教職大学院でも大切にしたいこと

(3)「開発的アプローチ」

    「解釈学的アプローチ」は授業改善において,その現状を捉え,改善する出発点として重要ですが,もっと積極的に,例えば,M.Lampert女史の研究*4)のように,学校数学を学問としての数学の活動に近づける授業はどのように可能かや,そこで帰納的な態度が実現されうるか,どのように実現されうるのかについて研究しようとした場合はどうでしょうか。このような意図で為されていない授業をいくら詳しくみても,現状の問題点はみえても,上述の問いにアプローチすることは難しいでしょう。

     このような場合,そのように意図された授業を開発するという視点が必要となり,そのためのアイディアの創出が重要になるわけです。筆者の経験からも,現状の授業をいくら観察しても,その問題点は明らかとなっても,その情報だけからこの問題点を改善し,さらには生徒たちを感動させうるような授業に仕立てる授業デザインを開発することは非常に難しいと思います。

     この点において,「デザイン科学としての数学教育学」の考え方*5)を提唱しているドイツの数学教育学者E.Wittmann氏も,教授と学習の両方の思考実験としての概念的及び実践的変更のための創造的なデザインが数学教育実践の実質的な改善に大きく寄与すると述べています*6)。私は算数・数学教育の「授業改善」に関わる研究においては,授業の問題点を冷静に分析することと同時に,より積極的に新しい実践を開発するという視点が重要なのです。

     できれば,「子どもたちが,そんなことをしたんですか。そんなこともできるのですね。」という授業づくりにも挑戦したいと思っています。


戻る