Numeracy as Cultural Practice: An Examination of Numbers in Magazines for Children, Teenagers, and Adults


By E. Joram, L. B. Resnick, A. J. Gabriele
(Journal for Research in Mathematics Education, 26 (4), 346-361, 1995年)


 本論文は、子ども向け、十代の若者向け、そして大人向けの雑誌に現れる数字の種類やその現れ方を分析したものである。これは、日常生活の中で人々に提示されるnumeracy を発達させる機会を、調べることを目指してのことのようである。ここで考えられている numeracy は、Cockcroft レポートに準じて「個人が日常生活の実用的要求を、うまく扱っていくことを可能にするような数学的技能」のこととされている。

 分析にあたっては、各世代向けに書かれた雑誌で、異なる傾向を持つものを7種類ずつ選んでいる。同じ傾向を持つ雑誌に関しては、講読数の多い者を代表としてとりあげたとされている。例えば、大人向けとしては Reader's Digest, National Geographic, Better Homes and Gardens, National Enquirer, Time, Consumer Reports, Sports Illustrated が分析対象となっている。次に各雑誌について、真ん中の20ページをサンプルとし、ここに現れる数字をコード化したとしているが、これは最初あるいは最後の20ページよりも、真ん中の20ページの方が全体を反映しているからだとのことである。なお、今回の分析では、グラフや表については詳しく分析していない。

 分析にあたっては、大人向けの雑誌で重要な役割を果たしている有理数に焦点が当てられ、次のような観点が採用されている;(1) 有理数の頻度、およびそのタイプ(パーセント、分数、平均);(2) 利用方法(増減を示す、部分−全体を示す、比較を示す); (3) 用いられる文脈(仮説的な陳述の中、事実についての陳述の中);(4) 数の前後にある修飾語の状態 ;(5) 分析対象となる数と他の量的表現との関係。

 結果としては以下のような点が述べられている;(1) 子どもや十代向けに比べ、大人向けの雑誌では有理数が多く、特にパーセントの頻度に最も大きな差が見られた;(2) 用法については部分−全体、増減、比較の順であるが、十代向け雑誌での分布は大人向けのものに類似している;(3) 大人向けでは事実的文脈での使用が9割なのに対し、子どもや十代向けでは7割程度、ただし仮説的文脈で用いられる個数自体にはあまり差がない;(4) 大人向けの方が修飾語のついていることが多いが、全体としては修飾語は少なく、前後の文脈により解釈が与えられることは少ない;(5) 有理数は多くの場合他のタイプの量と関係付けられている。

 結論として、十代向け雑誌では有理数と部分−全体の結びつきが弱まり、また有理数が整数よりもパーセントを関連づけられる傾向にあるものの、全般的に有理数の頻度は低く、大人向けの雑誌へと読者が移行するためには欠陥があると、述べられている。また、有理数を解釈し情報を得る(information literacy )という観点からは、教科書も指導が十分なされているとは言えないとしている。そして、教科書も日常のテキスト(雑誌等)も、数の提示について工夫していくことが必要だとしている。

 以前に informal knowledge の学校数学での活用を唱えていた Resnick が、いよいよ街に出てきたという印象を、この論文を読んで感じた。


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