1. 維管束の観察

問題点:茎や根の横断面切片がうまく切れない、葉はもっと切りにくい。
    顕微鏡下で、切片が厚いと黒い影となって何も見えない。

そこで、
○細部を見せたければ、よい切片を見せる必要がある。

 茎や根は染色した永久プレパラートを準備したほうがよい。
 たとえ観察できるような切片が切れなくても、切片づくりの作業は必要である。
 葉は、葉緑体の観察のためには、生の材料を切る必要がある。
 ピス(ニワトコの髄-最近は発泡スチロールの様な代用品が売られている)にはさんできると、手を切る心配もなく、葉のように薄いものや細い茎などを切りやすいが、ニンジンの根を使うとよい。(どこにでもある、安い、堅さが適当で切りやすい、切片を水に浮かべると、茎や葉の緑とニンジンの赤で区別しやすい)。
 うまく切れないときは、スライドなどでよい切片を見せる必要がある。
○実体顕微鏡があれば、おおまかな位置や形がわかる。
 少し厚切りの切片(平らに-軸に直角に切れれば、5mm程度の厚さで十分)をつくればよい。  
○ただし、実物は教科書の模式図の様に見えない
 ほとんどの茎や根では、2次木部の発達で真正中心柱の形がわかりにくい。
 師管はよほど熟達しなければ識別できない。材料を選ぶ必要がある。
<材料>
茎: 直径 3〜5 mm 程度の太さで、適当な堅さのもの(ニンジンの根ぐらいか、それより少し堅いくらいが切りやすい)がよい。
 双子葉植物ではホウセンカの茎がよく使われるが、花をつける前のセイタカアワダチソウやアメリカセンダングサなどが意外に切りやすく、並立維管束の分布状態が見やすい。しかし、師部や形成層の組織観察となると、教科書の模式図のようには見えにくく、教科書の図のように見える材料となると、センニンソウ(クレマチス、テッセンでもよい)がもっとも優れている。
 単子葉植物は、ツユクサ、ススキ、アスパラガスなど良い材料がたくさんある。太めの茎なら、切り口を見るだけで、肉眼やルーペでも維管束の配列が観察できる。カヤツリグサを材料にすると、堅さや太さが適当であり、また、茎が三角柱のため、丸い茎の双子葉植物と一緒に扱っても、切片の形で区別できて具合が良い。

葉: 教科書どおりならツバキがよいが、他には、マサキ、カナメモチ、ユズリハなどのよに、厚みのあるものが切りやすい。ツルニチニチソウ、カーネーションもよい材料である。木の葉の方が柵状組織と海綿状組織の細胞の形の違いがはっきりするが、身近にあるダイコンやキャベツの葉も良い観察材料である。

根: モヤシのような芽生えの若い根が良い。
 たいていの生長した植物の根では模式図のような放射維管束は観察できない。
 単子葉の根を材料にすれば生長した根でも木部が放射状に見えるものが多いが師部が丸く固まって見えることはほとんどない。

<観察例>
1. センニンソウの茎の横断切片(サフラニン・ファストグリーン二重染色)
 真正中心柱、維管束が一つずつ離れて見える。
2. センニンソウの茎の維管束
 並立維管束、形成層あり。
3. セイタカアワダチソウの茎の横断面
 ルーペ、実体顕微鏡でこの程度まで見える。
4. カヤツリグサの茎の横断切片 (サフラニン・ファストグリーン二重染色)
 不正中心柱(散在維管束)
5. カヤツリグサの維管束
 並立維管束、形成層なし。
6. タケの茎の横断面
 タケをのこぎりなどで薄めに切って、切り口をやすりなどで平らにすれば肉眼でも維管束はよく見える。
7. タケの維管束
 実体顕微鏡でさらに拡大すれば導管の管も見える。
8. モヤシの根の横断切片(サフラニン・ファストグリーン二重染色)
 モヤシはいつでも入手できるめばえである。本当の根の部分(放射中心柱)を観察するには、急に細くなった先の部分の切片を作る必要がある。
9. モヤシの維管束
 放射維管束。
10. ツバキの葉の横断切片


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