時 得 紀 子(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
附属小・中学校における実践的研究とかかわりながら,その成果を授業にも反映することを努めた。授業人数を極力少数とし,初等音楽科指導法では,グループに分けた形態をとることで,学生・院生へのきめ細やかな指導に配慮した。
成績評価に関しては,個々の学生・院生の能力に応じた対応を心がけ,毎回の授業後のコメントカードを活用し,個に対応した向上がはかられた。
【観点2】教育の達成状況
大学院を修了生(特に現職派遣教員)においては,修了後も同じテーマにおいて継続的な研究を試みている例が見られる。筆者は,本学研究紀要に院生と共著をまとめて掲載した。これを機に修了生が論文や研究会を通じてその成果を発信し続けている。学部卒業生も,「音楽づくり」の領域を卒論にまとめた実績を現職として小学校音楽授業において実践成果をあげている。
大学院では,大都市(首都圏)への受験を含む,郷里への採用試験受験を促した。また,現職教員においては,修了後も同じテーマにおいて,継続的な共同研究を試みている。この他,平成25年3月,免許プログラム院生と本学研究紀要において共著を発表した。
研究指導
【観点1】学部
他教科・領域等とかかわる音楽学習を試みることで,子どもの創造性・関係力・課題解決力など多様な力を培うことをめざす授業の研究,具体的には,米国の「音楽づくり」の実践映像,カリキュラムをもとに,音・音楽と子どもの創作を促すための手立てを実践的に修得させた。
総合芸術の観点からの有効な音楽指導法について,初等・中等教育現場への参観を通じて臨床から体得,把握させることに留意した。また,科研でも調査を進めている,創作表現活動の評価基準を活用し,実際の授業でどのように評価していくかについても,専門的な見地から指導を行った。
【観点2】大学院
音楽づくり(創作)の活動を取り入れた学校音楽のカリキュラム開発について,芸術教育カリキュラムを総括的・包括的に捉える米国の実践に示唆を得て,我が国における学校音楽の活路を探る実践の修得をめざした。具体的には,ドイツのオルフ・メソード,スイスのリトミックを応用した国内外の実践事例を提示しながら,カリキュラム構成や授業場面の映像などを手掛かりに模索させた。
県の内外で実施されている,講習会(例 リトミック指導法,音楽づくり)などにかかわる研修に共に参加・受講することに努めた。最先端の実践的な研究では,指導法の取り組みにおいて,新しい発想が提案されている。これらを実践的に学び,講義やゼミで分析の討論を展開した。このように机上の学びのみならず,講習などを通じての体得は,より高度な指導法の体得や成果と課題の探究に生かすことができたと捉える。
その他の教育活動
附属中学校ミュージカル発表会に向けた実践的指導附属中学校指導・助言者,3年生の実践に関わり,公開研究会への研究協力も行った。ミュージカル上演は17年目の「学校伝統文化」と同校が位置付ける重要な行事である。2012年7月国際音楽教育学会(ギリシャ)では,同校との共同研究成果を発表,国際的にも高い評価を得た。生徒の制作過程や舞台上演には,学部・院生を伴って授業観察に努めた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
課外活動顧問は,アカペラサークル,ストリートダンス,MMS(モダンミュージックソサェティ)を担当した。これらのサークルは,地域貢献度が非常に高く,これらの支援につとめた。
附属学校園における指導・助言等では,附属中学校の学校伝統分化である,ミュージカル制作の助言指導にかかわった。また,この実践の成果を附属学校の教員とともに「日本音楽教育学会」全国大会で発表した。
附属中学校のミュージカル制作,あるいは附属小学校の音楽集会は全国的にも高い評価を得ている,全校を挙げた表現活動である。本格的な取り組みで定評のあるこれらの実践を分析し,学校マネジメントと表現活動という視点からも,初等科音楽,中等科音楽にかかわる全学的な授業においても取り上げている。映像の活用をさらに取り入れることで,場面ごとに着目した分析を可能にし,学部生や院生により考察を深めさせることができたと受け止めている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成26年3月:「小・中学校における総合表現活動をめぐって」 Musicking Musically 教科内容構成「音楽」(共著),上越教育大学
(2)平成26年2月:「総合的な学習の時間と音楽科」学習活動例『ミュージカル制作に取り組む活動事例から』最新 中等科音楽教育法 中学校・高等学校教員養成課程用(第5版)(共著),音楽之友社
(3)平成25年4月:上越教育大学学生のための「音楽」(共著),上越教育大学芸術系コース音楽
論】(1)平成26年3月:音楽表現を取り入れた外国語活動をめぐる一考察 : 中等教育における実践事例をもとに,上越教育大学研究紀要,33巻,pp.283-293
