渡 部 洋一郎(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
授業形態については,学部の場合,実際の教室場面を想定したグループ活動や討論場面も授業内容に取り入れ,実践的な授業構成力を養うことを心がけた。また,学習指導の方法については,取り上げる教材の種類や内容により,構成を重視した説明文の場合,読解とその方法を中心とした文学教材の場合などに分け,具体的な運用の方法などを理解してもらうよう心がけた。特に,成績評価については,レポートや出席状況のみならず,授業中の発表内容やグループ運営のあり方等も加味して行うよう努めた。
また,大学院修士課程の授業においては,研究論文の作成に寄与することを念頭に,文献収集の方法や先行研究の位置づけの実際,また,授業分析の方法などの説明,臨床的な教育研究を修士論文に反映させる際の手だてなどについて詳述することを心がけた。
【観点2】教育の達成状況
学部4年のゼミ学生のうち,2名を合格正規採用させることができ(1名新潟県小学校教諭・1名愛知県小学校教諭),1名を臨時採用とすることができた(1名静岡県中学校講師)。また,修士課程2年のゼミ学生1名は,他大学人文学部からの進学者であるが,他大学からの進学者については,富山県中学校教諭として合格正規採用にすることができた。
以上の点から,学部で67%,大学院修士課程で100%の正規採用率を達成できたので,十分な取り組みをすることができたと思われる。
研究指導
【観点1】学部
教育に関わる臨床的な実践力をつけるために,例年同様,次の2点に重点を置いた。まず,1点目は卒業研究のテーマに必ず実践的な課題を選び,それを実際の授業の中に位置付けて展開してみせることである。具体的には,教材読解のための理論的な枠組みの構築とそれに基づく分析を通して,どのような単元構成を組むことができるかを授業の細案として提示すること。また,それを実施したときに従来の国語の授業とはどのような点で異なり,それが学習者にいかなる新しい視点をもたらすのかを明示することである。こうした観点から,4年次ゼミ学生3名の論文テーマを次のようにした。「ファンタジー教材における複数教材を活用した授業の研究」「南吉童話の教材化に関する研究」「文学的文章の全体構成の把握と理解に関する研究ー物語教材の対比的解釈を中心としてー」。これらの論文は,卒論口述試験の折にもコースの教員からいずれも高い評価を得ることができ,以上のような点に鑑みて,標記の課題は十二分に達成できたものと考える。
【観点2】大学院
大学院修士課程では,1名のゼミ学生の修士論文指導研究を行った。本学生は他大学人文学部からのストレートマスターがだが,中高の国語科教員を志望しており,特に中高生が苦手とする評論文の読解を研究の対象としたいという希望を持っていた。そのため,実際の高校国語科教科書の難解教材文を取り上げ,どのような解釈と説明を行えば,学習者の正確な理解が導けるのかを研究の中心とした。こうした取り組みは本人の教員採用試験における模擬授業でも面接官に注目され,高い評価を得ることができた。また,学習者自身が独力でも学習を行うことができる点なども,上記の点と併せ,優れたポイントとされ,採用試験に合格するという結果を出すことができた。論文化され,その成果が間もなく発表される予定である。
また,修士1年生2名の現職派遣の院生も,効果的な要約指導と文章理解の関連性,PISA型読解力を培うための教材開発のあり方など,実践の場に即した臨床的な研究課題に基づいた基礎的研究を行い,一定の成果を挙げることができた。
その他の教育活動
・ 上越教育大学附属小学校研究協議会研究協力者
・ 平成24年度は富山大学において,学校図書館司書教諭養成に関する科目「読書と豊かな人間性」の集中講義を8月に実施した(4日間)。また,本学においても7月に学校図書館司書教諭関連科目「学習指導と学校図書館」を文部科学省の委託事業として開講し,講師を務めた。また,教育実習においては,学部3年生3名の小学校実習の事前指導と研究授業実施のための教材研究をゼミ生と一緒に行い,研究授業当日は3校の小学校を参観し,実習の事後指導を行った。同じく,学部4年生3名の中学校実習についても事前指導と研究授業で用いる教材の解釈,事後指導などを実施した。また,修士課程2年生のゼミ生についても,学部のゼミ生同様,実習参観,事前事後指導などを実施した。附属小学校においては,5年目となる高橋栄介教諭との共同研究を進め,昨年度は文学教材のスピンオフに関する成果を発表することができた。また,同教諭とは,附属小学校公開研究会に関しても,研究協力者として活動をともにしており,その過程において公開に関わる助言・指導を実施している。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
