畔 上 直 樹(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
出席感想カードの毎回丁寧に教員―各自の受け渡し(学部授業)→毎回の講義への積極性,規律,信頼関係の確保,補足や反応への対応に活用,個別作業を予習,講義中に多く取り入れ,かつ単なる知識注入よりも職業訓練学校的性格の強い本学の根本的弱点としての「大学」としてのアカデミズムの基本作法そのものの定着(すなわち専門性云々以前の基本的土台の構築)に徹底的につとめ,成績もそのような観点から多角的な評価をおこなった。
【観点2】教育の達成状況
進学や就職などの卒業(修了後)の進路状況から判断してかなり高い水準で達成できている。
研究指導
【観点1】学部
なんでもかんでも臨床的実践力云々といった実業訓練学校的性格がどうしても強くならざるを得ない本学において,どうしても弱くなってしまう,もしくは擬似的なものになってしまう「大学」として専門性獲得,それもその大前提となる,実学的な実技テクニックでは決して身につかないアカデミックな思考力,行動力といった「学士力」の中核を獲得するためにあらゆる授業機会を利用しているが,特にゼミでは理解と云うよりは個別の体得に重きをおいた文字どおりのトレーニングにつとめ,そのはじめから個々の卒業論文作成を徹底的に意識させた指導につとめ,その専門性をむしろ通じてその土台となり柔軟な応用力となるアカデミックな力,それ自体がみにつくように心がけた。
【観点2】大学院
十分な「学士力」それ自体をほとんどみにつけないまま入学してくる院生の現状において,臨床云々の実業訓練学校的性格の強い本学で,学部以上に「大学」として,専門性の大前提となる,実学的な実技テクニックでは決して身につかないアカデミックな思考力,行動力といった「学士力」の中核を,擬似的・不完全ではないかたちで獲得するための厳しい指導をあらゆる機会にことさら意識的にすすめている。特にゼミではまったく妥協しないアカデミックな指導をおこなうことで,表層的でない本当の意味での専門性をみにつけさせることに力を注いだ。
その他の教育活動
・ 長岡市教育センターから,教員研修講座として依頼をうけ,学習指導要領で新たに対応を求められている小学校中学年「昔からの建造物」について,どうすればよいか,見る視点,考え方について具体的な講義をおこなった(2013.6.27)。
・ 教育実習委員として各中学校をまわり,現場の状況把握と意見聴取,実習生の指導にあたった。
特色ある点及び今後の検討課題等
徹底的に基礎にこだわる。たとえば情報の集め方の出発点の注意や,専門書を読む際方法,学術的に使用される日本語と日常的なそれの決定的相違の意識化等々。こうしたことをあらゆる機会に積み重ねてきた結果,例えば自コースの卒業論文とその作成状況をみると,それまでにくらべあきらかに改善がみられ,全体的な底上げに大きく貢献したと認められる。ただし,さらに水準を上げるには,現在のやり方をさらに強化継続し,同時に教員相互の連携をもっと意識的にすすめる必要な段階である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成26年3月:斐太歴史の里の文化史 : 鎮守の森の文化財と斐太神社を訪ねて(共著),妙高市教育委員会
論】(1)平成26年3月:地方神社からみた「国家神道」,『近現代日本の宗教とナショナリズム―国家神道論を軸にした学際的総合検討の試み』(平成23〜25年度 科学研究費補助金(基盤研究(C))研究課題番号:23520079 研究成果報告書,研究代表者 小島伸之 ), pp.24-47
(2)平成25年5月:「大東京」形成期の「鎮守の森」と造園学 :「明治神宮モデル」をめぐって (第11回国際神道文化研究会 帝都東京における神社境内と「公共空間」 : 明治神宮造営後の都市環境形成),神園,9号,pp.77-91
発】(1)平成25年12月22日:戦時地方神社行政担い手の特質:滋賀県社寺兵事課長・近江神宮奉賛会主事石川金蔵をめぐって,公開研究会「「『国家神道』の担い手」をめぐる多角的検討」平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「近現代日本の宗教とナショナリズム―国家神道論を軸にした学際的総合検討の試み」(研究課題番号: 23520079 研究代表者:小島伸之)
(2)平成25年10月26日:帰一協会設立と阪谷芳郎:明治神宮造営の背景としての世俗主義相対化論,「公開学術シンポジウム 帝都東京と明治神宮造営―阪谷芳郎から読み解く近代日本」
(3)平成25年9月17日:「村の鎮守」神主の動向からみた20世紀初頭の日本社会,「可能性としての『日本』研究会」(サントリー文化財団)
(4)平成25年6月27日:(小学校3・4年)「昔から残る建造物」を見る視点,長岡市教育センター研修講座
学会活動への参加状況
(1)平成25年10月19日:上越教育大学社会科教育学会・研究大会, (2)平成25年10月12日〜平成25年10月13日:日本史研究会・大会, (3)平成25年5月25日〜平成25年5月26日:歴史学研究会・大会
◎特色・強調点等
地域の歴史にかかわる研究であり,特に社会常識的に昔から変らぬもの,伝統的とみなされるものがいかに歴史的に形成されてきたか,それもごく最近に形成されてきたことを明らかにする性格の研究が中心なので(鎮守の森の過去の姿の復元等),(1)学習指導要領の改定にともなう郷土愛,身近な歴史的事物への教育現場での要求に効果的な対応がもとめられる状況に即応でき,かつ(2)そのような性格の論文発表に対し,専門家のみならず,ウェブ上の市民的反応として,「歴史学の効用」として積極的にうけとめられるなど,まさしく現代社会に自身の研究成果の発信が強く貢献しうることを痛感した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年8月20日:教員免許状更新講習 地理学・歴史学
(2)平成25年6月27日:長岡市教育センター研修講座(小学校3・4年)「昔から残る建造物」を見る視点(長岡市教育センター)
(3)八王子市史編集専門部会近現代史部会専門調査員(八王子市史編集委員会)
(4)鳥取県新鳥取県史編さん委員会委員(鳥取県)
(5)新鳥取県史編さん専門部会委員(鳥取県)
(6)羽村市文化財保護審議委員(羽村市教育委員会)
◎社会への寄与等
地域の歴史を住民自身が地域の形成発展の基礎としていかに把握していくかにかかわった形での貢献が特にできた。そのなかでも強調したいのは,妙高市教育委員会とともに今回編さんした地域の歴史書『斐太歴史の里の文化史』作成において,地域の氏子が自身の産土神社を調べ記述することをベースとし,その結果を書籍に反映させるとともに,調査結果を分析の基礎ともした大規模な新しい試みを実現できた点である。