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1 はじめに
(2)教材化の意義と教材観 パンやうどんの原料になる小麦、味噌の原料になる大豆、缶詰や家畜の飼料となるとうもろこしの多くは、アメリカからの輸入に頼っている。また、米中心だった日本の食生活が変化した理由の一つとして、アメリカからの食文化の伝来が挙げられる。さらに、日本の農業が全体的に衰退化し、生きていくための収入を得ることが難しくなったことの一つにアメリカからの農産物が自由に安い値段で大量に輸入されていることを子供たちにとらえさせていく必要があろう。そして、この問題について自分なりに考えさせていくことも「21世紀の我が国の食と農」について問題解決させていく態度を育てるための過程として必要なのではないかと考える。 ここでの学習は、アメリカの農業と日本の農業を比較させようと考えるが、ただ単に他国の農業の特徴を知るだけでなく、広い農地で大型機械を所有し、大量で安い農産物を作り、日本にも大量に輸出しているアメリカの農業の現状を知ることで、日本の農業の衰退の現状や問題点を明らかにしたり、衰退の理由の一つに海外から食料が大量の輸入されていることに気付かせたりしていくことができると考える。そこで、アメリカの農業について学習する時間を設定することにする。アメリカのとうもろこし・大豆農家を訪問して写した耕地や作物、農業機械、作業の様子の写真を提示して、日本の農業と比較させたり、実際に農家の方に、仕事の内容・収入や農業の利点・今後の経営の見通し・後継者・なぜ大量に作るのかについて聞き取り調査を行い、聞いたことを子供たちに提示したりすることで、日本の農業の実態や日本の食と農がアメリカの農業と深く関わっていることに気付かせていくことができるであろう。また、貿易問題や日本の農業の衰退の問題について真剣に考え解決していこうとする意欲を育てるきっかけになるのではないかと考える。
2 単元の指導計画
(2)ねらい ミネソタ州のとうもろこし、大豆農家の仕事の様子の写真や聞き取り資料をもとに、アメリカの大規模農業の特色を日本の農業と比較しながらとらえるとともに、アメリカの農業と自分たちの食生活とのかかわり方について考えることができる。 (3)児童の実態 小学校の社会科の学習の中で、アメリカを含め海外の国の学習を行っていない。従ってアメリカ合衆国についての知識はテレビや本などによって得ているので、一人一人によって差がある。我が国の農業の学習については、本単元の学習の中ですでに行っている。農業(稲作や野菜作り)に携わる人々の工夫や苦労を認識するとともに、農家や耕地面積の減少など、日本の農業の衰退化の実態を認識している。しかし、アメリカ農業とのかかわりという点での農業の認識は十分とは言えない。そこで、子供たちに共通の認識や課題意識をもたせるために、現地調査に行く前に事前指導を行うことにした。 (4)前時の指導の構想 事前指導では、まず子供たちが日頃よく口にしているパン、とうもろこし、牛乳、ソーセージを提示し、それぞれの食料品の原料をたどった後、小麦、とうもろこし、大豆など日本人が口にするものの多くは、アメリカから輸入されていることに気付かせる。そして、提示した食料品の原料となっているアメリカの小麦ととうもろこし農場の写真を2枚提示し、その写真を見ながら、感想や疑問点を書くことで学習の課題や見通しをもたせていく。 (5)本時の指導の構想 導入では、アメリカ人の食生活や見学してきた場所、訪問した農家や家族の紹介などを地図や写真を使って簡単に行う。この農家の就業状況も合わせて行う。農家のイメージをつかませる。 展開では、事前の指導の中で、子供たちがもった疑問を調べる形で授業を進めていく。作物の種類、耕地面積、仕事の内容、収入などについて調べてきたことをまとめた資料と写真をもとにグループごとに調べる。そして、アメリカの農業と日本の農業を比較してみて、気付いたことを話し合いながら、アメリカの大規模農業の様子と日本の農業が衰退している現状を認識させていく。 終末では、農家の出荷した作物の行方について説明し、日本への輸入の現状を把握させる。グラフなども提示し日本の作物の自給率が低いこと、アメリカからきた作物と日本の作物の値段を比較し、日本では安いアメリカからの農産物を多く買い、そのために日本のものが売れなかったり、農業が衰退化することもあることに気付かせ、自分たちの食生活とアメリカの農業そして日本の農業とのかかわりについて考え、6年生の公民的分野の国際理解教育につなげていく。 <本時の展開> |
主な学習活動 | 教師の支援 | 評 価 |
@アメリカの訪問地の位置を確認し、アメリカの食生活や訪問農家のおおまかな紹介や家族構成、就業状況などについての話を聞く。 Aアメリカの大規模農家の仕事の様子を写真で見たり資料で読んだりし、今まで学習してきた日本の農業と比べる。 B作られた作物の行方の探る中で、日本人との食生活との結びつきに気付き、食料の輸入と食生活、農業とのかかわりについて考える。 |
○地図や写真などを使って紹介する。 |
○アメリカの農家の様子を写真で見たりインタビューの資料を読んだりしながら日本の農業とアメリカ農業と違いを明らかにできたか。 ○アメリカの農業と自分たちの食生活や日本の農業とのかかわり方について考えることができたか。 |