自己点検・評価の対象期間: 平成28年 04月 01日 〜 平成29年 03月 31日
 
白岩 広行
(講師)
 
<教育活動>
 
 授  業
 【観点1】教育内容・方法面での取組
毎回の授業時に受講生からのコメントを求め、翌週の授業でコメントに対する回答をおこなったり、受講生の興味に応じた授業を組み立てたりする取り組みをおこなった。また、シラバスないし初回の授業で評価の観点を明確に示すことで、成績評価の基準についての透明性を確保するように努めた。
 
 【観点2】学修成果の状況
「観点1」に示したような取り組みで、日本語学に関する受講生の興味をできうるかぎり引き出した。担当の授業科目は中学・高校の「国語」の免許に関わるものが多いが、国語の教員であっても、文法や音声などの言語的な知識は苦手な場合も多い。基本からやさしく指導した結果として、言語的な事項に対する苦手意識をとりのぞき、日本語学の面白さを知ってもらえたと感じている。将来受講生が教壇に立ったとき、自信を持って授業を展開するための基礎が身についたと考える。
 
 研究指導
 【観点1】学部
3・4年次の学生には、希望にあわせて、類義語の比較、移動動詞の運用方法、依頼表現の使い分け、古典語の基礎語彙、学生の地元(石川県加賀地方、新潟県阿賀北)の方言に関する研究指導をおこなった。学生自身の自由な知的好奇心を生かす形で調査や分析がおこなえるように配慮した。これによって、教員としての力の基礎になる、自ら探求する姿勢を身につけることができたと考える。また、生活面の助言なども、指導教員としての権限の範囲内でおこない、各人に社会人としての生活力が身につくよう気を配った。 2年次の学生には、自身の卒業論文執筆にむけて、興味のある分野の先行研究を整理し、自身の研究の焦点をしぼるよう指導を進めた。
 
 【観点2】大学院(修士課程,専門職学位課程,博士課程)
修士2年の学生を2名、1年の学生を2名、指導した。修士2年の学生のうち1名については、小説作品における吃音者の会話文に見られる日本語の特徴を、実際の吃音症者の特徴と比較する修士論文を執筆した。もう1名は次年度修了予定であり、『新明解国語辞典』と『岩波国語辞典』の例文に見られる人間の描き方の対照をテーマに研究を進めている。1年の学生2名は留学生であり、それぞれの母語にあわせて、日本語とモンゴル語の慣用句の対照研究、中国語の助動詞「会」と対応する日本語表現の比較に関する研究を進めている。それぞれの観点から日本語ないし母語の特質に迫る内容であり、各自にとって必要な知見や探究の方法が身につくよう、本人の自主性を重んじつつ指導をおこなった。具体的には、先行研究の整理、調査の実施、データの整理、論文の執筆などについて、全般的な指導をおこなった。
 
 その他の教育活動
・通常の授業や研究指導以外の教育活動としては、指導生の教育実習先訪問などをおこなった。なるべく指導生の研究授業の日程にあわせ、実習先の小学校を訪問して授業を見学し、見学後は各指導生に個別の簡単な講評と指導をおこなった。 卒業後に納得のいく進路に進むのは大事なことなので、授業中にも、授業内容とは別に教員採用試験に関する情報を紹介するなどのことを心がけた。
・また、附属小学校の研究授業の協力者として、研究会にむけた打合せ、研究会当日の講評などをおこなった。
 
 ◎特色ある点及び今後の検討課題等
特色ある点としては、研究分野が日本語学であることと関連して、留学生との交流が多く、担当の授業を留学生が受講することがあった。日本人学生と留学生の双方にとって、それを生かせる時間となるよう、異文化交流の意味合いを持たせた演習発表の時間を設けるなど、配慮をおこなった。
 
 
<研究活動>
 
 研究成果の発表状況
  論】(1)平成28年10月:「繋辞動詞の方言差」(共著(筆頭著者)),『日本語文法』第16巻第2号,pp.94-110
    (2)平成29年3月:「大学の日本語学教科書と小学校の国語教科書 ―小学校教員に最低限必要な知見を考える―」(単著),『上越教育大学研究紀要』第36巻第2号 pp.505-518
    (3)平成29年3月:「鹿児島県甑島里方言の終助詞」(共著(筆頭著者)),『阪大日本語研究』第29号 pp.187-215
  業】(1)平成28年7月:「国語教育はグローバルだった」(単著),『教育創造』(上越教育大学附属小学校)第183号,pp.38-43
  発】(1)平成28年7月:「南東北諸方言の逆使役接辞-arと古典語の「非情の受身」」(単),科研費基盤研究(C)「通言語的観点から分析する逆使役関連形態法の広がり」2016年度研究会
    (2)平成28年11月:「方言記述のためにできること―震災後の福島から―」(単),平成28年度新潟県ことばの会
    (3)平成28年12月:「7時間の談話資料からわかること―福島県伊達市方言の受身関連表現について―」(単),日本語文法学会第17回大会
  他】(1)平成29年3月:『福島県伊達市方言談話資料 ―震災後の生活と語り―』(科研報告書)
    (2)平成29年3月:『福島県伊達市方言談話資料別冊 福島方言の記述にむけて』(科研報告書)
 