活動全般を通して,特筆すべき点としては,新たに他大学において集中講義を担当する講師として,継続的な担当を今後も求められていることや,今年度からは,さらに長岡市にある医療福祉系の専門学校において,「論理学」の講義も担当した。また,教育実習に関しても例年同様の丁寧な取り組みを行うことが出来た。この点については,今後とも継続して行い,こうした活動を通じてより実践的な力を担当の学生に身につけてもらうようにしたいと思う。さらに,附属小学校との共同研究は今後も継続して行い,これからは,こうした取り組みで出された成果を,学部生や大学院生にどのような形で還元していくことができるのかも課題の一つとして考えたいと思う。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成25年11月:興味・関心を重んずる授業と学び方を教える授業,上越の国語教育,pp.90-92
発】(1)平成26年2月22日:Toulmin Model : 要素とその連接をめぐる問題,上越教育大学国語教育学会
(2)平成25年11月10日:読書と国語の学力,上越市学校教育研究会学校図書館部門
他】(1)平成25年8月1日:小学校国語科における教材解釈の実際(上越教育大学)
(2)平成25年7月31日:中学校国語科における学習指導の実際と課題(上越教育大学)
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)文学作品のスピンオフに関する研究,代表者:渡部洋一郎(上越教育大学)
(2)児童の国語基礎学力と学習成果の関係,代表者:渡部洋一郎(上越教育大学)
学会活動への参加状況
(1)平成26年2月22日:上越教育大学国語教育学会第66回例会発表, (2)平成25年10月26日〜平成25年10月27日:全国大学国語教育学会第125回広島大会出席, (3)平成25年8月4日:第57回日本読書学会大会出席, (4)平成25年6月15日:上越教育大学国語教育学会第65回例会出席, (5)平成25年5月18日〜平成25年5月19日:全国大学国語教育学会第124回弘前大会出席, (6)日本読書学会常任編集委員(日本読書学会), (7)日本読書学会監事(日本読書学会), (7)稲田大学国語教育学会役員(早稲田大学国語教育学会)
◎特色・強調点等
当該年度は,文学作品のスピンオフと児童の国語基礎学力等について,外部の小学校教員と共同で研究を行った。いずれも基礎的な段階を終え,次年度から継続的に発展的な研究を行う予定である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年11月10日:糸魚川市糸魚川小学校校内研究会講師(糸魚川市立糸魚川小学校)
(2)平成25年11月1日〜平成25年11月30日:上越市学校教育研究会図書館部会講師(上越市教育委員会)
(3)平成25年6月1日〜平成25年6月30日:糸魚川市学校教育研究会小学校部会講師(糸魚川市教育委員会)
(4)平成25年4月1日〜平成25年7月31日:長岡看護福祉専門学校講師「論理学」(長岡看護福祉専門学校)
(5)新幹線まちづくり推進上越広域連携会議駅名等検討部会委員
◎社会への寄与等
活動全般を通して,特筆すべき点としては,富山大学において集中講義を担当する講師として継続的な担当を今後も求められていることに加え,今年度からは,さらに長岡市にある医療福祉系の専門学校において「論理学」の講義を担当していることなどが挙げられる。また,教育実習に関しても例年同様の丁寧な取り組みを行うことが出来た。この点については,今後とも継続して行い,こうした活動を通じてより実践的な力を担当の学生に身につけてもらうようにしたいと思う。さらに,附属小学校との共同研究は今後も継続して行い,これからは,こうした取り組みで出された成果を,学部生や大学院生にどのような形で還元していくことができるのかも課題の一つとして考えたいと思う。