\documentclass[a4paper,11pt]{jarticle}



%%AmSTeXの設定%%

\usepackage{amsmath,amsthm,amssymb}

%%%%% AMS Tex の設定 %%%%%%%%%%

\usepackage{amsmath}

\usepackage{amssymb}

\usepackage{latexsym}



%%定理の設定%%

\newtheorem{th1}{定理}

%%ノルム,トレースの設定%%

\newcommand{\trace}{{\rm tr} \,}

\newcommand{\norm}{{\rm nr} \,}



%%21×36文字の設定%%

\pagestyle{empty}

\renewcommand{\baselinestretch}{1.1}

%%%%%%%%%%%% 追加した %%%%%%%%%%

\setlength{\oddsidemargin}{-0.16in}

%%%%%%%%%%%% 42から40に %%%%%%%%%%%%%

\setlength{\textheight}{41\baselineskip}

\addtolength{\textheight}{\topskip}

%%%%%%%%%%%%% 45から 44に %%%%%%%%%%%%%

\setlength{\textwidth}{44zw}

\setlength{\columnsep}{3zw}



\def\kintou#1#2{\makebox[#1]{%

  \kanjiskip=0pt plus 1fill minus 1fill

  \xkanjiskip=\kanjiskip

  #2}}

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%

\begin{document}

\twocolumn[%

\begin{center}{\LARGE \bf 超楕円曲線の合同ゼータ関数} \\ \\ \end{center}

\begin{flushright} \kintou{10zw}{教科 $\cdot$ 領域教育専攻} \\

\kintou{10zw}{自然系コース(数学)}\\

\kintou{8zw}{\large 罍  \quad  和 弘} 

\\ \\ \end{flushright}]

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%



$19$世紀以来,ゼータ関数と名のつく特殊関数が数多く定義されている.$L$関数もこの特殊関数の
一種である.これらのゼータ関数,$L$関数は互いに無関係ではなく,相互に関係を持っている.

本論文では,有限体上の超楕円曲線$C$の有理点の個数の評価を目標とし,有限体上の
合同ゼータ関数について述べていく.

合同ゼータ関数は,Riemannのゼータ関数またはDedekindのゼータ関数にならって,
Artinによって導入された.これがきわめて美しい性質を持っていることが$1940$年代に
A.Weilによって予想された.このWeil予想を解くことが,代数幾何学の発展の一つの原動力と
なった.その基本的な性質のうち,有理性および関数等式はF.K.Schmidtにより,
Riemann-Rochの定理を用いて証明された.Riemann仮説ははじめ楕円曲線の場合にHasseに
より証明され,後にWeilによって一般的な場合が示された.この証明においては,与えられた
関数体に対応する代数曲線の幾何学的考察が本質的であった.

また,$1970$年代になってE.Bombieriにより,S.A.Stepanovの考えにもとづいて,
曲線のRiemann-Rochの定理しか用いない初等的証明が与えられた. 

このRiemann仮説は,Riemannのゼータ関数の零点に関するRiemann予想と類似した形になる.
このことがRienann仮説と呼ばれる所以である.

ここまでは,一般の曲線で考えているが,本論文では超楕円曲線$C$に限定して合同ゼータ関数を
考えていく.

超楕円曲線に限定することにより,Riemann-Rochの定理も用いず,指標を用いた初等的な計算に
よって超楕円曲線の合同ゼータ関数の有理性,関数等式,Riemann仮説を示していく.

先にも述べたように,ここで扱うArtinの$L$関数と合同ゼータ関数には密接な関係がある.

一般にArtinの$L$関数$L(z)$は,有限体$\mathbb{F}_{q}$において,
$\mathbb{F}_{q^{\nu}}$から$\mathbb{F}_{q}$へのノルム$\norm_{\nu}$,
トレース$\trace_{\nu}$,$\mathbb{F}_{q}$の乗法的指標$\chi$,加法的指標$\psi$,
多項式$f(X),g(X) \in \mathbb{F}_{q}[X]$に対して,

\begin{eqnarray*}

T_\nu&=&T_\nu(f,g) \\

&=& \sum_{x \in {\mathbb{F}_{q^\nu}}} \chi \left( \norm_{\nu} (f(x)) \right) \psi \left( \trace_{\nu}(g(x)) \right), \\

\beta_\nu&=& \sum_{i_1+2i_2+\cdots+\nu i_\nu=\nu} \frac{T_1^{i_1}\cdots T_\nu^{i_\nu}}{i_{1}! \cdots i_{\nu}! 1^{i_1} \cdots \nu^{i_\nu} }

\end{eqnarray*}

とおいたとき,

\begin{eqnarray*}

L(z)&=&L(z,f,g) \\

&=&\exp \left(\sum_{\nu =1}^\infty  \frac{T_\nu}{\nu} z^\nu \right)=1+\sum_{\nu=1}^{\infty}\beta_{\nu}z^{\nu}

\end{eqnarray*}

と表せる.

