谷   友 和(講 師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
理科における考察力や,生物の観察力を養ってもらうべく,野生植物や栽培植物の観察などを通じて,生の生物材料に触れる機会を多くするように努めている。成績評価に関しては,テストまたはレポートを課しているが,講義で説明したことをベースに,学生自らが考察して答えを導出するような問題や課題とすることで,理科における考える力を身につけてもらいたいと思っている。
【観点2】教育の達成状況
受講者の多くは卒業後に教員となっているが,新卒時に採用試験に合格できない者も多い。このことから,教員採用試験に一人でも多くが合格できるように,また,将来教員になった時に必要な知識をつけてもらえるように,講義中に基礎学習事項の確認や,要点の整理を行うことを心がけている。講義内容に関連した教員採用試験問題を解かせて内容の定着を図る試みも行っている。このような取り組みが現時点で功を奏しているかは定かではないが,多くの教員を輩出すべく努力は続けている。
研究指導
【観点1】学部
自らの意思で研究を想起し,失敗をしながら実験・観察を遂行し,客観的に結果をまとめることによって理科の本質がはじめて分かると考えている。本質を知ってこそ,理科教育の実践力が身につくであろう。そのため,学生の興味や関心に合わせて卒業研究のテーマを決め,研究方法を考える上で,なるべく学生本人に思考錯誤をさせることにより,実践的な問題解決能力を身につけてもらうように努めている。また,野外での調査や作業を通じて,野外観察指導の実践力を高めてもらう取り組みをしている。
【観点2】大学院
科学研究を通じて,理科における高度な問題解決能力や科学的な見方や考え方を身につけてもらいたい。修士課程の学生は,すでに卒業研究を経験していることを踏まえて,研究における自主性をより尊重するようにしている。具体的には,調査地の選定や,調査方法の確立,調査の研究計画などを自分で立案してもらい,それに対して教員がアドバイスをすることを心がけている。また,自分の研究に関する英語の文献講読を通じて,科学の国際性や科学研究の歴史についても意識してもらうようにしている。免許プログラムの学生においては,研究が過度な負担にならないように配慮している。
特色ある点及び今後の検討課題等
現行の学習指導要領においては,野外観察や実験を重視し,自然の事物・現象を科学的に探究する能力の育成について記されている。しかしながら,野外での植物観察や理科実験に苦手意識を持つ小・中学校教員は少なくないと見られる。そのため,教室の授業だけでなく,野外での植物観察や小・中学校の授業で役に立つ教材を扱った実験をなるべく行うようにしている。今後は,学生が理科に好奇心を見出し,理科に対する心理的抵抗を緩和するような教育活動の方法を模索していきたい。
 
<研究活動>
論】(1)平成25年7月:「動物の体のつくりと働き」に関する総合的な理解に影響を及ぼす諸要因の因果モデル −直接経験的及び間接経験的な観察・実験を起点として−,理科教育学研究,54巻,1号,pp.71-81
発】(1)平成25年6月:ウバユリ・オオウバユリの個体サイズ変異と発芽特性,植物地理・分類学会2013年度大会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)草本植物の道管液の流速計測研究を通したCST養成プログラムの開発,代表者:長谷川敦司(北海道医療大学)
学会活動への参加状況
(1)平成25年5月31日〜平成25年6月2日:植物地理・分類学会・2013年度大会
◎特色・強調点等
北日本の多雪地域に生育する林床植物の生態研究を行っている。特に,北日本で個体サイズが大型する草本植物の成長メカニズムを対象としている。積雪の多い上越地域はこのような研究の適所と言える。日本海型の気候は独特の森林生態系を育み,その生態系は里山林を通じて人里に森の恵みをもたらすと共に,森から河川への水や栄養塩の供給などを通じて,日本海沿岸地域の文化や生活に影響を及ぼしてきたと考えられる。雪と植物の関係を題材にした,地域密着型の理科教材研究も行っていきたい。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年8月30日〜平成25年8月31日:平成25年度上越教育大学公開講座 理科野外観察指導実習E(身近な植物)(上越教育大学)
(2) 平成25年7月31日:平成25年度上越教育大学教員免許状更新講習 理科教材(上越教育大学)
◎社会への寄与等
上越教育大学公開講座の講師を務め,上越地域の植物の分類や生態について市民の方,および現職教員に概説し,上越地域の自然環境について学ぶ機会を提供できた。上越地域の自然の特色について一定の理解をしていただけたものと認識している。また,教員免許状更新講習においては,小・中学校の現職教員の方に野外観察に関する教材や機器,身近な植物の分類について学んでいただく機会を提供できた。これらの活動を通じて,ある程度の教育的貢献ができたものと受け止めている。