心理臨床講座でどのような院生を期待しているかをまとめてみました。新入生のみなさん,また来年度以降の受験を考えているみなさんの参考にどうぞ。 |
現職教員の人なら,これまでの教職経験の中で,指導に困った事例,おもしろいと思った事例など,「こういうことについて深く追究したい」という問題を,明確に持っている人。学部から進学しようとする人なら,すでに卒業論文である程度その問題について追究していて,大学院でそれをどう発展させていくかについての見通しができている人。
こうした人たちは,本分野に向いています。心理学を基礎から勉強してみたいとか,別にたいして興味はないが,文部省がこう言っているので対応しないといけない,というような曖昧な問題意識で入学する人,あるいは,専修免許状や○○心理士の資格がとれる,ということだけで,大学院の目的を勘ちがいして入学する人は,修士論文研究のときに非常に苦労することになります。これは,本分野に限らず,どこに入学しても同じです。
大学院は,基本的に「研究をする」ところであり,その成果を修士論文として提出することが,大学院修了の大きな要件になっています。そのことを忘れてはいけません。
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心理学では,人の行動や思考を,なるべく個別的・具体的に研究します。特定の場面において,特定の人たちはどう行動するか。たとえば,算数の文章題の解決という場面において,小学校中学年の子どもたちはどのような思考方略を用いているか,友人関係に強い不安を示す中学生に,教師がどのような援助を与えたらいいか,というように,具体的にターゲットを絞っていきます。
このように,具体的で細かな問題について詳しく調べるのが好きな人は,本分野に向いています。そんな重箱の隅をつつくような研究は役に立たないと考える人,教育の問題をシステム全体の問題として論じたいとか,社会の病理として幅広く研究したい,というように個人に的を絞れない問題を持っている人は,本分野には向いていません。
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心理学では,実験や調査にもとづいて,実際の子どもの行動を分析・検討しながら,問題にアプローチしていきます。ですから,実際に学校に出向いて実験授業を行ったり,調査を依頼したり回収したり,調査用紙を作成し印刷したりと,けっこう体を動かす作業が必要です。こうした細かな作業をめんどうだと思わない人は,本分野に向いています。
先人の著した文献を静かにひもときながら思索をめぐらすのが好き,というようなタイプの人は,本分野には向いていません。
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心理学では,現実の問題を細かな要因に切り分けて,各要因の影響性を実験的に検証したり,要因間の関連性を検討したりします。影響する要因を分けて考えたり,条件を統制してひとつずつ影響性を実験したりするやり方は,理科実験と同じです。また,条件を少しずつ変えて,どのように結果が変化するかを見たり,対照的な条件から導き出された結果を比較して,両者の特徴を検証したりもします。
こうした要因分析的な考え方が理解できる人は,本分野に向いています。●
効力期待に関しては,分散分析の結果,モデリング条件においてテスト時期との交互作用が有意(F(2,292)=3.156,p<.05)であった。単純主効果分析によれば,中間テストではモデリング群が統制群より効力期待が高かったが,事前・事後テストでは両群に差が見られなかった。説明条件に関しては,有意な主効果が確認された(F(2,146)=7.943,p<.001)のみで,テスト時期との交互作用は認められなかった(F(4,292)=1.394,n.s.)。 |
心理学では,主に統計的分析の手法を用いてデータを分析するので,上のような文章をふつうに読んだり書いたりします。今すぐこの文章の意味を全部理解できる必要はありません(入学後に指導します)が,少なくとも,こういう文章が「生理的に嫌いだ」とか,「見ただけで頭が痛くなる」というような人は,本分野には向いていません。
統計的分析をするためには,ある程度の数学的知識が必要になります。とはいっても,複雑な方程式を解いたりすることはありません。簡単な四則演算を使った計算式を見て(平均や標準偏差,相関係数などです),数字をあてはめながら電卓をたたいて計算できるようにしておくといいと思います。コンピュータから出力された統計指標を正確に読みとったり,それが何を意味しているかを理解するのに,きっと役に立ちます。
電卓で合計を計算しても,そのたびにちがった数字になってしまうような人は,修士論文研究のときにきっと苦労すると思います。
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