教職大学院における「研究プロジェクト」の基本構想

     私の研究について,特に,私の研究方法論に焦点を絞って述べたいと思います。というのも,この研究方法論は,私が教職大学院において展開しようとしている「研究プロジェクト」の基本構想でもあるからです。

     私の専門分野は数学教育学です。数学教育学は「算数・数学教育」を対象とした実践学です*1)。従って,現在行われている「算数・数学教育」実践の改善に寄与することは数学教育学研究の最も重要な使命の1つです。私は「算数・数学教育」実践の最前線である「教室」でなされている授業の改善に寄与するために,個々の「教室」をフィールドとして主に現場の数学科の先生と協同で数時間から1単元の授業の開発的・解釈学的研究をしてきました。

     次の図式をご覧下さい。これは私がこれまで行ってきた研究の方法論を図式化して表現したもので,私の研究の全体像を示しています。

     まず,上下に2つの円がありますが,この2つの円は,それぞれ,「開発的アプローチ」と「解釈学的アプローチ」という算数・数学の授業改善のための2つの異なるアプローチを表しています。

     そして,この2つの円,すなわち「開発的アプローチ」と「解釈学的アプローチ」は,外側の大きく循環する円と内側の8の字の循環とによって相互に結ばれています。これらはそれぞれ,研究の「実践的過程」と「理論的過程」を表しており,その中心に「数学的知識の認識論:メタ知識」が位置づいています。

     つまり,「開発的アプローチ」と「解釈学的アプローチ」という2つの異なるアプローチを「理論」と「実践」の循環的プロセスの中で融合し,「数学的知識の認識論:メタ知識」を中心として有機的に結びつけているところに,この研究方法論の独自の特徴があります。

     教職大学院では,「実践的過程」は,主に実習科目である「学校支援フィールドワーク」,「理論的過程」は,学校支援プロジェクト科目である「リフレクション」と「プレゼンテーション」に対応しており,「学校支援プロジェクト」として実現します。


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