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Some Topics for Master Thesis


私の研究は、算数・数学を教えること学ぶことに関連する様々な事柄 (facts) が、なぜ、どのようにして生じているのかその仕組み(メカニズム)をより「科学的」に理解することを目的にしています(詳しくは,「科学としての数学教育学」を参照)。皆さんの修士論文では、この前提に基づき、以下のような研究テーマの指導ができると思います(以下はあくまで参考です。これ以外はご相談ください)。理論は主にフランスで発展したものを用います(例えば、Brousseau の教授学的状況理論、Douady の setting や tool/object の理論、Chevallard の教授学的転置理論・人間学理論、Duval の認知記号論、など)。

  • 「世界探究パラダイム」に関すること

    最近(2017年現在),私の研究室では,「世界探究パラダイム」や "SRP" と呼ばれる,研究者の活動を定式化した学習形態について多くの研究を進めています.これまでの中学校や高校での数学教育では,皆が同様に数学の問題を解けるようになることを重視し,そのために必要な数学を順々に学習していくというものでした.しかし,そんなことをやっても,受験が終わればすべて忘れてしまいます.そして,社会に出て必要な数学は,職業や時代,課題によって異なるため,事前に必要なものを学習するということがほとんど意味をなさなくなっています.そうした中で,SRPのような特定の知識や内容を学習目標とせず,必要な数学は必要に応じて学ぶという学習形態が注目されています.この研究テーマでは,異なった学校段階において,そうした学習形態がもたらすもの,その実現可能性などを明らかにしようとしています.なお,このテーマは教科横断型の学習や総合的な学習にも関わってくるものです.

  • 算数・数学の授業に関すること

    近年、数学的活動や算数的活動という言葉がしばしば強調され、その実践が促されています。では、そのような考えに基づいた授業は実際にいかなる数学知識の獲得を可能にしているのでしょうか?数学知識を記述する、特徴づける(つまり私たち研究者が理解する)ための理論を学習し、実際の授業を詳細に分析することになります。

  • 幾何や証明の学習に関すること

    図形学習や証明学習の困難性は古くから指摘され、学習の困難性に関するもの、指導の困難性に関するものなどさまざまな研究が進められてきました。私は個人的に証明と数学知識との関連を長いこと研究してきましたので、この研究テーマにおいては様々な問いに対応できると思います。

  • テクノロジー利用に関すること

    テクノロジー(電卓、作図ソフト、CASなど)を算数・数学の学習に用いると紙と鉛筆では不可能なことを扱うことができることがあり、同時に弊害もあります。この利点と弊害をより明確な理論に基づいて示すことが目的になります。具体的には、授業計画を明確な理論に基づいて作り、その実践されたものを研究対象として詳細に分析します。専門的な言葉を用いれば、adidactical な milieu を発見したり、その教授工学 (didactical engineering) をおこなったりします。

  • カリキュラム・教科書に関すること

    学校数学で扱われる学習内容は、今日までに構築されてきた非常に大きな数学体系の一部です。この学校数学で扱われる一部は、指導内容として選択されたために、そして子どもが学習しやすいように配慮されたために、もともとの数学体系にはなかったさまざまな特殊性を持っています(例えば、関連する性質が異なる;公理体系が異なる;帯分数は小学校でしか使わない;などなど)。そしてこの特殊性のために、子どもには学習の困難性を、教師には指導の困難性を生じさせていることがあります。この研究テーマでは、このような困難性を明確にすることや、カリキュラムの比較研究などが主になります。分析の対象は、カリキュラム、教科書、実際の授業などテーマによって異なります。

なお、いずれのテーマにおいても、数学に対する深い知識(大学あたりまでの数学、数学史、数学の哲学、などなど)が必要となってきます(特に理論を理解するために)。それらを修士課程の授業や修論作成の過程で身につけつつ、研究を進めていくことになります。


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Created: 2009/04/09
Last update: 2017/07/05