テーマ別編 高等学校 1/8
「アメリカ合衆国の歴史」をどのように教材化するか
筑波大学附属高校 田尻信市
国会議事堂 1.はじめに
 現行高等学校学習指導要領の地理歴史科(以下、指導要領、地歴科と略記する)世界史で、従来と比べての大きな変更点は、アメリカ合衆国の歴史やアメリカ文明の取り扱いが重視されるようになったことである。例えば、「世界史A」大項目(4)の中項目イに「アメリカ合衆国とソビエト連邦」が、また「世界史B」(5)のイに「アメリカ合衆国とアメリカ文明」、(6)のウに「アメリカ合衆国と自由主義諸国」が登場した。『高等学校学習指導要領解説 地理歴史編』によれば、世界史での合衆国史やアメリカ文明に対するこのような重視は「アメリカ合衆国が現代世界で果たしている役割の大きさと、その文明が、様々の価値観や生活様式、科学技術、物質文明を含めて、世界中の人々に広く影響を与えている事実を考慮した」(70〜71頁)ことによる。今日、合衆国史やアメリカ文明の教材化は高校世界史教育にとって重要な課題のひとつになっている。  今夏、米日財団のご厚意により、ペンシルバニア、マサチューセッツ、ニューヨーク州を巡検し、建国や独立ゆかりの地を訪ねて貴重な体験を積むことができた。本稿では、アメリカ建国や独立の地を訪問したさいの印象を報告するとともに、それらの史跡を題材にして高校世界史の「アメリカ合衆国の歴史」の教材化の視点を提示したい。
写真1 合衆国の象徴、国会議事堂
(ワシントンD.C.)アンドリュー・ジャクソン(在任1829〜37年)以来ほとんどの大統領の就任式がこの正面玄関で行われている。
2.建国・独立ゆかりの地からアメリカ合衆国史を見る
 本プロジェクトでは、ワシントンD.C.、ピッツバーグ、ボストン、ニューヨークなど東部の主要都市を訪問することができた。これらの都市はすべて合衆国の母胎となった建国13州の中に含まれる。ここでは、アメリカ発祥の地とされるプリマスなど4箇所をその歴史とともに紹介しよう。
  [1]マサチューセッツ州プリマス:ピルグリムファーザースの移住地(1620年)
  [2]ペンシルバニア州ピッツバーグ:フレンチ・インディアン戦争の激戦地(1754〜1763年)
  [3]マサチューセッツ州ボストン:ボストン茶会事件の舞台(1773年)
  [4]マサチューセッツ州コンコード:「全世界に響きわたった発砲」独立戦争勃発地(1775年)