賞において大賞を受賞し,本学の優秀学生として表彰された。
ウ 運営・活動の状況
@) コース会議等の開催状況
芸術系コースとしては,コースからの委員選出等のため必要に応じ臨時に行い,教科ごとの会議は音楽が14回,美術は臨時を含め15回開催した。
A) 審議された主な事項
「音楽」では,大学院の定員充足に向けた広報活動のあり方と具体策,音楽教員の個人ホームページの整備について検討し,年度内に実施可能な取り組みを積極的に行った。授業や指導内容に関しては,ブリッジ「音楽」の今年度実施した指導内容の問題点や反省点を踏まえ,次年度に向けて更なる授業内容の改善について検討した。
「美術」では,カリキュラムの内容の検討として,「教職実践演習」の内容等,今後のカリキュラムについて検討が開始された。また,台湾新竹教育大と本学の協定が締結され,今後も美術教育の交流を継続することが確認された。さらに,卒業・修了研究展,修士論文発表会,学部生の学内展示の方法や会場などについても検討した。
B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項
「音楽」では,音楽教員の情報発信の必要性を鑑み,各教員の個人ホームページの開設を検討した。次年度に継続して整備を万全にしたい。
「美術」では,学部入試における実技試験のあり方について慎重に検討を行った。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
教員数が大幅に削減された中で,授業時数の負担が偏らないよう配慮しながらコース・科目群の活動が活発に行われること,大学院生の多様な希望に応じた研究指導体制作りが検討課題である。しかし,そのような制約の中でも前年度と同様に,より充実したカリキュラムを構築するため,「音楽」「美術」とも全員で協力しながら教育・研究にあたった点,また,個々の授業や活動だけでなく,「表現」や「体験学習」といった全学的な授業も多くの教員が担当していることが優れている点である。
大学院,学部の定員が必ずしも充足していないことから,広報活動を中心に修了・卒業生との連携,他大学との情報交換・協力体制等により現状を改善することが緊急の課題である。
 

H 生活・健康系コース
ア 組織
生活・健康系コースは,保健体育,技術,家庭,学校ヘルスケアの4つの科目群で構成されている。平成24年度の教員数は,4月1日付けで保健体育に池川茂樹講師が着任し,保健体育8名(副学長1名含む),技術5名(副学長1名,情報メディア教育支援センター兼務教員1名含む),家庭6名,学校ヘルスケア4名(保健管理センター兼務教員2名含む)の計23名(教授13名,准教授7名,講師3名)であった。
イ 教育の特色
保健体育は,体育科教育学,体育学,運動学,学校保健学の分野からなり,これらの基礎的理論と学校現場での指導実践を融合させた指導プログラムに基づいて,教育実践力に富む教員の養成及び地域の体育教育・スポーツ活動を支援している。
技術は,技術科教育学,木材加工学,金属加工学,電気・電子工学,機械工学,情報工学,栽培学の分野に関する研究を通して,情報化や国際化に主体的に対応する能力や,地球環境保全に配慮した技術的な活動能力をもった人材を育成することを目指している。
家庭は,家庭科教育学,家庭経営学,食物学,被服学,児童学及び住居学の分野からなり,社会環境の変化による複合的な生活の問題に対応できる専門的な資質・能力をもった人材を育成することを目指している。
学校ヘルスケアでは,健康教育学,医科学,養護学,食や健康に関わる科学などの専門的学問基盤に立脚し,健康・安全や食の教育に関する研究を通して,現実の課題を分析し解決に導く能力,創造的な教育実践の推進者となりうる能力の向上を目指している。
ウ 運営・活動の状況
本年度はコース会議を7回開催した(平均出席率85.0%(副学長除く))。各部署等からのコース長への依頼・照会事項等は,適宜会議や電子メール等により構成員及び科目群世話人に周知した。また,各科目群で定例会議を開催する等,教育・指導面の運営について実情に即した運営を行った。
重点的に取り組んだ課題や改善事項は,平成18年度以来昨年度まで継続して大学院入学者数がコース定員(28人)を上回ってきたが,本年度の入学者が下回った(20人)ことから,定員充足がコースの喫緊の課題となり,第1回のコース会議でこの事態を再確認し,以後の会議等でも適宜取り上げる等,受験者確保に努めた。本年度実施された平成25年度大学院入学試験の受験者・合格者数は例年のレベルに回復した。また,兵庫教育大学連合学校教育研究科博士課程の生活・健康系連合講座の教員数が減少していることから,コース会議やメール配信等により今後の上越における連合講座博士課程教員数の4年先の見通しを含め連合大学院に関する各種情報を共有化すると共に,当該教員資格審査申請の奨励にも努めた。
