角谷 詩織(すみや しおり)

学習臨床講座 総合学習分野 助教授

博士(人文科学)

 
研究していること

 子どもが,元気に育っていくために,どのような学校環境が必要とされるのかを追究しています。中学校の部活動,総合的な学習の時間の意義など,いわゆる,「勉強ができないと感じている」子どもが,力を発揮できるような教育実践の場の意義は,教育実践の場に関わっている人なら,誰でも直感的に感じるところがあると思います。その点について,できるだけ客観的に,そして,データも含めて実証することで,学校の先生をはじめ,教育実践の場に関わっている人たちの直感を確信へ変えることができるよう,そして,その確信に基づいて,より充実した教育実践がなされるように,縁の下の力持ちのような研究をしています。

 最近では,理科の時間が,子どもの日常的・科学的な興味・関心にどのように貢献しているのか,あるいは,そのような,興味・関心を高められるような理科の実践とは,どのようなものか,研究しています。

 普段は,小・中学校に実際に足を運び,授業や学校の諸活動を観察したり,校長先生をはじめ,学校の先生方と,子どもの様子や,先生方の悩みや希望などについて話し合ったりしています。また,1年に2回以上のアンケートを通して,子どもの変化を追跡する形での研究方法を取っています。その際に大切にしているのは,学校の観察をしたり,話し合いをしたり,アンケートをとったあと,必ず,協力してくれた先生方,学校へ,その結果や感想,自分なりの感想などをフィードバックし,私の視点を教育実践の場に届けることです。どのような形ででも,教育実践の場に直接関わることを大切にしています。

 これまでは,教科や諸活動では,総合的な学習の時間,理科,部活動に注目してきましたが,大きな柱は,これらの活動もさながら,「子どもの健康な発達」です。子どもにとって必要な教育実践とはどのようなものか,何が足りないのか,また,社会の要請とのバランスを考えながら子どもを育てる必要のある現場では何に困っているのかetc.子どもの発達を中心とした学校教育について,深く考え,貢献していきたいと思っています。

 
学生・院生に求めること
 教育実践の場に直接関わりを持ち,小さくても良いので,何らかの形で貢献したいという強い意欲。資料だけから得られる情報も重要だが,必ず,現場に足を運んで研究をすること。その際,現場をデータ収集の場として考えるのではなく,どんなに小さなことでも良いので役に立とうという姿勢。自分にできることが何か考えて主体的に行動する主体性と行動力。
 
その他

 学部時代,競技スキー部所属。関東地区国公立大会ダウンヒル優勝,総合3位,関東地区女子大戦大回転優勝,スラローム優勝,総合優勝,頸部捻挫,左手首骨折,左膝靭帯損傷,リハビリトレーニングのやりすぎで肺炎,指導教官による「修士論文完成までスキー禁止令」発布などの実績あり。

現在は,もっぱら散歩のみ。

主な業績

[著書]

無藤 隆・角谷詩織 他 (2003). 幼稚園・小学校・中学校における居場所の成立.(住田正樹・南 博文 編 「子どもたちの『居場所』と対人的世界の現在」 九州大学出版会 第8章). pp. 308-314.

角谷詩織 (2004). 中学校の部活動の意味 (無藤 隆・岡本裕子・大坪治彦 編 「よくわかる発達心理」 ミネルヴァ書房)  pp. 116-117.

角谷詩織 (2004). テレビの悪影響 (無藤 隆・岡本裕子・大坪治彦 編 「よくわかる発達心理学」 ミネルヴァ書房)  pp. 92-93.

Muto, T., Sumiya, S., & Komaya, M. (2005発行予定).  LONGITUDINAL RESEARCH ON CHILDREN’S VULNERABILITY TO TELEVISION : A Survey and an Intervention. Advances in Applied Developmental Psychology: Information Age Publishing:Greenwich,CT  pp. 43-63.

[論文]

角谷詩織・無藤 隆 (2001). 部活動継続者にとっての中学校部活動の意義−充実感・学校生活への満足度とのかかわりにおいて−. 心理学研究, 72, pp. 70-86.

角谷詩織 (2001). 中学生にとっての総合的学習の意義 −学業コンピテンスと総合的学習での自律性との関わりから−. お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 人間文化論叢, 3, pp. 259-269.

角谷詩織・無藤 隆 (2001). 子どもをめぐる人間関係」テレビメディア社会の中に生きる子ども−児童期から青年期へ−. 日本家政学会誌,52, pp. 901-908.

角谷詩織 (2002). 中学生の自己,環境に対する認識の変化−学業コンピテンス,総合的学習,部活動,クラスに着目して−. お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 人間文化論叢, 4, pp. 237-246.

角谷詩織・無藤 隆 (2003). 小学5年生における適応とメディアの関わりのリスク要因分析. 子ども社会研究, 9, 1-13.

角谷詩織・無藤 隆 (2004). 理科の好き嫌いとその理由の構造―小学5年生から中学3年生を対象に―. お茶の水女子大学人文科学紀要, 57, pp. 269-285.

角谷詩織 (2005.4 掲載予定). 部活動への取り組みが中学生の学校生活への満足感をどのように高めるか―学業コンピテンスの影響を考慮した潜在成長曲線モデルから―. 発達心理学研究, 41

角谷詩織・無藤 隆 (印刷中). 児童・生徒の理科に対する意識―教科・諸活動に対する意識との比較を通して―. お茶の水女子大学子ども発達教育センター紀要, 1 

角谷詩織・無藤 隆 (印刷中). 思春期の子どものテレビメディアとの関わりおよび心理的変化:小学校5年生を3年間追跡して. お茶の水女子大学子ども発達教育センター紀要, 1

角谷詩織・無藤 隆 (印刷中). 総合的学習の実践を通して生徒が獲得する力:2つの中学校の実践から.お茶の水女子大学子ども発達教育センター紀要, 1

[国際学会での発表]

Sumiya, S. & Muto, T.  2002  Methodological problems of longitudinal data analysis. In Korea Institute for Youth Development. The Direction and Task of Korea Youth Panel Survey (KYPS) 2002.

Sumiya, S., Muto, T., & Kawaura, Y. 2003 Television Media's Influences on Children's Problem in the Late Childhood in Japan. SRCD 2003 Biennial Meeting.

Sumiya, S., Muto, T., & Egami, S.  2004  Do science classes contribute to students’ intellectual interests?