ピッツバーグ:家庭生活
上越教育大学学校教育学部附属中学校
教諭 澤田 靖

1 はじめに
 ピッツバーグにて私と附属小学校の常山氏は近郊に住むHopson(ホプソン)夫妻のお宅にホームステイすることになった。家族構成は夫妻、6歳の息子Hannebal(ハニバル)、1歳の娘Hammiba(ハミバ)の4人家族。
 ホプソン氏はDuquesne(デュケイン)大学の助教授でニューヨーク生まれ、奥様は育児休業中、ザンビア生まれで父親が国連職員だったとのことである。
 初対面の時、ホプソン氏が黒人の方で、ピシッとスーツをきめていたのであまりの格好の良さに驚いてしまった。また彼は大変な親日派で、かつて訪日経験がある。建て売りの新居を購入して、引っ越しの最中という忙しい中、大変お世話になった。

2 家庭生活
(1) 食生活
 飲用水はスーパ一でフィルターにかけた物を買ってきてガロンボトル(約3.8 リットル)に入れて使っていた。値段は高くはなかったようだ。水道水そのままでも良いのだが、やはり健康とおいしさが理由だそうだ。
 夕飯の時に私と常山氏で日本のカレールーを用いてカレーライスを作った。息子のハニバルには日本の中辛は少々辛すぎたようだが、夫妻は喜んで食べてくれた。
 我々に気を使って家族全員で箸を使って食べたのだが、カレーライスは箸では少々きつかった。また骨付きリブを食べたのだが、奥さんは事前に生姜、エョクマム、醤油、シエリー酒で下味をつけてから外のグリルで焼いていた。味は最高であった。
(2)宗教
 宿泊のホテルから最初に連れられていったのは近くの教会であった。実はホプソン氏は11時頃教会を抜け出して我々を迎えに来てくれたのだ。
 そこはプロテスタント系の教会で、週の終わり(土曜日)に礼拝が行われるのだそうだ。集まった大半が黒人の方々であった。6歳のハニバルがブレザー、スラックス、ネクタイ姿でドネイシヨン(寄付金)集めに回っていた。
 小学校1年生とは思えないしっかりとした態度で寄付金を募っていたのが印象的だった。幼いときから毎週土曜日3時間以上教会で過ごし、そして教会における自分の役割をこなすことで深い信仰心のみならず礼儀と社交性を身につけているのではないかと思った。はなはだ勝手な解釈ではあるが、世界大会など他国の選手と競うときに、自分の実力を出し切るための精神的な要素の一つにこの宗教があげられるのではないだろうか。礼拝終了後は多くの方々が気軽に話しかけてくれて、似たような自己紹介と訪米の目的を10回以上繰り返し、握手をした。
(3) 余暇
 余暇の過ごし方は家庭状況による。アメリカ人全体の傾向として、お金を貯めるという概念は薄く、カードで物を買ったり余暇の費用などをどんどん支払い、給料でそれを補填すると考えられている。しかしホプソン家はお金を貯めるという意識が強い。新居を購入したので「次は新しい車ですか」と尋ねたら「いや、車は私たちにとって足と同じ。だからそんなに良い物に乗るつもりはない。それよりもお金を貯めてもっと良い家に住みたい。」という答えが返ってきた。
 我々は二日目の午後に大リーグ観戦に連れていってもらったが、ハニバルは一度しか、また奥様は行ったことがないそうだ。
(4) 黒人として
 はっきりと差別について尋ねたわけではない。しかしホームステイ中2回ほど、私の勘違いかもしれないが、おかしなことを言われたり、されたりしたことがあった。私自身も、恐らく東洋人として、滞在中1度差別だと感じたことがあった。
 文化のモザイクの国、アメリカ。近くに寄るとその民族の独自性が見え、少し離れるとそれそれの独自性が調和して大きな文化を作っていると言われている。しかし白人というマジョリティの中で、マイノリティとして暮らすためにどのようなことを意識すればいいのだろうか。「負けない」、「共存」、「改善の推進」。キーワードは何なのだろう。またそんなことを考えること自体、マイノリテイとして心が狭い証拠なのだろうか。

3 最後に
スリーリバーズスタジアムにてホプソン氏、ハニバル、常山氏と
 幸いにして、ホプソン氏とは今後もE-mailで連絡を取り合うことができる。口ではきけなかったことについて、失礼にならないようにきいていきたいと思う。また専攻が教育学の評価ということで、特にアメリカでは先進的に行われている総合的な学習の評価について、示唆をもらいたいと考えている。


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