保健体育では,教員免許状更新講習の継続と拡充,大学院入試の出題方法の検討,学部実技入試内容の検討を行った。また,体育科目群における人事計画に則った公募人事2件と教授昇任人事1件が進められ,平成25年4月1日付けで竹野欽昭氏および松浦亮太氏の准教授採用と土田了輔准教授の教授昇任が決定した。その他,地域貢献として,近隣の小・中学生を対象とした剣道,サッカー,体操教室等を継続して実施した。
技術は,私立大学の工学部・農学部,技術同窓会等との連携を強化するとともに,近年取り組んでいる職業能力開発大学校も対象に大学院生の充足率向上を図った。また,地域貢献にも積極的に取り組み,周辺の小中学生を中心に,科学技術やものづくりの面白さ・楽しさを伝える活動も積極的に行った
家庭は,生活・健康系(家庭)コース公開セミナー(本学研究プロジェクト「専門分野の研究成果を基盤とした家庭分野の教材開発」の事業)を開催し,地域貢献事業を展開した。その講演内容を冊子として出版した。また,家庭コース独自の大学院入試説明会を実施した。またホームページを改訂した。
学校ヘルスケアでは,ホームページを改訂し,スマートフォンにも対応した他,教員個人ページの充実を図り,SNSを通してリアルタイムに情報発信できる体制を整備した。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
保健体育における今年度の大学院の在籍者は38名であり,そのうち13名が修了した。また,学部学生の卒業者数は16名であった。平成25年度の大学院入学試験の結果では,新たな入学予定者は17名となっている。今後もこのような学部・大学院の充足率を維持することが課題である。
技術は,大学院修士論文最終発表会を,「上越 技術と家庭科教育の会」及び技術同窓会と連携し,公開形式で実施した。検討課題は,学部・大学院生の充足率の向上である。
家庭は,人事についての議論の一元化を図り構成員全体の合議にしていること,2年間の研究プロジェクトを家庭全員で企画運営し,まとめとして講演冊子作製の実績があげられる。検討課題は,より一層の人事の促進,学部・大学院生の増員である
学校ヘルスケアでは,修了生や地域の教育・医療機関との連携を深め,地域貢献活動を行った。大学院生の増員が喫緊の課題である。
 

I 教育実践リーダーコース
J 学校運営リーダーコース
ア 組織
本専攻の教員構成は,平成24年度は20名であった。教授は9名,准教授は7名,特任教授1名,特任准教授3名である。平成24年度中に,寺田喜男特任教授が退職した。
大学院専門職学位課程在籍者は,2年次学生52名,1年次学生80名。また,学部の教職デザインコースには,4年次学生16名,3年次学生14名,2年次学生16名である。
イ 教育・研究の特色
本専攻は,教育実践リーダーコースに関わる学習指導領域と生徒指導領域,また,学校運営リーダーコースに関わる教育課程・教務系リーダー領域と学年・組織運営系リーダー領域の4つの領域から構成されている。しかし,教員は固定的に一つの領域に所属するのではなく,横断的に所属し,教育を行っている。いずれの領域も,学校現場と連携し,その学校の教育改善を実現する過程で,学生指導を行っている。
本専攻に所属する学生は,中長期の教育実習をコアとしたプロジェクト科目群を中心とした教育を受けている。プロジェクト科目群では,組織的な事前・事後指導はもちろん,教育実習中も組織的な指導を行う。また,年間を通じて,常に実習校と連携をとり,実習が実習校の教育改善につながるような計画立案と改善を継続的に行っている。その中で,学生と学校の課題意識に基づき,チームとしての追求課題を深め,その成果を学校現場に還元する。
平成21年度より始まった学士課程の教育活動に関しては,専門職学位課程の教育活動と連携を進めている。連携する学校単位で,その成果を発表する場を設けている。さらに,地域に対する発表の場を設けている。このような場を通して,学生・教員集団の相互理解,相互乗り入れをはかるのみならず,地域や学校との相互理解,相互乗り入れを発展させ,共有化する工夫を行っている。
ウ 運営・活動の状況
ほぼ毎週に専攻会議を開催し,本専攻の運営に関する重要事項について協議している。さらに,必要に応じて一つのテーマに絞って半日以上を費やす臨時専攻会議を開催している。
エ 今後の検討課題等
次年度は開設6年目となる。今までの5年間の成果を再検討しさらなる教育の改善を行わなければならない。また,いっそう充実した学生の就職支援を行わなければならない。これらが来年度の最重要課題である。
人事については,欠員と昇任人事について,適正な人事配置と均衡のある職階構成が教育・研究環境の整備にとって不可欠であり,その是正と改善が望まれる。