また,係数$\beta_{\nu}$は対称式の基本定理によって,

\begin{eqnarray*} 

& & \beta_{\nu}= \\

& & \sum_{u_{1}, \ldots ,u_{\nu} \in \mathbb{F}_{q}} \chi (\widetilde {f}(u_{1}, \ldots ,u_{\nu}))\psi(\widetilde {g}(u_{1},\ldots,u_{\nu}))

\end{eqnarray*}

とも表せる.ここで,
$\widetilde {f}(u_{1}, \ldots ,u_{\nu}),\widetilde {g}(u_{1},\ldots,u_{\nu})$は
$\nu$と$f(x),g(x)$によって定まる多項式である.

そこで,$\chi$を$\mathbb{F}_{q}$の指数$s$の非自明な乗法的指標,
$\psi$を$\mathbb{F}_{q}$の自明な加法的指標とすると,$L(z)$が多項式で
あることがわかる.

さらにヤコビの和を用いると,$L(z)$の次数と最高次の係数がわかる.

合同ゼータ関数については,複素変数$z$のべき級数

\[ \zeta_{C}(z)= \exp \left( \sum_{\nu=1}^{\infty} \frac{\widetilde {N}_{\nu}(C)}{\nu} z^{\nu} \right)\]

によって曲線$C$の合同ゼータ関数$\zeta_{C}(z)$を定義する.

そのとき,

\[\zeta_{C}(z)= \frac{\prod_{\chi^{s}=\chi_{0},\chi \neq \chi_{0}} L(z;\chi,f)} {(1-z)(1-qz)} \]

と表せることがわかる.このことからArtinの$L$関数の性質を調べることによって,
合同ゼータ関数の性質を調べることができる.

このようにして,$l>s>1$を自然数,$s|q-1$,$s_{0}=(s,l)$,
$f(X)$を$\mathbb{F}_{q}$-係数の重根を持たない$X$の$l$次モニック多項式とするとき,
方程式$y^{s}=f(x)$によって定義される有限体$\mathbb{F}_{q}$上の曲線$C$の
合同ゼータ関数は

\begin{eqnarray*}

 \zeta_{C}(z)&=& \frac{1+b_{1}z+\cdots +b_{n}z^{n} } {(1-z)(1-qz)} ,\\

 n &=& (s-1)(l-1) 

\end{eqnarray*}

の形であり,各$b_{i} \in \mathbb{Z}$となり最高次の係数$b_{n}$は

\[ b_{n}=(-1)^{s_{0}-1} q^{\frac{(s-1)(l-1)-s_{0}+1} {2} }\]

と表せることがわかる.

ここで,$s=2$とすれば超楕円曲線の合同ゼータ関数を得る.

さらに,$s_{0}=1$ならば,合同ゼータ関数のRiemann仮説

\begin{eqnarray*}

 \zeta_{C}(z)&=& \frac{(1-\omega_{1}z)\cdots (1-\omega_{n}z) } {(1-z)(1-qz)} ,\\

 n &=&(s-1)(l-1) ,\\

|\omega_{j}| &=& q^{\frac{1}{2}}, \quad j=1,\ldots,n ,

\end{eqnarray*}

と関数等式

\[ \zeta_{C}\left(  \frac{1}{qz} \right)=q^{1-\frac{n}{2} }z^{2-n}\zeta_{C}(z)\]

を得る.

有限体上における超楕円曲線の有理点の個数の評価を得るために,次の基本不等式を示した.

{\bf 定理} (基本不等式)

$s,l$を$2$以上の自然数,$f(X)$を$\mathbb{F}_{q}[X]$の$l$次多項式,その既約多項式への分解を

\[ f(X)=af_{1}(X)^{s_{1}} \cdots f_{r}(X)^{s_{r}} \]

とする.ここで,
$a \in \mathbb{F}_{q}^{\times},f_{1}(X) \cdots f_{r}(X)$は$\mathbb{F}_{q}[X]$の
相異なるモニック既約多項式である.さらに,$(s,s_{1}, \ldots,s_{r})=1$かつ
$q>100sl^{2}$とする.そのとき,アファイン曲線$y^{s}=f(X)$の$\mathbb{F}_{q}$-有理点の
個数を$N$とすれば,

\[ |N-q| \leq 4s^{3/2}lq^{1/2}\]

が成り立つ. \hfill $\Box$

この基本不等式は合同ゼータ関数のRiemann仮説,関数等式の証明にも必要であった.
基本不等式と合同ゼータ関数のRiemann仮説を組み合わせてより良い評価

\[ |N_{\nu}(C)-q^{\nu}| \leq  nq^{\frac{\nu}{2}}, \quad \nu=1,2,\ldots \]

を得る.

最後に,実際に,合同ゼータ関数を計算し,超楕円曲線の有理点の個数を求めた例を挙げた.

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%

\vspace{5mm}



\begin{center}

指  導 \quad \quad 中川 仁

\end{center}

\end{document}