あ と が き


 上越教育大学では,組織,運営,教育研究活動等全般にわたる年次報告書を昭和60年度版(昭和61年12月発行)から作成・発行してきており,この平成25年度版で第29集を刊行するに至りました。このあとがきでは,本年度の年次報告書について各章ごとに総括します。

 第一章「組織の運営状況に関する自己点検・評価」に関して,管理運営組織等,学生支援,附属施設等においては概ね順調に取り組まれています。教育・研究組織等に関し,各組織がそれぞれの立場において課題を挙げていますので,本学としてもその内容を見極めつつ,更なる改善を図ります。
 なお,本年度は,特に注目される点として以下のことをあげることができます。

<佐藤芳コ 新学長が就任>
 平成25年4月1日付けで,若井彌一学長に替わって,佐藤芳コ学長が就任し,新体制がスタートした。

<国立の教員養成大学・学部(教員養成課程等)卒業者の教員就職率で全国第3位>
 文部科学省が発表した「国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)等の平成25年3月卒業者の就職状況」によると,本学の平成25年3月学部卒業者の教員就職率(卒業者数から大学院等への進学者と保育士への就職者を除いた場合の教員就職率)は83.1%で,全国44大学・学部中,第3位であった。

<平成25年度科学研究費補助金新規採択率で全国第10位>
 文部科学省研究振興局の公式ホームページで,平成25年度科学研究費助成事業採択状況の集計データ(上位30機関)が公表され,本学においては,新規採択分では全国第10位で,11教育系大学の中で第1位となった。

<「教科内容構成に関する科目」の開設及びテキスト(試案)の刊行>
 全学体制により,各教科に関する学術的な内容の体系化を図ることを目的とする「教科内容構成に関する科目」について調査・研究を行い,平成26年度に試行を開始する8科目を開設するとともに,平成26年3月には,10教科及び道徳の全11冊のテキスト(試案)を刊行した。

<本学と地方自治体等との連携協力に関する協定締結>
 平成25年5月に上越市との連携協力に関する協定,平成25年6月に糸魚川市及び糸魚川ジオパーク協議会との連携協力に関する協定,妙高市との連携協力に関する協定を締結した。

 第二章「各教員の教育・研究活動及び社会との連携に関する自己点検・評価」に関して,各教員は教育活動,研究活動,社会との連携活動について,積極的に取り組んでいます。特に近年は,社会的活動状況が増加傾向を示しています。これは,教員の養成のみならず教育研究成果を社会に還元し,地域と共に学びの場を創造するという,本学大学憲章の理念が浸透してきていることの証ではないかと考えられます。また,本年度自己点検・評価書の回収率は93.46%(153人中143人)でした。各教員の教育・研究指導の状況に係る自己点検・評価が授業の内容及び方法等の改善に結びついて欲しいと考えています。

 第三章「本学専門職学位課程評価基準に基づく自己点検・評価」に関して,本年度は基準3,4,9の3つの基準について実施し,各基準とも全て基準を満たしていました。
 なお,各評価基準における自己点検・評価の要点は,以下のとおりです。

<基準3「教育の課程と方法」>
 教育課程については,「臨床共通科目」を土台とした上に,「学校支援プロジェクト科目(学校支援リフレクション,学校支援プレゼンテーション)」が,「実習科目(学校支援フィールドワーク)」とともに「学校支援プロジェクト」として,高度な実践的問題解決能力・開発能力を身に付けるものとなっている。また,専門職としての高度な実践的能力を高めるための科目として「プロフェッショナル科目」が置かれ,体系的な教育課程を編成している。
 特に,教育課程の中核として位置づけている「学校支援プロジェクト」では,連携協力校と協働して,学校課題の解決にチームで取り組んでいる。「学校支援フィールドワーク」での取組を,大学での「学校支援リフレクション」で振り返り,実践の意味付けをしたり,学校課題の解決の方策を協議したりするとともに,リフレクションの成果を活かした,連携協力校での「学校支援フィールドワーク」や「学校支援プレゼンテーション」による学校への提案を行っている。

<基準4「教育の成果・効果」>
 在学生については,「学生による授業評価アンケート」,「学修成果報告書」,「e-box」(デジタルポートフォリオ),「学校支援フィールドワーク報告書」等により,教育の成果・効果を把握するとともに,単位修得,修了の状況,進路の状況等から判断して,教育の成果・効果が上がっている。
 また,修了生については,「上越教育大学教職大学院フォローアップ研修会」等により,教育の成果・効果を把握しており,さらに,新潟教育委員会をはじめ,各教育委員会や,修了生の赴任先の学校長等の意見聴取等から,ミドルリーダー,学級担任,新規採用教員等,それぞれの役割に応じて学校課題解決に取り組んでおり,教育の成果・効果が上がっている。

<基準9「教育の質の向上と改善」>
 教育の状況等についての自己点検・評価は,「自己点検・評価規則」に基づき,企画,立案及び実施に関する総括を行う大学評価委員会を設置し,毎年度実施している。さらに,教職大学院認証評価に対応可能な評価基準を制定し,自己点検・評価を実施している。
 また,FDを推進するため,ファカルティ・ディベロップメント委員会を設置し,その下に,「専門職学位課程専門部会」を置き体制を整備している。FDに関する具体的な取組として,「学生による授業評価アンケート」を毎年実施し,各教員には,アンケート結果を基に自己の授業の問題点の認識並びに授業改善を目指す自己評価レポートの作成を義務づけており,学生の意見聴取を基にした教育の状況の自己点検・評価並びに授業改善を実施している。さらに,「上越教育大学教職大学院フォローアップ研修会」を毎年実施し,修了生に対する教育効果(学修成果)の検証と教育現場での新たな課題に対する協働研究を継続的に行い,教育の質の向上を図っている。

 本編の根拠として第四章に「資料編」を添付いたしました。最後に,本報告書の作成にご協力いただいた教職員各位に対して謝意を表しますとともに,学内外の関係各位からのご意見・ご助言をいただきたく,この場を借りてお願い申し上げます。

平成 27 年 3 月
上越教育大学副学長
大学評価委員会委員長
天 野 和 孝