内 藤 美 加(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
大学院の講義では子どもの発達と学習に関する最近の認知発達心理学的な知見に基づく研究成果や修士論文を紹介し,講義内容について討論や意見交換をすることにより学校教育心理学的な理解を促した。成績評価は学生個人の疑問点を文献で調べ報告するレポートによった。大学院および学部の実験では,レポートの添削及びその解説を行い,心理学的データの分析方法や研究計画法,研究報告書の作成方法を習得させた。
学部の概論では,心理学入門としての位置づけを明確に説明した上で,心理学の面白さを体験させることを目標として学生が内容を理解することに重点を置いた。学期を通じて合計5回の小テスト,宿題を課し,課題提示の翌週に解説を行った。講義内容の定着度を期末試験によって評価した。
【観点2】教育の達成状況
単位不足のため3月に修了できなかった免許プログラム学生は,必要単位取得後9月10日付けで修了した。不足単位に免許科目が含まれていたため,教員免許は取得せず採用試験も受験しなかった。しかし,修士論文は学術的にも評価できる内容の論文をつくり,3月に修士の学位を取得した。免許プログラムの修士3年生は,教員採用試験に合格後修士論文を提出して3月に修了し,石川県の小学校教諭に採用された。
研究指導
【観点1】学部
該当なし。
【観点2】大学院
免許プログラム3年生1名に対して,週1回の定期ゼミに加えて不定期にゼミを行い,修士論文のための文献講読,実験材料ならびに調査項目作成,実験準備,および論文執筆などについて指導を行った。特に実験および調査データの収集と分析,結果の解釈についてはきめ細かく助言を与え,原稿に丁寧に朱を入れて論文の向上を図った。前期修了の1名には定期ゼミに出席してもらい,他の学生との討論に参加させた。残り4名の14年度修了予定者には,10月までは11月の構想発表会に向け文献講読を行わせて,心理学の研究方法,論文の構成,統計学的知識などを習得させた。11月以降も引き続き文献講読させ,修士論文の研究課題を絞り込むような方向付けを行った。
その他の教育活動
3月に筑波大学大学院人間総合科学研究科において,子どもの社会性の発達について1日(4コマ)の講義を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
以上の教育活動における特色の第1は,講義への模擬実験と討論の導入である。模擬実験を行うことにより,心理現象の面白さとその心理学的な捉え方を身近な実体験から理解したり,討論を通して疑問点を受講生同士が互いに補足し合うことにより,講義への学生自身の積極的な参加を促すよう努めた。第2に研究指導上の特色は,学生の日常的な直感をきちんと研究の俎上に載せることを自覚させた点である。自分の体験から発する素朴な問題意識は研究上どのように位置づくのかを考える態度や,対象を相対化し,客観的,理論的に分析する視点の涵養を図った。学部と大学院ともに,講義に対しさらに積極的な聴講を促す方策を検討することが課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成25年12月:認知心理学ハンドブック(共著),有斐閣
学会活動への参加状況
(1)平成25年9月19日〜平成25年9月21日:日本心理学会77回大会
◎特色・強調点等
日本の子ども(特に,幼児・児童期)の社会的能力の発達について,その様相が欧米の先行研究知見とは異なること,その理由の1つとして社会的能力の獲得がすぐれて社会文化的な構成に基づいていることを,発達心理学的な研究データに基づいて論評した。これまで欧米の知見を世界共通の普遍的事実としていた前提に疑問を提示した点に特色がある。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年8月19日:免許更新講習(上越教育大学)
◎社会への寄与等
免許更新講習では,必修科目「教育の最新事情」子どもの変化の理解を担当した。またNPO法人発達障害研究推進機構では,本機構で行っている研究活動のうち報告者が関わっている部分の報告を行った。いずれも,自閉症スペクトラム障害を中心とする発達障害の子どもの特徴や発達の様子を最新の研究知見などに基づきわかりやすく解説した。こうした活動により,学校保健や教育現場での発達障害の子どもに対する理解や支援に間接的ながら寄与している。