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Ideas for Master Program


学部からストレートの大学院生の場合,修士課程二年間(もしくは三年間)を勉強してエキスパートの教師にはなかなかなれないでしょう。この二年間は,教員生活を通して必要となるであろう技能を習得し,数学そして数学を教えることと学ぶことに対する理解を深める,深め方を習得する場と考えています。特に,いままで疑問に思わなかったこと、実は権威に頼っていたこと(教科書でそうなっているから、偉い先生が言っていたから、など)、を自ら見つけ、その解決への第一歩を踏み出す能力を修士課程の二年間で身に付けてもらいたいと思っています。例えば,次のようなことを考え、子どもの困難性の要因を探ったり、指導法の開発を行ないます。

sin A = a/b (bは斜辺の長さ,aは角Aの対辺の長さ)。うまく暗記できなかった子どもが sin A = b/a としてしまったとしましょう。では、なぜ sin A = b/a では駄目なのか。比ならどっちでもよいではないか(黄金比は、(1+ /5)/2 でも (/5 - 1)/2 でもさほど問題ない)。「定義だから」という回答もあるでしょう。しかし,子どもに教えるにはそれでは十分ではありません。定義を伝達するだけであれば,教科書で十分であり,教師は必要ありません。sin A = a/b である理由、必要性は存在します。それを知っていたらどのような指導ができるでしょうか。

これらのことは,ストレートの大学院生のみならず,現職の大学院生にも役立つものと信じています。日頃より現場の先生方は忙しさに追われています。そのような中で「なぜある子どもがおかしな解答を与えるのか」「なぜ〜を子どもは理解してくれないのか」といった疑問をスルーしてしまうことが少なくないのではないでしょうか。修士課程二年間では,そのような疑問にじっくり取り組んでいただきます。そして、それに対する感覚的な回答を得るだけでなく,数学教育における様々な現象を説明するためのツール(理論)を学び,より「科学的」な回答を得ることを目指します。ここで学ぶツールは一時的なものではなく,今後現場に戻って別の疑問に直面したとき以前より容易にその回答を得ることができ,指導の指針を与えてくれると信じています(ツールは教授学的状況理論や semiotic register など色々あります)。

ここまで述べたことは,教師として力量を高めるという実践的な目的をもった方々が本学の大学院でどのようなことを学べるのか,といったことに対する私の考えです.教員志望の学生や現職教員の方々を想定しています.しかし,将来,博士課程まで進み,数学教育学の研究者になりたいという方もいらっしゃるでしょう.そうした方も歓迎します. ただ,その場合,修士課程で身につけるべき技能が若干異なります.今日,数学教育学の研究は国際的に非常に多く進められており,日進月歩です.そうした中で,研究者には数学教育学における新たな知の構築への貢献が求められます(言うは易し行うは難しですが・・・).具体的にここでは述べませんが(また今度どこかで書きます),そうした貢献のために必要となる基礎的な技能を修士課程で習得することになります.



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Created: 2009/04/28
Last update: 2013/12/23