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\begin{document}

\twocolumn[%

\begin{center}

{\LARGE Sofic shifts の表現とその位相共役について}

\begin{flushright}

教科・領域教育専攻\\

自然系コース(数学)\\

佐 野 孝 志\\

\vspace{8mm}

\end{flushright}

\end{center}

]

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1.記号力学系の歴史



記号力学系(symbolic dynamics)は

位相力学系の中の急速に発展している一分野であり、

Jacques Hadamard が1898年に

曲面上の測地流の分布を研究するために、

領域に対応する

記号の無限列を用いたことに始まる。

そこには記号の有限列からなるある有限集合があり、

記号の無限列にはこれらの有限列が表れないことを彼は示した。

後の1920,30,40年代に、

Morse , Hedlund 他により、

多くの状況でこのような

記号の有限列の有限集合があることがわかった。

これらの考えが1960,70年代の

双曲微分同相写像と呼ばれる非常に興味ある写像の族を調べる

強力な数学的道具の発達を導いた。

1967年に Smale は shift spaces を正式に定義し、

full shifts の shift不変な部分集合としてとらえて、

それを subshifts と呼んだ。

1973年に Williams \cite{WilR2} は shifts of finite type 間の

位相共役条件を発表した。

これを契機に位相共役不変量の研究が進み、

1977年に Parry と Williams は

0を除く Jordan形が位相共役不変量であることを、

そして、

同年、Bowen と Franks はある種の有限生成のアーベル群が

位相共役不変量であることを

示した。

また、

1980年に Krieger は dimension group を定義し、

それが shift equivalence の完全不変量であることを示した。

そして、1986年、那須 \cite{Nas4} は

elementary equivalence と strong shift equivalence を

 sofic shift へ一般化し、sofic shifts 間の

位相共役条件を発表した。



2.本論文の概要



本論文の目的は、記号力学系の基本的な内容を説明し、

いくつかの位相共役不変量を示すと共に、

2つの shifts of finite type が位相共役であるための必要十分条件

はそれらを表す行列が strong shift equivalent である

という分類定理が成り立つ(Williams \cite{WilR2})

ことと、

2つの sofic shifts が位相共役であるための必要十分条件は

それらの right[left] Krieger covers の表現行列が\,

right[left] Krieger covers の中でstrong shift equivalent

である(那須 \cite{Nas4})ことを示すことである。

これらは2つの shift spaces が位相共役ならば同じものであると考えて

shift spaces を分類するときの必要十分条件を与えている。

また、 shifts of finite type は sofic shifts であるから、

那須 \cite{Nas4} の定理は Williams \cite{WilR2} の分類定理を

一般化したものである。



次に各章の概略を示す。



第1章では有限個の記号を用いた

両側無限列の集合を full shifts と定義し、

禁止語の集合を用いて full shifts の部分集合

である shift spaces を定義する。

そして、言語、higher block codes、sliding block codes、

位相共役写像、higher block shifts など

記号力学系の基本的な概念を説明する。

次に、

位相力学系として shift spaces をとらえると、

shift space $X$,\ sliding block code ${\phi}$ に対して

$(X,\,{\phi})$ は位相力学系であり、

shift map ${\sigma}_X$ に対して

$(X,{\sigma}_X )$ を shift力学系、

または、記号力学系という。

$\theta : X \to Y $ を写像とすると、

$\theta $ が sliding block code であるための必要十分条件は

$\theta $ が連続であり、かつ、 shift と可換な写像

であることを示す。



第2章では記号力学系の中で本質的な働きを

する shifts of finite type を説明する。

これは有限な有向グラフを用いて表現することができ、

この shift の関する問題はグラフの隣接行列の問題として

表すことができることを示す。

そして、3章で重要な働きを果たす

state splitting と state amalgamation という方法を説明する。



第3章では

shifts of finite type の分解定理(Williams \cite{WilR2})

について述べ、

それらが位相共役であるための必要十分条件は

それらを表す行列が\,

strong shift equivalent であることであるという、

この論文の主要な目的の一つである

分類定理 [Williams]

を証明する。

また、 位相共役不変量として

エントロピー、ゼータ関数などがあることを示す。

しかし、一般に、

2つの行列が strong shift equivalent かどうか

を決めるアルゴリズムは知られていない。

そこでより弱い関係である shift equivalence の不変量を調べる。

この不変量は位相共役不変量であり、

0を除くJordan 形、Bowen-Franks 群、dimension group\,

などがあることを説明する。

また、非負正方行列の Perron-Frobenius の定理と

エントロピーの性質について

説明する。



第4章では shifts of finite type を一般化した\,

sofic shifts と、そのグラフを用いた表現について説明する。

また、sofic shifts のエントロピーに関する性質について

説明する。



第5章では

二部code を説明し、

shift spaces 間の任意の位相共役写像が

二部codes の合成に分解されることを示す。

また、二部ラベル付きグラフを用いて、

sofic shifts 間の任意の位相共役写像 $\phi :X \to Y $\,

に対して、

$\theta :\widetilde{X} \to X$、$\pi : \widetilde{Y} \to Y$\,

が\,right $[$left$]$ Krieger covers ならば、

$\pi \circ \eta =\phi \circ \theta$ を満たす位相共役写像

$\,\eta :\widetilde{X} \to \widetilde{Y}$ が

存在することを含む内容を証明する。

次に、

記号隣接行列における strong shift equivalence を定義する。

これらより、

この論文の主要な目的の一つである、

2つの sofic shifts が位相共役であるための必要十分条件は

それらの right[left] Krieger covers の表現行列が\,

right[left] Krieger covers の中でstrong shift equivalent

であること[那須] を証明する。

また、

推移的な sofic shifts に対しても Fischer covers に関する

同様の内容を証明する。



第6章では finite-to-one code とその性質を説明し、

これを用いて

sofic shifts 間の finite equivelence の概念を定義し、

エントロピーがこれの完全不変量であることを示す。\\



本論文は記号力学系の研究の総合報告であり、

第1章から4章と6章は \cite{LinM} を参考にし、

第5章は \cite{Nas4} を参考にした。



\begin{thebibliography}{99}

\bibitem{LinM}

  D. Lind and B. Marcus,

  \emph{An introduction to symbolic dynamics and coding},

  Cambridge Univ. Press, 1995.

\bibitem{Nas4}

  那須 正和,

  \emph{Topological conjugacy for sofic systems},

  Ergod. Th. and  Dynam. Sys. 6 (1986), 265-280.

\bibitem{WilR2}

  R. F. Williams,

  \emph{Classification of subshifts of finite type},

  Annals of Math. 98 (1973), 120-153 ;

  erratum, Annals of Math. 99 (1974), 380-381.

\end{thebibliography}



\begin{flushright}

指導  松本 健吾

\end{flushright}



\end{document}