 共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
  (1)福島県相双方言の記録と継承を目的とした調査研究(科研),代表者:半沢康(白岩は研究分担者),(福島大学人間発達文化学類)
  (2)被災地における方言の活性化支援事業(文化庁委託事業),代表者:半沢康(白岩は協力者),(福島大学人間発達文化学類)
  (3)通言語的観点から分析する逆使役化関連形態法の広がり(科研),代表者:佐々木冠(白岩は研究分担者),(札幌学院大学経営学部)
  (4)日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成(国立国語研究所共同研究プロジェクト),プロジェクトリーダー:木部暢子(白岩は共同研究員),(国立国語研究所)
 
 学会活動への参加状況
  (1)平成28年04月30日〜平成28年05月01日:研究発表会「バリエーションの中での日本語史」(大阪大学)
  (2)平成28年05月13日〜平成28年05月13日:日本方言研究会第102回研究発表会(学習院大学)
  (3)平成28年05月14日〜平成28年05月15日:日本語学会2016年度春季大会(学習院大学)
  (4)平成28年07月02日〜平成28年07月02日:上越教育大学国語教育学会第71回例会(上越教育大学)
  (5)平成28年07月31日〜平成28年07月31日:科研費基盤研究(C)「通言語的観点から分析する逆使役関連形態法の広がり」2016年度研究会(札幌学院大学)
  (6)平成28年09月19日〜平成28年09月20日:国立国語研究所共同研究プロジェクト研究発表会「格と取り立て」(国立国語研究所)
  (7)平成28年10月28日〜平成28年10月28日:日本方言研究会第103回研究発表会(東北文教大学)
  (8)平成28年10月29日〜平成28年10月30日:日本語学会2016年度秋季大会(山形大学)
  (9)平成28年11月19日〜平成28年11月19日:平成28年度新潟県ことばの会(新潟大学)
  (10)平成28年12月10日〜平成28年12月11日:日本語文法学会第17回大会(神戸学院大学)
  (11)平成29年02月18日〜平成29年02月18日:上越教育大学国語教育学会第72回例会(上越教育大学)
 
 ◎特色・強調点等
科研費採択の研究課題「震災を語る方言談話資料の作成 ―福島方言の記述と震災記録にむけて―」に関して、福島方言の談話資料の整備にむけた取り組み、基礎語彙の収集をおこない、簡易的な文法記述とあわせて報告書にまとめた。また、全国方言における繋辞(断定の助動詞)使用の地域差、鹿児島県甑島里方言の終助詞について記述をおこなった。以上は自身の専門である方言研究に関する成果だが、国語学(日本語学)の知見を国語教育に生かす方法についても考察をおこなって論文にまとめた。
 
 
<社会との連携>
 
 社会的活動状況
  (1)平成28年08月09日〜平成28年08月09日:上越教育大学教員免許状更新講習講師(上越教育大学)
  (2)平成28年07月30日〜平成28年07月30日:平成28年度学校図書館司書教諭講習 講師(文部科学省)
  (3)平成28年04月01日〜平成29年03月31日:平成28年度幼稚園教員資格認定試験実施委員会委員(文部科学省)
  (4)上越教育大学附属小学校 研究協力者
  (5)上越国語教育連絡協議会 顧問
  (6)『日本語研究』第36号(首都大学東京・東京都立大学日本語・日本語教育研究会)の査読
 
 ◎社会への寄与等
  2016年度は附属小学校の研究指導者をつとめたほか、上越国語教育連絡協議会や上越国語同好会に参加して、現場の国語教員との連携に取り組んだ。このような取り組みについては、上越地域内の小中学校教員からも好評を得ている。また、学校図書館司書教諭講習の講師などを務めた。このほか、自身の研究に関する成果は、個人ホームページ等で積極的に発信するよう努めている。