上越英語教育学会第23回大会 |
日時:2019年 7月27日(土) 13:00~17:20 |
会場:上越教育大学 (人文棟3階マルチメディア語学教室) |
1 総会 13:00~13:15 「形態論的気づきを促す医学用語指導教材の開発」 「日本人英語学習者の数詞の尺度含意の計算:英語熟達度の影響に焦点を当てて」
5 閉会の辞 17:20
人文棟は大学メインアプローチを入って一番奥に見える高い建物です。 【事務局】j20195212k@myjuen.jp 杉本亜紀(上越教育大学大学院) (敬称略) |
<<研究発表・実践報告・講話要旨>>
■研究発表 13:20~14:20
飯島博之(埼玉県立大学 保健医療福祉学部 共通教育科)
「形態論的気づきを促す医学用語指導教材の開発」*
本研究は医療系専門職(看護師・理学療法士・作業療法士等)を目指す学生を対象とする医学用語の指導において、「形態論的気づき(MA: Morphological
Awareness)」を喚起する教材を開発し、その効果を検証するものである。Nationは学習者の注意を明示的に語のパーツに引き付けることが、語の意味を想起しやすくする重要な語彙学習方略であり(Nation, 2001)、とりわけ医学分野はMAを高めることで語彙学習が容易になると述べている(Nation, 2008)。筆者はギリシャ語、ラテン語由来のワードパーツ(連結形や接辞)の組み合わせで構成される医学用語の多くは、一見、覚えにくそうに見えるものの、分析的に語の構造を理解することで学習者のMAが促され、単語学習と記憶保持、そして意味の類推が極めて容易になるという自らの経験に基づき、医学用語とMAの喚起を重視した医療系学生のための英語テキストを出版している。本研究においては、医学用語学習に特化した本テキストのPart II、および、その指導のために開発した補助教材についてARCSモデル(Keller, 2010)の観点から考察する。
*本研究は2019年度JSPS科研費 基盤研究(C)「形態論的気づきとブレンディッドラーニングを活用する医学用語学習プログラムの開発」(課題番号:19K00914)の助成を受けて行われている研究の一部である。
周輪裕明 (文化学園長野中学・高等学校)
「日本人英語学習者の数詞の尺度含意の計算:英語熟達度の影響に焦点を当てて」
第二言語習得における数量詞の尺度含意の計算については、Dekydtspotter and Hathorn (2005) 、小山 (2010) 、Minai and Takami (2012) 、Slabakova (2010) 、Snape and Hosoi (2016) などがある。しかし、第二言語習得における数詞の尺度含意の計算については、Snape and Hosoi (2016) と内笹井 (2013) の二つのみであり、数量詞に比べて活発には行われていないのが現状である。
本研究では、日本人英語学習者 (中学生) が英語の数詞を含む文に関して文脈に応じた解釈を行うのか、そしてまた数詞の尺度含意の計算に関してL2英語の熟達度の影響はあるのかを研究課題とした。
■実践報告
14:30~15:10
山﨑寛己 (大阪府松原市立松原第七中学校)
「教科書題材を「自分ごと」にするアプローチ〜主に作文指導について〜」
中学校の検定教科書で扱う本文題材は、あいさつ、日課、趣味などの身近な話題から環境問題や人権問題などの社会的な話題まで様々なものがある。しかし現場ではそれらの題材を用いて「生徒が自分の考えを英語で表現する機会を作る」ことが重要と思いながらも、その機会を十分作れていない実態がある(ベネッセ教育総合研究所, 2015)。その原因として、単元のゴール設定などのカリキュラム・マネジメント不足により、教師・生徒の「いまいち(題材に)入り込めない感」が生まれているのではないかという課題意識を持った。新学習指導要領(平成29年告示)では、4技能5領域を総合的に指導することが求められており、今後ますます生徒が自らの意見を発信する技能(思考力・判断力・表現力)育成が必要となる。上記の課題をクリアし、教科書題材を「自分ごと」として捉えるためのアプローチを生徒作品などの具体例を交えて報告する。
参考文献
ベネッセ教育総合研究所 (2015). 「中高の英語指導に関する実態調査2015」
𠮷井千秋(上越教育大学大学院・新潟県湯沢町立湯沢小学校)
「単元の導入に絵本を用いた外国語活動の在り方~小学校中学年児童のコミュニケーションへの意欲を高めるために~
」
2020年小学校高学年外国語科、中学年外国語活動が正式にスタートする。文科省からも絵本教材が出されたが、その内容と活用の仕方に現場は困惑していた。また、自身の実践においても、子どもがゲームの楽しさにとどまっていて、コミュニケーション自体を楽しむことができていないと感じていた。
そこで、中学年児童の外国語活動において,単元の導入に絵本を用いて場面設定を行い,キーセンテンスを用いて児童とやり取りをしながら絵本の読み聞かせを行えば,活動に見通しをもち,意欲的にコミュニケーションを図ろうとするだろうと考え実践した報告である。
■講話 15:20~17:20
西村秀之(横浜市立教育委員会事務局 学校教育企画部 教育課程推進室 指導主事)
「5ラウンドシステムによる英語授業」
「様々なトピックに対し自分の言葉で伝えられる(自己表現)生徒の育成」ということを大きな目標とし、その目標を実現するために取り入れた授業が、「5ラウンドシステム」になります。
この授業スタイルは、一年間の中で教科書を5巡するスタイルとなります。このスタイルは奇抜なことを行おうというものでなく、目標の実現と共に、以下の要素を考えていく上で考え出されたカリキュラムになります。
○小学校外国語活動との接続(「聞く」「話す」に慣れ親しんできた生徒の学びをどのようにいかしていくか。)
○高校での英語の授業への接続(量、難易度の大きく異なる高校での英語にどのように接続していくか。)
○大量のインプット(「聞く」「読む」)を生徒にしっかり与えること
○何度もスパイラルに繰り返し言語材料を扱っていくこと
限られた授業時数の中で、考えなければいけない要素を考慮しつつ目標の実現を目指し、第二言語習得(実際には日本では外国語環境になりますが)で事実としてわかっていることを授業に盛り込むことを考えました。そうした過程を経て、考え出されたのが「5ラウンドシステム」になります。
*当日は、ワークショップ形式で、実際に5ラウンドの授業を実体験していただきながら、その考え方や進め方の例に対する理解を深められるよう進めていきます。