■試験問題の解説

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29% !

  『学校実践解析法』の問題分析の結果が,田中先生から届きました。試験問題全体の得点分布と,各問題ごとの通過率が載っています。で,さっそく自分の担当分を見てびっくり。なんと私が出題した5問の中の1問が,通過率29%という,とんでもない悪問。ありゃあ! ショックでした。

  ですので,ここではその悪問を世間に公開するとともに,出題意図について補足しておきたいと思います。(だからといって,悪問が取り消されるわけではないのですけれど)

ひねりすぎた

  さて,試験問題を作るにあたって考えたのは,だれでも解けそうな問題とちょっとひねった問題の2種類を区別しようということでした。このWebページで直前までプレゼン資料を公開していたこともあって,資料を見ただけで解けるような,いわゆる暗記的知識だけを問うのではつまらないと,考えたからです。

  で,3問は簡単問題,2問は授業内容に沿って少し考えてもらうような問題にしました。実際,簡単問題3問のうち1問は,全体の中でも唯一100%の通過率。他の2問も97%,96%でしたので,たぶん授業をちゃんと聞いていれば“楽勝”問題だったのだろうと思います。悪く言えば,当日欠席していても,資料を見れば解ける程度の簡単問題,だったのかも知れません。それについては,私は特に気にしていませんが。

  一方,ひねった問題。まず最初の問題の通過率56%に驚かされました。正解率低っ!! こっちは,もっともらしい記述を飾りつけて本来の意図を隠したとはいえ,資料にも正解につながる記述がちゃんとあるので(問題ではその真逆のことを書いている),70%くらいはいってほしかったのですけど…。

  そしてそのあとの29%です。思わず,他の問題の通過率を確かめてしまいました。不幸中の幸いというか,なんとか最低通過率の不名誉は免れていましたが,最下位グループのお仲間であるにはちがいなく,落ち込みます。こちらは明らかにひねりすぎで,注目してほしいところにちゃんと注目してもらえなかったのが,その原因のようです。では,その問題を載せておきましょう。

(20) シール獲得やコンピュータによる教材提示を「おもしろい」と回答している子どもは,学習意欲が高いとはいえないので,測定する際はきちんと区別しないといけない。

  注目すべきところは,「学習意欲が高いとはいえないので」という部分のみ。あとは正しい記述なのですが,ここだけちがっているのです。これらの例では,たしかに内発的な意欲ではありませんが,だから学習意欲が低いといっていいわけでは必ずしもなく,先生の意図によっては,これも学習意欲のひとつのカタチだろうと,授業ではお話ししました(でも,意欲が向かっている方向がそれぞれちがうので,これらをきちんと区別することは,この場合でも大事なのです)。しかし,授業を聞かずに資料だけ見ると,逆のトーンのようにも見えるのが,この問題のむずかしいところ。出題形式が今年とは全然ちがう昨年度の問題でも,私がお話しした内容と正反対のことを書いてくる人が何人かはいましたので,私はそれを,<授業をよく聞かずに資料だけを見て勉強した人だろう>と勝手に推測していたのですが,今年の結果を見ると,どうも私の方が出題 and/or 資料の記述において,不親切にすぎたようです。

  じつをいうとこの問題,授業の中でいちばん繰り返し説明した,「学習意欲にはいろいろなカタチがあって,何をもって学習意欲とするかは,教師が考える授業の目標によって変動する」という主題を,なんとか問題に組み入れられないかということで作った問題です。授業で何回も繰り返したので,そのまま出題したのではあまりにもわかりやすくなってしまうと思い,文章全体の主張から1歩離したところに,まちがった記述を埋め込んだのです。

  しかし,これが大誤算。文章全体の主張がもっともらしすぎて,細かな部分にまで注意が回らなかったのでしょうか。あるいは,学習意欲=内発的動機づけという,ありがちな固定観念が,授業の理解を妨害していたとも考えられるかも知れません(私のプレゼン資料の記述のしかたも,きっとそうした誤解を助長していたのでしょう)。

  問題がたくさんあったので,1問をじっくり見てという時間もなかったのでしょうし,最初から最後まで私の出題だったら,私の人柄を推測して,みんなもっとひねくれたところにまちがいがあると予想をつけられたのかも知れませんが,残念ながら,事実としては29%という通過率。これがすべてです。来年は,しっかり改善したいと思います。

しつこいですが

  それと,最後に,もう一度繰り返します。

  シール獲得やコンピュータによる教材提示を「おもしろい」と回答している子どもは,たしかに授業に<内発的には>興味を持っているとはいえませんが,だからといって内発的な学習意欲以外の意欲を排除してしまうのは,あまりに狭い考え方で,教師の活動を過度に制限してしまいます。教師が何を目標に置くかによって,これらの意欲も立派な学習意欲と言っていいのです。

  ただし,何でもかんでも学習意欲とひとまとめにしてしまうのも,また教師の選択肢を狭めてしまいます。学習意欲が向く方向性はいろいろなので,それらをきちんと区別しつつ,次の方策を立てることが,もっとも効果的なのです。

  これが,私が授業でお話しした, & この問題で確認したかった内容です。




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