(2)平成25年7月:(邦訳)日本の音楽科授業における協働学習の有効性:音楽と諸芸術領域を関連させた実践から,国際音楽教育学会 第8回アジア大会,ISME Asia-Pacific Regional Conference 2013 Singapore: 8th APSMER (Asia-Pacific Symposium on Music Education Research),No.43,pp.2-12
発】(1)平成25年10月:総合表現活動によって培われる多様な力(2)−「人間」「社会」への洞察力を育む視点から−,日本音楽教育学会 第44回弘前大会
(2)平成25年7月:☆ Effectiveness of Collaborative Learning in the Japanese Classroom:Integrated Study of Music with Other Arts,ISME Asia-Pacific Regional Conference 2013 Singapore: Full Paper Proceedings of the 8th APSMER (Asia-Pacific Symposium on Music Education Research)
(3)平成25年7月:中等教育における総合表現型カリキュラムの実践−生徒に培われる多様な力に着目して−,日本カリキュラム学会 第24回上越大会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)総合表現活動の理論と実践,代表者:時得紀子(上越教育大学)
(2)修士レベルにおける創作表現のための音楽科教員養成プログラムの日米共同開発と評価,代表者:時得紀子(上越教育大学)
(3)地域における学校の特色を生かした総合表現型カリキュラムの開発−大手町小と附属中の伝統的な取組への支援−,代表者:時得紀子(上越教育大学)
国際研究プロジェクトへの参加状況
(1)Integrated Arts Curriculum for Students: Cultivating Communication Skills,代表者:Noriko TOKIE(Joetsu University of Education)
(2)Integrated Music Education ,代表者:Markus Clovjecsek(University of Switzerland)
(3)MMADD(Music,Media Art, Art ,Drama, Dance) Progect,代表者:Deirdre E. Russell-Bowie (University of Western Sydney)
(4)大学との協働プロジェクトによる現職教員研修のプログラム開発−初等・中等教育における表現活動に着目して−(シンガポールにおける芸術教育、特に音楽学習と他教科・領域の統合推進の現状とその課題について)代表者:時得紀子(上越教育大学)
学会活動への参加状況
(1) 平成26年3月1日: 日本音楽教育学会北陸地区例会(上越教育大学), (2)平成25年10月:日本音楽教育学会全国大会(弘前大学), (3)平成25年7月:日本カリキュラム学会(上越教育大学), (4)平成25年7月 : 国際音楽教育学会アジア大会(シンガポール国立研究所)
外国における研究の状況
(1)平成25年7月〜平成26年3月:Singapore Effectiveness of Collaborative Learning in the Music Classroom
◎特色・強調点等
「スタンフォード大学 デザインシンキング基礎講座」を受講(2013年12月 於:東京)。この講座で学んだ,デザイン思考の発想を学部及び大学院の講義に取り入れた。また,科研研究においても,デザイン思考を活用した。
本学国際交流事業の補助金を獲得し,シンガポール国立研究所にて,教員研修の現状を視察訪問した。その情報を生かし,我が国の音楽教員の研修会等において,オルフやダルクローズのメソードを活用することの意義を研究活動全般において推進することに努めた。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年8月〜平成26年1月:音楽科特別講座(前期)(リトミック研究会)
(2)平成25年8月:教員免許状更新講習「音楽科の教材研究と指導法A」
(3)上越音楽教育研究会理事(上越音楽研究会)
◎社会への寄与等
第3回新潟産学官連携フォーラム及び交流会に出席(2013.11.21)。パネリストである附属中教員による研究成果報告等について上越,柏崎等,地域の関係者とともに情報交流を行った。また,後日リージョンプラザにて開催された,日本海資源をめぐる講演会にも出席し,地域資源の開発と教育の連携についての可能性について情報交換した。