★ 百聞は一見にしかず

対頂角が等しいとか、二等辺三角形の底角は等しいとか
は、図を見ればすぐにわかるように思います。
「いつでも成り立つか?」と言われても、いろいろと
角度や辺の長さを変えて図をかいてみれば、やはり
わかりそうなものです。いまどきなら、コンピュータで
確かめることもできそうです。でも中学校の図形の学習
ではルールが変更された のでした。示された「仕組み」を
出発点として、ルールにしたがってストーリーを展開させる
ことで、主張したいことにたどり着く必要があります。

例えば、次の図のA の 大きさとB の大きさは
等しいでしょうか?
対頂角?

見た感じは等しいのですが、こうした場合も、出発点となる
「仕組み」から始めて、A= B となるストーリーを
作らないと、「めでたしめでたし」とはならないのです。

それに、実は上のA の 大きさとB の大きさは等しく
ないのです。青い線は直線なのですが、赤い方は直線
ではなく、「交点」のような場所で少しだけまがっています。
そのため、 A の 大きさは B の大きさよりも、
1 ° だけ小さくなっています。
どんな「仕組み」でできているかがわからず、ストーリーが
展開できないと、このように、見た目でだまされてしまう
こともあります。

では、図にたよるのはダメなのかというと、決してそんなこと
はありません。たより方をまちがえなければ、図はこれからも
私たちの力強い助けになります。

例えば、次の文を図をイメージせずに読んでみてください。
AB=AC の 二等辺三角形 ABC で、 点 A から 辺 BC に
垂線を下ろし、その足を 点 D とする。」
文だけ目で追っていると「垂線を引いたんだな」ということ
くらいしか頭にはいってこないのではないですか?

でも図をかいてみると、線分 AD  を引いただけなのに、
自然とABD と ACD という 2つの三角形ができる
ことに、すぐに気がつきます。しかも点 D の あたりに
直角の記号をつけたとたんに、この2つの三角形が
いやでも直角三角形に見えてきます。

このように示された仕組みを図に表したり、少し線を
加えたりしてみると、自然にそれらが組み合わさり、
新しい仕組みがうきあがってくることがあります。
図はわかっている情報をまとめてくれ、そして、
ストーリーをこのあとどう展開したらよいかについて、
ヒントをくれます。たくさんの言葉を読んだり聞いたり
するよりも、図を一目見る方がひらめくこともあるでしょう。

多くのことばに勝るこの「一見」が私たちの助けに
なります。中学校の図形の学習では、図は主役には
なれませんが、しかし名脇役(バイプレーヤー)として、
変わらず大切な登場人物でありつづけるのです。